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星落秋風五丈原
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容疑者はウィルの妻アンジー ウィル・トレントシリーズ第10弾
 何者か(男)から身を守るために部屋に立てこもっている、誰とも知れない女性の三人称描写。女性が抱えているのは自分の娘であり、胸にナイフが突き刺さっている。意識はない。もう死んでいるかもしれない。さて、この女性-或いは娘-は、主要人物の誰と関係があるのか?これまで彼女を通り過ぎていった男達が列記されるが、一人を除いて皆ろくな男じゃない。唯一まともだった男に心当たりがあるが、果たして…?

 相変わらず冒頭の掴みがうまいカレン・スローター。次に登場するのは特別捜査官ウィル・トレント。チームに加わった検視官サラ・リントンとはラブラブで、皆に隠そうとしても、出会えば笑顔がこぼれそうになるほど幸せいっぱいだ。だが、スローター作品で、こんな平和な風景が長く続くはずはない。

 恋人との記念すべき初仕事は、やはり殺人事件だ。ウィルが関わったバスケのスター選手だった男性が容疑者とされた事件の関係者が、建築現場で殺されていた。被害者は元警官で、とかくの噂のある悪徳警官。となれば、容疑者探しには事欠かない。犯人などすぐ見つかりそうだ。ところで、現場は一面血の海だったが、その血は被害者のものではなく、ウィルの妻アンジ―のものと一致した。ここでウィルが取り乱してしまい、ほぅら、せっかくうまくいきそうだったサラとの仲がたちまち暗雲に。彼を心配する上司アマンダやパートナーのフェイスを振り切って「自分だけがアンジーをわかっている」という確信に基づき動くウィル。恋人を理解できずに戸惑うサラ。そして大量出血したアンジーの生死は?

 これまでも『罪人のカルマ』『血のペナルティ』などで、登場人物の過去を暴いてきたスローター。今回暴かれるのは、サラとウィルの恋がうまくいってほしいと願う読者にとってはお邪魔虫のアンジーだ。ウィルと今でも離婚しておらず、決して元妻ではない。彼女なりにウィルの孤独を理解し、空洞を埋めたこともあるが今では「自分のものにならないなら、いっそ壊してしまいたい」と、その先に破滅しかない関係と化している。なぜ今の性格が形作られたのか。読了後、彼女とウィルが復縁して欲しいとは思わないが、少なくとも悪役一辺倒の見方は変わるのではないか。

ウィル・トレントシリーズ
『ハンティング』
『サイレント』
『血のペナルティ』
『罪人のカルマ』
『ブラック&ホワイト』
『破滅のループ』
『スクリーム』
『暗闇のサラ』
『報いのウィル 』
グラント郡シリーズ
『開かれた瞳孔』
『ざわめく傷痕』
『凍てついた痣』
アンディシリーズ
『彼女のかけら 』
『忘れられた少女』
ノンシリーズ
『偽りの眼 上』
『グッド・ドーター(上・下)』
『プリティ・ガールズ(上・下)』
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2321 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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