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星落秋風五丈原
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皆は言う「その才能を別のところで活かしていれば」でも彼女達が選んだのは
 映画『スティング』を私達が好むのは、詐欺が一種の復讐でもあるからだ。そして“カモる”相手は悪なんだからいいんじゃん?って。

 しかしいつも詐欺に合う相手が悪人とは限らない。いや、むしろ善人が騙される事の方が多い。

 冒頭を飾るのは首飾り事件で有名なフランスのジャンヌ・ド・ラ・モット伯爵夫人だ。漫画ベルばらではロザリーの異母姉になっていた。ヴァロア家の末裔であることを誇りにして、会ったことのない王妃の友人を名乗り王妃に口利きをする代わりに金品を要求。件の首飾りは、先王がデュ・バリー伯爵夫人に送るために先だって注文していたが、王の逝去によりマリー・アントワネットに宝石商が「買ってくれませんか」と話を持ち掛ける。宝石は嫌いではなかったアントワネットだが、あまりに高価だったので購入を拒否。するとジャンヌは、かねてから王妃に近づきたいと思っていたロアン枢機卿に「代わりに買ってあげませんか?」と話をもちかけ、夜陰に紛れて偽王妃との面会をセッティング。有頂天になったロアンは購入を確約し、ジャンヌはまんまと首飾りを手に入れると夫にばらばらにするよう渡す。贅沢な暮らしを散々批判されていたアントワネットは、この件に関しては間違いなく無罪なのに、国民感情は悉くジャンヌに同情的だたというちょっとかわいそうな話。

 ラストを飾るサンテ・カイムズは、いやあ、何というか強烈だ。富豪と結婚して奥様としてかしずかれる身になるが、不法入国者のホームレスに住宅や仕事を提供し、仕事で稼いだお金を巻き上げた。ホームレス達から苦情が上がると、当局に届けると脅し、奴隷として彼等を管理下に置いた。詐欺に続き殺人も次々と&易々と行い、次男を関わらせる。彼女に母性ってあるのかと疑わしい。次男とはただならぬ仲だったと言われており、彼は母親の死後やっと精神的に解放されて手記を書く決意をする。

 ちなみに詐欺も命がけである。ボニー・リー・バクリーは当初スターになることを目指し、挫折すると今度はスターの妻になることを目指した。妊娠したと言っては費用を要求し、いつの間にかお腹はぺちゃんこになっていた。偽の身分証明書の使用や麻薬売買にも手を染めていた。マーロン・ブランドの息子クリスチャンと、当時『刑事バレッタ』で有名だった俳優ロバート・ブレイクと二股かけていたが、最終的にはブレイクと結婚。しかしある日、ブレイクが偶々車を離れていた時に、一人残っていた彼女が射殺される。後に起こったO・J・シンプソン事件と比較されることの多い事件である。

目次
上流社会に咲いたあだ花(ジャンヌ・ド=サン=レミ;キャシー・チャドウィック;ワン・ティー)
未来を見通した女(女霊媒師たち;フー・ファタム;ローズ・マークス)
作り話の名人(アナスタシアたち;ロキシー・アン・ライス;悲劇のヒロインたち;ボニー・リー・バクリー)
さすらう女(ローレッタ・J・ウィリアムズ;マーガレット・リディア・バートン;サンテ・カイムズ)
    • 首飾り事件のネックレスのレプリカ
    • アニメ『ヴェルサイユのばら』ジャンヌ
    • サンテ・カイムズが82歳のアイリーン・シルヴァーマンを殺害したという記事
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2329 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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