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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
ウィー東城店に行ってごらん。
『本屋で待つ』というタイトルを見たときに、思い浮かべたのは、友人知人との待ち合わせの場としての本屋だった。
でも、この本で、待っているのは店の人――広島の町の本屋「ウィー東城店」の元店長、佐藤友則さんだ。


祖父の代からの本屋「佐藤商店」は山間の街にある。父は二号店として、少しだけ大きい町に「ウィー東城店」をオープンする。
他店で修行中の著者が呼び戻されて、ウィー東城店の店長になったとき、店は、従業員がごっそり辞めたばかり。大きな赤字を抱えていた。
やがてこの店は、全国からも注目を浴びるほどの存在になっていくのだが、それは、店長が試行錯誤を繰り返し、身を粉にして働いたからだろうか。機を読み、大胆なアイデアを次々実行したからだろうか。
そうだろうか。それも、あったけれども……。


本屋は「本質的には、お客さんがなにかを解決したいと思って、やってくる場所」なのだ、と著者は考える。
そう考えると、田舎の本屋にやれることが見えてくるのだという。
年賀状の宛名を書けなくなってしまった老人、親について店にきて退屈している子どもたち。そして、他のどこでも断られている急ぎの案件を抱えてやって来るお客さん。
さらに、学校に行けなくなってしまった高校生たち……。
町の人は言うようになる。ウィー東城店にいってごらん。


心に残るのは、待つ、という言葉と、聞く、という言葉だ。
相手を信頼して、じっと待つこと、聞くこと、それは本当に難しいのだと思う。動きたくなるし、喋りたくなるではないか。そのほうがずっと楽だもの。
聞くことも待つことも、生半可ではない。生半可ではないから、店も人も変わっていけたのだろう。いつのまにかそれぞれの壁をこえていく、幾人もの、いくつものエピソードに、幸せな気持ちになる。
しかも、まだまだ店は変わっていきそうなのだ。
著者は店の声を聞いている。店自身がなりたいものについて語り出すのを、待っているようだ。



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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1742 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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