ぽんきちさん
レビュアー:
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雪の降る夜、美しい若衆が、父の敵である博徒を討ち取った。見物の喝采を浴びた、その仇討ちに至る顛末とは。
とざい、とーざい。
時は睦月晦日の宵、ところは木挽町・芝居小屋の裏通り。
赤い振袖をまとった人影に、1人の無頼の博徒が声を掛けた。女と見てよからぬことを考えたのだろうが、博徒が驚いたことには、それは娘ではなかった。振袖をひらりと脱ぎ捨てたのは美しい若者。そればかりではなく、博徒を親の仇と呼び、太刀をすらりと抜いたのだ。高らかな名乗りに群れ集まる野次馬。その面前で立ち回りが始まる。しかし、博徒と若衆、まるで体格が違う。危うし若衆。
手に汗握る見物人を尻目に、若衆は博徒を仕留め、首級を上げたのだった。
白い雪に飛び散る赤い血潮。白皙の美少年が見事、仇の大男を倒したのだ。見物衆はやんやの喝采。
これぞ世に言う、木挽町の仇討ち。
2年後、木挽町・森田屋を1人の若侍が訪れる。仇討ちを果たした若衆、菊之助の縁者で、参勤交代で初めて江戸に来たのだという。
若侍は芝居小屋の誰彼を訪ね、仇討ちについて聞いて回る。それとともに、彼ら自身の来し方についてもじっくり聞いていく。
木戸芸者。殺陣指南役。女形兼衣装係。小道具。戯作者。
いずれも裏方だが、芝居にはなくてはならない面々だ。
菊之助は仇討ちを果たすまでのしばらくを、この芝居小屋の面々とともに過ごしていた。
彼ら・彼女らはここにたどり着くまで、それぞれの事情を抱えていた。芝居に魅入られ、あるいは芝居に助けられ、ここへ流れ着いたのだった。人情あふれる彼らは、若き菊之助の面倒も何くれとなく見てやっていた。
若侍を導き手に、さまざまな立場から、芝居小屋のあれこれ、取り巻く人間模様などが語られるのも読ませどころだが、徐々に、肝心の仇討ちも、最初とは異なる様相を見せていく。
果たして、江戸を賑わせた鮮やかな仇討ちの陰にはどんな物語があったのか。
最後を締める語り手は誰か。
構成も見事。結末も爽快。
欲を言えば発端の事件がそれほど簡単に解決するものか、疑問は残るが、そこにこだわるのは野暮というものだろう。
タイトル自体も実は伏線だったという仕掛けも小気味よい。
あっぱれの快作。
*直木賞候補作に入りましたね。さて、どうかな・・・?
時は睦月晦日の宵、ところは木挽町・芝居小屋の裏通り。
赤い振袖をまとった人影に、1人の無頼の博徒が声を掛けた。女と見てよからぬことを考えたのだろうが、博徒が驚いたことには、それは娘ではなかった。振袖をひらりと脱ぎ捨てたのは美しい若者。そればかりではなく、博徒を親の仇と呼び、太刀をすらりと抜いたのだ。高らかな名乗りに群れ集まる野次馬。その面前で立ち回りが始まる。しかし、博徒と若衆、まるで体格が違う。危うし若衆。
手に汗握る見物人を尻目に、若衆は博徒を仕留め、首級を上げたのだった。
白い雪に飛び散る赤い血潮。白皙の美少年が見事、仇の大男を倒したのだ。見物衆はやんやの喝采。
これぞ世に言う、木挽町の仇討ち。
2年後、木挽町・森田屋を1人の若侍が訪れる。仇討ちを果たした若衆、菊之助の縁者で、参勤交代で初めて江戸に来たのだという。
若侍は芝居小屋の誰彼を訪ね、仇討ちについて聞いて回る。それとともに、彼ら自身の来し方についてもじっくり聞いていく。
木戸芸者。殺陣指南役。女形兼衣装係。小道具。戯作者。
いずれも裏方だが、芝居にはなくてはならない面々だ。
菊之助は仇討ちを果たすまでのしばらくを、この芝居小屋の面々とともに過ごしていた。
彼ら・彼女らはここにたどり着くまで、それぞれの事情を抱えていた。芝居に魅入られ、あるいは芝居に助けられ、ここへ流れ着いたのだった。人情あふれる彼らは、若き菊之助の面倒も何くれとなく見てやっていた。
若侍を導き手に、さまざまな立場から、芝居小屋のあれこれ、取り巻く人間模様などが語られるのも読ませどころだが、徐々に、肝心の仇討ちも、最初とは異なる様相を見せていく。
果たして、江戸を賑わせた鮮やかな仇討ちの陰にはどんな物語があったのか。
最後を締める語り手は誰か。
構成も見事。結末も爽快。
欲を言えば発端の事件がそれほど簡単に解決するものか、疑問は残るが、そこにこだわるのは野暮というものだろう。
タイトル自体も実は伏線だったという仕掛けも小気味よい。
あっぱれの快作。
*直木賞候補作に入りましたね。さて、どうかな・・・?
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。現在、中雛、多分♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
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- 出版社:新潮社
- ページ数:0
- ISBN:9784103520238
- 発売日:2023年01月18日
- 価格:1870円
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