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ぱせりさん
ぱせり
レビュアー:
ひとたび戦争が始まってしまったら。そのまえに。
映画『火垂るの墓』の監督である著者は、あの映画は反戦映画になりえない、という。戦争を始めたがる人ならば「あんな悲惨なことにならないためにこそ、戦争をしなければならないのだ」というだろうから。
芸術作品は、そして鑑賞者の感動は、そんなにも利用されやすいのか、と思う。
利用されないためにはどうしたらいいのだろう。
その作品のいったい何に、なぜ心を動かされたのか。鑑賞者として、自分の言葉にしていくことくらいしか思いつかないけれど……。


先の戦争のときには、かなりの詩人や芸術家たちが戦争に協力した。高村光太郎も、まどみちおも。
誰かに強制されたわけではなく進んで戦争に協力した。
なぜなのか。


(ほぼ個人主義ではない)日本人にとって大切だったのは、ご先祖様や世間様で、「恥ずかしくないように」という気持ちが強かったと、著者はいう。しかも、それは過去のことではなくて、今もそのまま居残っている。「空気を読む(=場違いなことをするな、言うな)」という言葉になって。
それまで戦争反対と声をあげ、行動をしていた人が、いざ戦争が始まれば、勝たなければならない(負けたら悲惨なことになる)という考えに傾き、進んで戦争協力にのめりこんでいく。


戦争を体験した著者は、自分もまたそうなるだろう、止めようがなくなるだろう、という。
戦争に向かう危険なサインについて、いくつも書かれていた(ずるずる体質、責任を取らない体質について。多数決によって最初からなかったことにされててしまうものなど)
だけど、なによりも、いざ戦争となったら自分も……、という言葉が一番恐ろしかった。
1904年に「君死にたまふことなかれ」と詠った与謝野晶子も、1942年には軍国の母となり自分の息子を「たけく戦へ」と励ます。
それなのに、自分だけは染まらないでいられるだろうか。
汗が流れるのは、今が暑い夏だから、というだけではない……


だから、まずは、戦争を起こさないことが大切なのだ、と。この国を戦争ができる国にしてはいけない、と。
大きな転換点を迎えることがないように。理性を失って(喜んで)破滅の道を走り始めることがないように。



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ぱせり
ぱせり さん本が好き!免許皆伝(書評数:1737 件)

いつまでも読み切れない沢山の本が手の届くところにありますように。
ただたのしみのために本を読める日々でありますように。

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