星落秋風五丈原さん
レビュアー:
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悲劇のスコット隊の生存隊員が書く遭難への道
表紙絵イラストは、南極点初到達を目指して帰路亡くなったスコットの墓だ。スコットVSアムンゼンの間で繰り広げられた極点到達レースとその顛末はよく知られている。ところで、スコットはイギリス海軍大佐で、アムンゼンはノルウェー人で、支援は受けたものの、あくまで個人の探検家である。そもそも始まりの時点では、極点到達は二国間の競争ではなかった。
スタート時点でリードしていたスコットは、南極点への初到達をめざして1910年テラ・ノバ号で二度目の南極探検に向かっていた。但しこれには皇帝ペンギンの卵を収集するなど、科学データの採取が目的として含まれていた。まず、この点が、ただ極点到達して戻ってくればよいアムンゼン隊と異なる。一方アムンゼンはもともと北極を目指していたが、1909年アメリカの探検家ロバート・ピアリーが北極点に人類初到達した知らせを受けて、出資者にも乗組員にも一切告げず、急遽南極点に切り替えた。電報でこの知らせを受け取ったスコット隊は驚愕。著者も“だまし討ち”という印象を持ったそうだ。単独到達ではなく二チームが目指す形になり、報道も過熱する。こうなるとスコットサイドは、もともと予定していた装備で進めていた自分のペースで計画を決められなくなる。かてて加えて、目的のために自由な発想で進む探検家チームと「ねばならない」に傾きがちな軍人チームの、それぞれのトップの思考パターンの違いが、不測の事態への対応などで出て来た。そしてその事が、その後の過程に多大な影響を与えた。
著者は、危険を伴う探検において否定はしない。人それぞれ求めるものが違うからである。また、否定すればスコットの挑戦をも否定することになるからだろう。
ライヴァル アムンゼンの伝記
最後のヴァイキング――ローアル・アムンセンの生涯
スコット隊のタイタス・オーツが登場する小説
ホワイトダークネス
スタート時点でリードしていたスコットは、南極点への初到達をめざして1910年テラ・ノバ号で二度目の南極探検に向かっていた。但しこれには皇帝ペンギンの卵を収集するなど、科学データの採取が目的として含まれていた。まず、この点が、ただ極点到達して戻ってくればよいアムンゼン隊と異なる。一方アムンゼンはもともと北極を目指していたが、1909年アメリカの探検家ロバート・ピアリーが北極点に人類初到達した知らせを受けて、出資者にも乗組員にも一切告げず、急遽南極点に切り替えた。電報でこの知らせを受け取ったスコット隊は驚愕。著者も“だまし討ち”という印象を持ったそうだ。単独到達ではなく二チームが目指す形になり、報道も過熱する。こうなるとスコットサイドは、もともと予定していた装備で進めていた自分のペースで計画を決められなくなる。かてて加えて、目的のために自由な発想で進む探検家チームと「ねばならない」に傾きがちな軍人チームの、それぞれのトップの思考パターンの違いが、不測の事態への対応などで出て来た。そしてその事が、その後の過程に多大な影響を与えた。
著者は、危険を伴う探検において否定はしない。人それぞれ求めるものが違うからである。また、否定すればスコットの挑戦をも否定することになるからだろう。
もし君が知識にたいして意欲をもち、これを肉体的に表現する力があるならば出でて探検のことに従うべきである。もし君が剛勇の人であるならば、君はほかに何もすることはない。もし君がこわがり屋ならばなすべき仕事はたくさんある。臆病な人ほど勇敢さをしめす必要があるから。ある人は極地へ行くといえば気が狂ったかといい、少なくとも大多数の人は「何のために行くのだ」と問うであろう。商人は一年以内にもうかる見込みのないものには見むきもしない。だから君はほとんど一人ソリを駆ることになるであろう。少なくとも君とともにソリ旅行をするものは商人ではないであろう。それこそ非常に尊いものである。君の欲するものがただ一個のペンギンの卵であるにしても、君は冬のソリ旅行で報われるところがかならずあるであろう。
ライヴァル アムンゼンの伝記
最後のヴァイキング――ローアル・アムンセンの生涯
スコット隊のタイタス・オーツが登場する小説
ホワイトダークネス
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2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309711904
- 発売日:2022年09月21日
- 価格:2178円
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