ソネアキラさん
レビュアー:
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「死んだふり」の謎を解く
タイトルにつられて『「死んだふり」で生きのびる-生き物たちの奇妙な戦略』宮竹貴久著を読む。
「死んだふり」というと、山で熊で遭遇した時、人間が咄嗟にとる姿を思い浮べる。最近は、街中でも出会うらしいが。
あとは、形勢が不利な時、相手を油断させるために、あるいは、弱ったパワーをチャージして逆転を図るための作戦なんかもいうけど。
「多くの動物は敵の気配を感じると、目立たないよう体の動きを止める。これはフリーズ(不動)と呼ばれる。さらに敵が襲ってくると、抵抗を止め、引っくり返るなど独特のポーズをとって死んだふり(疑死)をするものもいる」それは昆虫だけではなく、「ブタやニワトリやサメやカエルやヘビだって、死んだふりをするのだ」
なんと。
「オスがメスに空中で何度も猛烈にアタックするトンボの行為は、メスにとってハラスメントにあたる。このハラスメントを回避するために、トンボのメスは死んだふりをすることがあるのだ」
「動物が死を装うことを初めて報告したのは、進化論で有名なチャールズ・ダーウィン」。次に、「ファーブルが甲虫の死んだふりを少し詳しく観察し、『昆虫記』に記した」そうだ。
しかし、「生物が生きのびていく上で死んだふりが本当に役立っているか」「説得力のある量的なデータを伴って明らかにしてこなかった」。
それを明らかにしたのが、著者。100均で買いそろえた機材で「アリモドキゾウムシの死んだふり研究」をはじめた。
わかったこと。
「〇歩いている虫は死んだふりしない
〇夜行性のゾウムシでは、活動的な夜間は死にまねできず、休んでいる昼間は死んだふりが捕食回避の基本になる
〇腹が減っては死にまねができない
〇ゆとりがないと死にまねができない
〇暑くては死にまねができない」
「虫には長い時間死にまねをするロング系統と、死んだふりをしないショート系統」に分類される。「(アズキゾウムシの)ロング系統はショート系統に比べて、卵から成虫になるまでの期間が短かった。成虫になったあとの寿命も長かった」ただし、「(死んだふりをする)ロング系統は異性との出会いがなく、ストレスにも弱い」ことが判明した。
「虫の動きを活発にする物質は、オクトパミン、ドーパミン、チラミンなどがあり、逆に虫を非活動性にさせるのはセロトニンであること」を仙人と呼ばれている昆虫生理学の教授に教えられる。
「ドーパミンは、快感や多幸感を得る、意欲を作ったり感じたりする、運動調節に関連する、といった機能を担う脳内ホルモンの一つ」
「カフェインを摂るとドーパミンの放出量が高まる」。「コクヌスモドキに粉末のカフェインを飲ませたら興奮した」「死んだふりから覚醒した」と。
「(死んだふりをする)ロング系統は脳の中にドーパミンが少ない。そしてドーパミンを投与すると死にまね時間が短くなり、歩き出す」また、「歩き方にも異常が見られ、うまく曲がることができない」。これが「パーキンソン症候群の症状と似ている」生物の死んだふりからパーキンソン症候群の原因解明に役立つかもしれないと。
死んだふりを研究して25年。ノーベル賞が難しいなら、イグ・ノーベル賞あたりでも著者に贈呈してもらえないだろうか。
「死んだふり」というと、山で熊で遭遇した時、人間が咄嗟にとる姿を思い浮べる。最近は、街中でも出会うらしいが。
あとは、形勢が不利な時、相手を油断させるために、あるいは、弱ったパワーをチャージして逆転を図るための作戦なんかもいうけど。
「多くの動物は敵の気配を感じると、目立たないよう体の動きを止める。これはフリーズ(不動)と呼ばれる。さらに敵が襲ってくると、抵抗を止め、引っくり返るなど独特のポーズをとって死んだふり(疑死)をするものもいる」それは昆虫だけではなく、「ブタやニワトリやサメやカエルやヘビだって、死んだふりをするのだ」
なんと。
「オスがメスに空中で何度も猛烈にアタックするトンボの行為は、メスにとってハラスメントにあたる。このハラスメントを回避するために、トンボのメスは死んだふりをすることがあるのだ」
「動物が死を装うことを初めて報告したのは、進化論で有名なチャールズ・ダーウィン」。次に、「ファーブルが甲虫の死んだふりを少し詳しく観察し、『昆虫記』に記した」そうだ。
しかし、「生物が生きのびていく上で死んだふりが本当に役立っているか」「説得力のある量的なデータを伴って明らかにしてこなかった」。
それを明らかにしたのが、著者。100均で買いそろえた機材で「アリモドキゾウムシの死んだふり研究」をはじめた。
わかったこと。
「〇歩いている虫は死んだふりしない
〇夜行性のゾウムシでは、活動的な夜間は死にまねできず、休んでいる昼間は死んだふりが捕食回避の基本になる
〇腹が減っては死にまねができない
〇ゆとりがないと死にまねができない
〇暑くては死にまねができない」
「虫には長い時間死にまねをするロング系統と、死んだふりをしないショート系統」に分類される。「(アズキゾウムシの)ロング系統はショート系統に比べて、卵から成虫になるまでの期間が短かった。成虫になったあとの寿命も長かった」ただし、「(死んだふりをする)ロング系統は異性との出会いがなく、ストレスにも弱い」ことが判明した。
「虫の動きを活発にする物質は、オクトパミン、ドーパミン、チラミンなどがあり、逆に虫を非活動性にさせるのはセロトニンであること」を仙人と呼ばれている昆虫生理学の教授に教えられる。
「ドーパミンは、快感や多幸感を得る、意欲を作ったり感じたりする、運動調節に関連する、といった機能を担う脳内ホルモンの一つ」
「カフェインを摂るとドーパミンの放出量が高まる」。「コクヌスモドキに粉末のカフェインを飲ませたら興奮した」「死んだふりから覚醒した」と。
「(死んだふりをする)ロング系統は脳の中にドーパミンが少ない。そしてドーパミンを投与すると死にまね時間が短くなり、歩き出す」また、「歩き方にも異常が見られ、うまく曲がることができない」。これが「パーキンソン症候群の症状と似ている」生物の死んだふりからパーキンソン症候群の原因解明に役立つかもしれないと。
死んだふりを研究して25年。ノーベル賞が難しいなら、イグ・ノーベル賞あたりでも著者に贈呈してもらえないだろうか。
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女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。
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