茜さん
レビュアー:
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コロナ禍でのろう者の実態と苦悩を描く、〈デフ・ヴォイス〉シリーズ最新長編。
コロナ禍の2020年春、手話通訳士の荒井の家庭も様々な影響を被っていた。
刑事である妻・みゆきは感染に怯えつつも業務をこなし、一方の荒井は二人の娘の面倒を見るため手話通訳の仕事も出来ない。
そんな中、旧知のNPO法人から、女性ろう者が起こした傷害事件の弁護団への通訳としての参加依頼が届く。
些細な口論の末に実母をナイフで刺した事件。聴者である母親との間に何が?
コロナ禍でのろう者の実態と苦悩を描く、〈デフ・ヴォイス〉シリーズ最新長編。
今回はコロナというタイムリーな内容を盛り込んだ内容となっていました。
「実は手話で大切なのは、手の動きよりも顔の表情や口の動き」
これはあながち間違ってはいないものの全てだとは言えないらしく
「マスクをして会話することの弊害」
は比較的少ないとのこと。私達聴者もそうですが相手の表情でその人の感情を読み取ったりしにくくなったなぁと思いました。
そして、今回取り上げられているテーマとしてディナーテーブル症候群というものがあります。
ディナーテーブル症候群
聴者の家族の中にろう者が一人だけいる場合、会話の内容が分からなかったり、会話に参加したいのに参加できずに疎外感を覚えたりすることがある状態のこと。
さらに分析すると、「聴者家族とのコミュニケーションや言語から取り残されること」「最近のニュースや出来事への情報アクセスの不足あるいは欠如」「会話を通した帰属意識と家族の中で排除される感覚」「会話から取り残されていたと実感するとき」の4つに分かれるという。
私一人、家族であって家族じゃなかったみたい。
今でもそんな感じ。
またディナーテーブル症候群のリサーチ結果では
・家族との会話に入っていくことがほとんどなかったから、親や兄弟からはずっと「何も考えていない」「おとなしい子」って思われていたみたい。本当は私だって色々と意見を言いたいし、思うことはあったのに。
・この前、大人になって久しぶりに妹に会った時にスマホで文字を打ちながら会話してくれた。私も妹のことが初めて分かったような気がしたけど、妹の方も「お姉ちゃん、そんなこと考えてたんだね」ってびっくりした。
私の身近にはろう者の方はいませんが、ろう者の方はそういう感覚をお持ちの方が多いという事実がちょっと読んでいて寂しくなりましたが、ろう者の方でも聞いてほしい。知ってほしい。という「言葉」がたくさんありました。
そして、今回の些細な口論の末に実母をナイフで刺した事件も根底にはこのディナーテーブル症候群が関係していましたが、肝心の加害者の勝俣郁美が頑なな態度で話してくれないという状態。
しかし、それを打開したのが「スクールサイン」でした。
各地のろう学校には、その学校でしか使われない手話ースクールサインがある。
これによって郁美は荒井達に心を開いてくれます。荒井が使ったスクールサインは「応援」というスクールサインでした。
荒井達だけではなくクラスメイト達、みんなが郁美を「応援」していることを荒井は伝えたかったのでしょうね。
事件の顛末が気になった方は是非とも読んでみてください^^
私は丸山正樹氏のデフ・ヴォイスシリーズは聴者には分からないろう者の言葉や叫びを掬って教えてくれるので、ハッとさせられますので好きなシリーズです。
*デフヴォイスシリーズ
デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士
龍の耳を君に デフ・ヴォイス新章
慟哭は聴こえない (デフ・ヴォイス)
*スピンオフ作品
刑事何森 孤高の相貌
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初志貫徹、実るほど頭を垂れる稲穂かな
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- 出版社:東京創元社
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- ISBN:9784488028480
- 発売日:2021年08月31日
- 価格:1760円
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