薄荷さん
レビュアー:
▼
べっとり濃厚な恐怖で怯えた読者は、巧妙に仕掛けられた罠にからめとられていく!一気読みするしかないこの本に閉じ込められ、絶望することを覚悟してほしい!
横溝正史ミステリ&ホラー大賞受賞は、納得!
選考委員の有栖川有栖先生曰く、
そう!がっつり怖いけど、それだけじゃない。
自分と愛する者の幸福な世界を守るため、怪異の謎に挑む主人公と一緒に歩いていた読者は、終章「最期の日」を読んだとき・・・えーっ!?となります。(=実体験)
そして、序章「始まる日」に戻って、繰り返し読まざるを得ません。
1回目読了後、絶妙に張り巡らせた伏線と罠に見事に引っかかっていたことに気付きます。
2回目読了後、さらりと読み過ごした情景と何気ない台詞に潜む意味に気付きます。
3回目読了後、濃密な絶望の迷宮で恐怖に腰を抜かしている自分に気付きます。
・・・怖さがさぁ・・・特殊すぎるよ・・・
-----------
さて、あらすじ。
長野の古民家で祖父、母、一年前に結婚した妻の夕里子(30歳)の4人で穏やかに暮らしているのが、主人公・久喜雄司(29歳)。
その幸せにヒビを入れたのが、同時期に起きた2つの異変。
1つは、久喜家代々の墓に刻まれた名前のうち、太平洋戦争で戦死した大伯父・久喜貞市の部分だけが人為的に削り取られていたこと。
もう1つは、遠い異国で亡くなった貞市の日記が、何故か今更届けられたこと。
地方新聞社の記者を通じて届けられたボロボロの日記には、異国の密林で久喜貞市曹長率いる部隊12人が、飢えと疲労とマラリアで次々倒れていく惨状が綴られていた。
一人が死に、一人を置き去りにし・・・残ったのは彼を含む3人のみ。
その時見かけた巨大な鳥=ヒクイドリを仕留めようと画策するが、武器もなく衰弱した彼らに叶うはずもなく・・・そこからヒクイドリを渇望する言葉が書き連ねられ、異様な執着が滲んでいく。
そして最終ページ6月9日は、日付の記載のみで終わる。(その日に亡くなったと復員した生き残りから聞き、位牌にも(削られた)墓石にも死亡日として刻んである。)
この日記を見てから、妙に思いつめたような様子の妻と、「妙な感じだ」と首をかしげる祖父。
困惑し戸惑う一同の中、取材に来ていた記者が唐突に呟く。
「久喜貞市は生きている」
この言葉が引き金となり、一気に異様な気配が辺りに満ちる。
その場にいた義弟・亮が憑かれたように、日付だけだった6月9日=貞市が無くなった日に一文書き込んだ。
「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」
妻がなぜか必死にこの文字に消しゴムをかけて消し去るが、この日を境に久喜家の周辺では奇妙で不幸な出来事が起こり始める。
貞市の命日を教えてくれた復員兵=藤村(90代)に日記を見せに行くと、寝たきりだった彼が「久喜曹長が食べた、火喰鳥を食べた、美味かった!」と騒ぎ出す。
翌日、藤原家は大火事で焼失し、藤原老は重体に。
雄司の祖父・保が失踪。
枕元に置かれていた貞市の日記に、消されたはずの文章が出現していた。
「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」
怪異のきっかけとなった記者が、何故か罹患したマラリアで重症に。
その上病院から脱走し、錯乱状態で久喜家に乱入して鉈を振り回し、仏壇と自分の体をぶち壊し・・・。
妻・夕里子連れられて、超常現象に詳しい北斗総一郎=夕理子の元カレを頼ることになったが、こいつがどうにも胡散臭い。
日が経つにつれ、事態は刻々と雄司たちに不利な方へと進んでいく・・・雄司は自分と愛する家族を守ることができるのか!?
-----------
えげつないシーンも多々ありますが、この話の怖さはそこじゃない。
善悪が表裏一体である以上、生き残る執念と執着の強さが勝敗を分ける。勝った方には未来に向かって歩く権利が、負けた方には死ぬより恐ろしいことが・・・!
昔見た鬱アニメと、人生で3つの指に入る悪夢を思い出し、読了して一週間以上が経つ現在も怖くて怖くて怖くて・・・。
怪異&謎が見事に混然一体となった本書を、とりあえずグロ大丈夫なホラーミステリ好きの方限定で、力いっぱいお勧めいたします。
選考委員の有栖川有栖先生曰く、
恐怖と謎がしっかりと絡んでいる。ミステリ&ホラー大賞にふさわしい
そう!がっつり怖いけど、それだけじゃない。
自分と愛する者の幸福な世界を守るため、怪異の謎に挑む主人公と一緒に歩いていた読者は、終章「最期の日」を読んだとき・・・えーっ!?となります。(=実体験)
そして、序章「始まる日」に戻って、繰り返し読まざるを得ません。
1回目読了後、絶妙に張り巡らせた伏線と罠に見事に引っかかっていたことに気付きます。
2回目読了後、さらりと読み過ごした情景と何気ない台詞に潜む意味に気付きます。
3回目読了後、濃密な絶望の迷宮で恐怖に腰を抜かしている自分に気付きます。
・・・怖さがさぁ・・・特殊すぎるよ・・・
-----------
さて、あらすじ。
長野の古民家で祖父、母、一年前に結婚した妻の夕里子(30歳)の4人で穏やかに暮らしているのが、主人公・久喜雄司(29歳)。
その幸せにヒビを入れたのが、同時期に起きた2つの異変。
1つは、久喜家代々の墓に刻まれた名前のうち、太平洋戦争で戦死した大伯父・久喜貞市の部分だけが人為的に削り取られていたこと。
もう1つは、遠い異国で亡くなった貞市の日記が、何故か今更届けられたこと。
地方新聞社の記者を通じて届けられたボロボロの日記には、異国の密林で久喜貞市曹長率いる部隊12人が、飢えと疲労とマラリアで次々倒れていく惨状が綴られていた。
一人が死に、一人を置き去りにし・・・残ったのは彼を含む3人のみ。
その時見かけた巨大な鳥=ヒクイドリを仕留めようと画策するが、武器もなく衰弱した彼らに叶うはずもなく・・・そこからヒクイドリを渇望する言葉が書き連ねられ、異様な執着が滲んでいく。
そして最終ページ6月9日は、日付の記載のみで終わる。(その日に亡くなったと復員した生き残りから聞き、位牌にも(削られた)墓石にも死亡日として刻んである。)
この日記を見てから、妙に思いつめたような様子の妻と、「妙な感じだ」と首をかしげる祖父。
困惑し戸惑う一同の中、取材に来ていた記者が唐突に呟く。
「久喜貞市は生きている」
この言葉が引き金となり、一気に異様な気配が辺りに満ちる。
その場にいた義弟・亮が憑かれたように、日付だけだった6月9日=貞市が無くなった日に一文書き込んだ。
「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」
妻がなぜか必死にこの文字に消しゴムをかけて消し去るが、この日を境に久喜家の周辺では奇妙で不幸な出来事が起こり始める。
貞市の命日を教えてくれた復員兵=藤村(90代)に日記を見せに行くと、寝たきりだった彼が「久喜曹長が食べた、火喰鳥を食べた、美味かった!」と騒ぎ出す。
翌日、藤原家は大火事で焼失し、藤原老は重体に。
雄司の祖父・保が失踪。
枕元に置かれていた貞市の日記に、消されたはずの文章が出現していた。
「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」
怪異のきっかけとなった記者が、何故か罹患したマラリアで重症に。
その上病院から脱走し、錯乱状態で久喜家に乱入して鉈を振り回し、仏壇と自分の体をぶち壊し・・・。
妻・夕里子連れられて、超常現象に詳しい北斗総一郎=夕理子の元カレを頼ることになったが、こいつがどうにも胡散臭い。
日が経つにつれ、事態は刻々と雄司たちに不利な方へと進んでいく・・・雄司は自分と愛する家族を守ることができるのか!?
-----------
えげつないシーンも多々ありますが、この話の怖さはそこじゃない。
善悪が表裏一体である以上、生き残る執念と執着の強さが勝敗を分ける。勝った方には未来に向かって歩く権利が、負けた方には死ぬより恐ろしいことが・・・!
昔見た鬱アニメと、人生で3つの指に入る悪夢を思い出し、読了して一週間以上が経つ現在も怖くて怖くて怖くて・・・。
怪異&謎が見事に混然一体となった本書を、とりあえずグロ大丈夫なホラーミステリ好きの方限定で、力いっぱいお勧めいたします。
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
スマホを初めて買いました!その日に飛蚊症になりました(*´Д`)ついでにUSBメモリーが壊れて書きかけレビューが10個消えました・・・(T_T)
この書評へのコメント
- 薄荷2025-07-14 08:53本書は祐太郎 さん主催の角川文庫夏フェア2025に挑戦!リスト本です。 
 https://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no448/index.html?latest=20
 
 すっかり遅くなってしまってすみません。
 怖くて夜にこの本が読み返せなかったもので、明るい時間を選んでレビュー作ってたらすっかり遅れました(^-^;クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。
 - コメントするには、ログインしてください。 
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:0
- ISBN:9784041127445
- 発売日:2022年11月22日
- 価格:792円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。








 
 













