darklyさん
レビュアー:
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ノーベル賞候補作家の描くディストピア小説。果たしてこれは何の寓話なのか。
物語は中国のある村で夢遊病が発生した1日を描いた物語です。主人公の念念は14歳。両親は葬儀用品の製造販売を行っており、母親の兄は火葬場を経営している。人が亡くなれば政府の方針により火葬しなければならないが土葬が一般的であった村の人々にとって自分の家族が火葬されることは耐え難いことであり密かに土葬しようとしている。そのことを念念の父親は母親の兄に密告しているが罪の意識に苛まれている。
そして夢遊病の患者が増えるにつれて起こる混乱、略奪のため他の村から暴徒が押し寄せる。朝が来れば夢遊病患者は目が覚めるのだが天候により朝になっても太陽が昇らない。主人公の父は夢遊病の中、自らの贖罪のため行動を起こす。
作者の閻連科はノーベル賞候補とも言われる作家ではありますが、中国では発禁の作品が多いことでも知られます。本書についても中国大陸では発売されておりません。この物語は何らかの寓話であることは間違いありませんが、果たして何に対しての寓話であるのかは定かではありません。物語のモチーフは作中に出てくる太平天国の乱であるかもしれませんが、特に政府等への批判という感じでもありません。私のレベルで分かることはこの物語はいつの世も変わらない人間の本質について書かれていることだけです。
この物語では夢遊病が発生することによる地域の混乱が描かれるわけですが、様々なタイプの人間が登場します。まずは本当に夢遊病にかかっている人たち。そしてその人たちもその行動によって二つのタイプに分かれます。潜在的に抱えている社会や他人に対する不満を爆発させるタイプの夢遊人と逆に内に抱えている疚しいことを告白し許しを得ようとするタイプの夢遊人。主人公の父親は後者に該当します。
そして夢遊病にかかっていない人たち。危険を冒して皆を夢遊病から目覚めさせようと行動する人もいれば、夢遊病にかかったフリをして略奪等を行おうとする人。身の危険を避けるために同じく夢遊病にかかったフリをして回りに同調して動く人々。
この物語のこのような混乱のきっかけは夢遊病ですが、結局天災だろうが、宗教や新しい社会ムーブメントだろうが、社会が不安に包まれると抑え込まれていた不満が噴出し、エゴが剥き出しになり、既得権益を破壊しようとする動きにつながるということは古今東西どこでも見られます。
あえてこの物語を現在の中国に対する寓話として当て嵌めてみますと、共産党による一党支配が絶対的に正しいと狂信している人が夢遊病、夢遊病のフリをして略奪等を行おうとするのは汚職にまみれた官僚や官僚と癒着しモラルを持たずに金を儲けようとする者たち、身の危険を避けるために同じく夢遊病のフリをして同調するのは表面上共産党一党支配に賛同する大多数の人々ということになるでしょうか。まあこんな単純な想像が当て嵌まるとも思えませんが。
ただ一つ気になるのは作者閻連科自身が物語のキャラクターとして出てきます。彼は物語が書けなくて悩んでいたところ、夢遊病にかかりインスピレーションが沸いて物語が書けると喜びます。しかし閻連科は自分が夢遊病にかかっていることを自覚しており、それは主人公との会話で判明します。上述の現在中国に当て嵌めてみると、夢遊病にかかっていれば、つまり中国共産党に同調しているのならば、物語がかける(発禁にならない)。夢遊病にかかっていることを自覚しているにも関わらずその状態のまま物語を書こうとする行為は、同調しているフリをしているだけだということを表していると考えるのは邪推でしょうか。
そして夢遊病の患者が増えるにつれて起こる混乱、略奪のため他の村から暴徒が押し寄せる。朝が来れば夢遊病患者は目が覚めるのだが天候により朝になっても太陽が昇らない。主人公の父は夢遊病の中、自らの贖罪のため行動を起こす。
作者の閻連科はノーベル賞候補とも言われる作家ではありますが、中国では発禁の作品が多いことでも知られます。本書についても中国大陸では発売されておりません。この物語は何らかの寓話であることは間違いありませんが、果たして何に対しての寓話であるのかは定かではありません。物語のモチーフは作中に出てくる太平天国の乱であるかもしれませんが、特に政府等への批判という感じでもありません。私のレベルで分かることはこの物語はいつの世も変わらない人間の本質について書かれていることだけです。
この物語では夢遊病が発生することによる地域の混乱が描かれるわけですが、様々なタイプの人間が登場します。まずは本当に夢遊病にかかっている人たち。そしてその人たちもその行動によって二つのタイプに分かれます。潜在的に抱えている社会や他人に対する不満を爆発させるタイプの夢遊人と逆に内に抱えている疚しいことを告白し許しを得ようとするタイプの夢遊人。主人公の父親は後者に該当します。
そして夢遊病にかかっていない人たち。危険を冒して皆を夢遊病から目覚めさせようと行動する人もいれば、夢遊病にかかったフリをして略奪等を行おうとする人。身の危険を避けるために同じく夢遊病にかかったフリをして回りに同調して動く人々。
この物語のこのような混乱のきっかけは夢遊病ですが、結局天災だろうが、宗教や新しい社会ムーブメントだろうが、社会が不安に包まれると抑え込まれていた不満が噴出し、エゴが剥き出しになり、既得権益を破壊しようとする動きにつながるということは古今東西どこでも見られます。
あえてこの物語を現在の中国に対する寓話として当て嵌めてみますと、共産党による一党支配が絶対的に正しいと狂信している人が夢遊病、夢遊病のフリをして略奪等を行おうとするのは汚職にまみれた官僚や官僚と癒着しモラルを持たずに金を儲けようとする者たち、身の危険を避けるために同じく夢遊病のフリをして同調するのは表面上共産党一党支配に賛同する大多数の人々ということになるでしょうか。まあこんな単純な想像が当て嵌まるとも思えませんが。
ただ一つ気になるのは作者閻連科自身が物語のキャラクターとして出てきます。彼は物語が書けなくて悩んでいたところ、夢遊病にかかりインスピレーションが沸いて物語が書けると喜びます。しかし閻連科は自分が夢遊病にかかっていることを自覚しており、それは主人公との会話で判明します。上述の現在中国に当て嵌めてみると、夢遊病にかかっていれば、つまり中国共産党に同調しているのならば、物語がかける(発禁にならない)。夢遊病にかかっていることを自覚しているにも関わらずその状態のまま物語を書こうとする行為は、同調しているフリをしているだけだということを表していると考えるのは邪推でしょうか。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:河出書房新社
- ページ数:0
- ISBN:9784309208619
- 発売日:2022年09月27日
- 価格:3960円
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