三太郎さん
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地球科学と天変地異の周期性について。
今年の8月に出たばかりのブルーバックス(新書)です。著者の藤岡さんは海底の巨大地形の専門家だとか。この本では千年単位の短期間の話から1億年単位の地球上の生物大絶滅の話まで、人間にはどうしようもない災害の原因を科学的に考察していきます。ただし、多くの場合、これらの地球規模の大災害の原因はこれが原因だと一つに特定できないことが大部分の様です。
身近なところでは、日本の地震や火山の噴火といった大災害に周期性があるかという話題がありました。有史時代の日本では9世紀(平安時代)と18世紀(江戸中期)に大地震と大噴火が目立っています。富士山が大噴火したのも9世紀と18世紀でした。約千年周期で大地震や富士山噴火が起こると考えると当面は大丈夫そうですが、2011年の大地震もあるので、油断はできませんね。
太陽の活動には周期性があって、11年周期で太陽表面の黒点の数が変化します。さらに100~200年間隔で極端に黒点の少ない時期(極小期)がやってきて、気候が寒冷化し飢饉が起きました。極小期には大きな火山噴火が見られますが、因果関係は不明です。またなぜか1820年以降は極小期は見られなくなりました。(これからやってくるのかも知れませんが。)
氷河期(現在は「氷河時代」と呼ぶらしい)の氷期と間氷期のサイクルは10万年周期といえそうです。現在はウルム氷期が終わって温暖な間氷期に入っているので近々また氷河期がやってくるのかも。しかし、今の氷河時代は200万年前に始まったもので、それ以前の氷河期というと約3億年前まで遡らなくてはなりません。なぜ氷河期が始まったのか不明なので、いつまで続くのか、あるいはいつ終わるのかも予測不能ではないかな。
今から6千年ほど前には気候は今より温暖で、海水面が上昇し、関東平野も東京タワーのある芝公園の下あたりまで海が侵入したことが分っています。縄文海進と呼びます。(気候の温暖化が話題になっていますが、縄文中期よりはまだだいぶ気温は低いようです。もっとも縄文中期なみに海水面が上がったら、日本の大都市はほとんど壊滅しますが。)
もっと古くは白亜紀にも海進がありましたが、原因がはっきりしないとか。著者はこの時期に海洋底でのプレートの産出量が多く、海水面を持ち上げたと考えています。(陸地の広さも変動するもののようです。)
地球上に生物が誕生してから今日まで、生物の大絶滅が少なくとも5回あったと考えられています。それらは巨大火山の爆発とか巨大隕石の衝突など原因は様々考えられますが、生物の繁栄自体が地球環境を改変していき、大絶滅に繋がった可能性もあるようです。
オルドビス紀末(4.4億年前)の大量絶滅では三葉虫などの海洋生物の85%が絶滅したとか。デボン紀末(3.6億年前)の大量絶滅では甲冑魚などの海洋生物の種の82%が絶滅したとか。このときに海洋無酸素事変が起きたといいます。大規模なマグマの活動が原因という説がありますが、どうもはっきりは解らないらしい。
その後もベルム紀末(2.5億年前)、三畳紀末(2億年前)にも大量絶滅が起こっています。白亜紀末(6.6千万年前)の大量絶滅は巨大隕石の衝突が原因だという説が有力です。
ベルム紀末の大量絶滅でも海洋無酸素事変が起きたのですが、これは超大陸パンゲアの形成により海流の流れが悪くなったためという説があります。
最近話題の地磁気の反転ですが、これは大量絶滅との関連はなさそうだとか。
これらの大量絶滅が実は3千2百万年周期で起こっているという説が提唱されているとか。だとすると大量絶滅はもっと頻繁に起きていたことになります。
大量絶滅の原因は白亜紀末のもの以外は決定的な説はないようです。
もっと長い周期の変動として3億年周期で超大陸が出来たり分裂したりしているという説が紹介されています。超大陸の分裂はマントルの対流(プルーム)によります。この3億年周期の大陸移動と、地球の全球凍結を含む氷河期の周期が3億年であることとは関係がありそうです。因果関係はまだ分かっていないようですが。
最後にもっと大きなスケールの話が出てきます。太陽系が銀河を2.5億年かけて一周する間に、上下に振動を繰り返しています。その周期が3千万年で、そのたびに太陽系のオールトの雲から小惑星が軌道をそれて地球にぶつかってくるという説です。これだとおよそ3千万年周期の大量絶滅は隕石の衝突が原因なのかも。
最後に個人的な意見を述べさせていただきます。温暖化ガスの排出規制について様々な議論がありますが、時間のスケールに注意しないと訳の分からないことになりそうです。太陽の黒点の極小期がきて寒冷化するという意見もありますが、今のところ太陽の活動は活発で極小期の気配はありません。太陽の黒点の極小期に周期性があるという指摘も観測が約千年分しかないのですから、将来の予測には不向きなのかもしれません。10万年周期で氷期と間氷期が繰り返すという事実からは2千年後には氷期に入ると予測されますが、だいぶ先の話です。
このまま温暖化が進むと縄文中期の海進期が再現するかも知れません。長い目で見れば2千年後の氷期に備えて温暖化を進めるという選択肢もありそうですが、その前に東京や大阪の町の多くが海に沈みそうです。
僕の提案は、化石燃料の利用はそろそろ止めて、2千年後に氷期がきたら、その時には石油を燃やして温暖化ガスを放出し氷期を遅らせるのがよいと思うのですが、いかがでしょうか?
どちらにしろ、長期的には気候変動は避けられない訳ですが。人間のできることは高が知れています。
身近なところでは、日本の地震や火山の噴火といった大災害に周期性があるかという話題がありました。有史時代の日本では9世紀(平安時代)と18世紀(江戸中期)に大地震と大噴火が目立っています。富士山が大噴火したのも9世紀と18世紀でした。約千年周期で大地震や富士山噴火が起こると考えると当面は大丈夫そうですが、2011年の大地震もあるので、油断はできませんね。
太陽の活動には周期性があって、11年周期で太陽表面の黒点の数が変化します。さらに100~200年間隔で極端に黒点の少ない時期(極小期)がやってきて、気候が寒冷化し飢饉が起きました。極小期には大きな火山噴火が見られますが、因果関係は不明です。またなぜか1820年以降は極小期は見られなくなりました。(これからやってくるのかも知れませんが。)
氷河期(現在は「氷河時代」と呼ぶらしい)の氷期と間氷期のサイクルは10万年周期といえそうです。現在はウルム氷期が終わって温暖な間氷期に入っているので近々また氷河期がやってくるのかも。しかし、今の氷河時代は200万年前に始まったもので、それ以前の氷河期というと約3億年前まで遡らなくてはなりません。なぜ氷河期が始まったのか不明なので、いつまで続くのか、あるいはいつ終わるのかも予測不能ではないかな。
今から6千年ほど前には気候は今より温暖で、海水面が上昇し、関東平野も東京タワーのある芝公園の下あたりまで海が侵入したことが分っています。縄文海進と呼びます。(気候の温暖化が話題になっていますが、縄文中期よりはまだだいぶ気温は低いようです。もっとも縄文中期なみに海水面が上がったら、日本の大都市はほとんど壊滅しますが。)
もっと古くは白亜紀にも海進がありましたが、原因がはっきりしないとか。著者はこの時期に海洋底でのプレートの産出量が多く、海水面を持ち上げたと考えています。(陸地の広さも変動するもののようです。)
地球上に生物が誕生してから今日まで、生物の大絶滅が少なくとも5回あったと考えられています。それらは巨大火山の爆発とか巨大隕石の衝突など原因は様々考えられますが、生物の繁栄自体が地球環境を改変していき、大絶滅に繋がった可能性もあるようです。
オルドビス紀末(4.4億年前)の大量絶滅では三葉虫などの海洋生物の85%が絶滅したとか。デボン紀末(3.6億年前)の大量絶滅では甲冑魚などの海洋生物の種の82%が絶滅したとか。このときに海洋無酸素事変が起きたといいます。大規模なマグマの活動が原因という説がありますが、どうもはっきりは解らないらしい。
その後もベルム紀末(2.5億年前)、三畳紀末(2億年前)にも大量絶滅が起こっています。白亜紀末(6.6千万年前)の大量絶滅は巨大隕石の衝突が原因だという説が有力です。
ベルム紀末の大量絶滅でも海洋無酸素事変が起きたのですが、これは超大陸パンゲアの形成により海流の流れが悪くなったためという説があります。
最近話題の地磁気の反転ですが、これは大量絶滅との関連はなさそうだとか。
これらの大量絶滅が実は3千2百万年周期で起こっているという説が提唱されているとか。だとすると大量絶滅はもっと頻繁に起きていたことになります。
大量絶滅の原因は白亜紀末のもの以外は決定的な説はないようです。
もっと長い周期の変動として3億年周期で超大陸が出来たり分裂したりしているという説が紹介されています。超大陸の分裂はマントルの対流(プルーム)によります。この3億年周期の大陸移動と、地球の全球凍結を含む氷河期の周期が3億年であることとは関係がありそうです。因果関係はまだ分かっていないようですが。
最後にもっと大きなスケールの話が出てきます。太陽系が銀河を2.5億年かけて一周する間に、上下に振動を繰り返しています。その周期が3千万年で、そのたびに太陽系のオールトの雲から小惑星が軌道をそれて地球にぶつかってくるという説です。これだとおよそ3千万年周期の大量絶滅は隕石の衝突が原因なのかも。
最後に個人的な意見を述べさせていただきます。温暖化ガスの排出規制について様々な議論がありますが、時間のスケールに注意しないと訳の分からないことになりそうです。太陽の黒点の極小期がきて寒冷化するという意見もありますが、今のところ太陽の活動は活発で極小期の気配はありません。太陽の黒点の極小期に周期性があるという指摘も観測が約千年分しかないのですから、将来の予測には不向きなのかもしれません。10万年周期で氷期と間氷期が繰り返すという事実からは2千年後には氷期に入ると予測されますが、だいぶ先の話です。
このまま温暖化が進むと縄文中期の海進期が再現するかも知れません。長い目で見れば2千年後の氷期に備えて温暖化を進めるという選択肢もありそうですが、その前に東京や大阪の町の多くが海に沈みそうです。
僕の提案は、化石燃料の利用はそろそろ止めて、2千年後に氷期がきたら、その時には石油を燃やして温暖化ガスを放出し氷期を遅らせるのがよいと思うのですが、いかがでしょうか?
どちらにしろ、長期的には気候変動は避けられない訳ですが。人間のできることは高が知れています。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
この書評へのコメント
- ゆうちゃん2022-11-16 22:35
興味深い分野の本のご紹介ありがとうございます。
地磁気と大量絶滅の関連ですが、先日TVで以下の様な話を聞きました。
・ペルム紀末に、超大陸の形成によりスーパープルームがマントル最深部、外核まで達した。
・外核は地磁気を生み出す原動力だが、その落ちてきたプレートに外乱され地磁気が不安定なった。
・地磁気が不安定になると一時的に磁力が弱まり、宇宙線の降下が強まった。その結果、雲が出来易くなり、寒冷化が進んで大量絶滅が起きた。
これも仮説ですから決定的な証拠はありません。
ペルム紀末は超大陸パンゲアの形成であって再分裂ではなかったと思いますが・・。
化石燃料の使用を止める、は賛成です。ただ見過ごされるのはそのスピードです。地球史上、温暖化で今よりもっと高温になったことはありますが、人間の温暖化は自然の温暖化より遥かに速く、生態系がついていけません。2千年後にバランスの良い化石燃料の使用が出来ればよいですね。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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