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紅い芥子粒
レビュアー:
アフリカ大陸の密林の闇は濃く深い。
作者は、1857年に生まれた。少年のころから地図を見るのが好きだった。
帝国主義の時代。世界はヨーロッパ諸国に分割支配され、世界地図はそれぞれの国の色に塗り分けられていた。その中に、まっしろな大陸があった。白人未踏のアフリカ大陸。
山も川も書き込まれていない、未知の大陸。
いつか、じぶんがそこへ行ってみたい。少年のころの作者の夢だった。
作者は、17歳で船乗りになり、世界の海をかけめぐる。
33歳のとき、”北部コンゴ貿易会社”の河船の船長になり、コンゴ河を遡行した。
現地で奪った象牙やゴムを運搬する船である。
そのときの体験と受けた衝撃をもとに書いた小説だという。

物語の主人公マーロウも、作者と同じように、ヨーロッパの大きな商社の河船に乗り込む。コンゴ河を遡行し、象牙やゴムを運ぶ船だ。
マーロウの叔母は、「何百万もの無知蒙昧な人たちをおぞましい風習から救い出してあげなきゃ」といって、アフリカに旅立つ甥を祝福した。彼女は、イギリス本国で優雅に暮らすブルジョワ夫人だった。
”光の伝道者”——それが、白人たちの植民地支配の大義だったのだ。
マーロウには、会社が考えているのは金もうけだけだとわかっていたけれど。

光の伝道者とか、金もうけとか、マーロウを待ち受けていたアフリカの現実は、そんな生易しいものではなかった。
熱病や黒人との抗争で、三日に一人は白人が死んでいた。
マーロウ自身も、常に何かの熱病でふらふらしていた。
奴隷として船に乗り込ませた黒人には、人肉食の習慣があった。
コンゴ河上流の奥地で、黒人たちに崇拝されていたはずの商社の支配人は、実は黒人たちを虐殺していた。その人は重い熱病にかかり、「地獄だ、地獄だ」とうなされながら死んでいった。

作者はアフリカから生還した後も、マラリアの後遺症と気鬱の病で苦しんだという。

アフリカ大陸の密林の闇は濃く深い。
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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:560 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

読んで楽しい:1票
参考になる:29票
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この書評へのコメント

  1. noel2022-11-30 15:05

    話を聞くだけでも気鬱になります。

  2. 紅い芥子粒2022-12-01 08:19

    noelさん、お久しぶりです。
    気鬱のときは、癒し系の本がいいですよねえ。闇に分け入る話よりも……

  3. noel2022-12-01 08:54

    懐かしい赤い芥子粒さんの声が聴けて、ほっとしました。長い間、他の方の書評を読みに行っていません。その間、あまり投稿しなくなった人もいますし、HNを変えた人もいて、人さまざまだなあと感慨深いものがあります。

  4. 紅い芥子粒2022-12-01 19:13

    人生いろいろ、人さまざまですものね。わたしも、さいきんは投稿間隔が空くようになったかなあ。ぼちぼち、細く長くやっていこうと思っています(笑

  5. noel2022-12-01 13:10

    ですねえ、少し休憩しながらやってかないと、息切れがしますね。ただでさえ、遅読翁だし、書き下手だしで、なかなかここへは来られません。なくとなく仲間も減ったみたいだし……。

  6. 紅い芥子粒2022-12-01 19:15

    マイペースでやっていきましょうよ。ときどきは、お立ち寄りください。

  7. noel2022-12-01 21:37

    ありがとうございます。自分勝手なスピードですが、時折は赤い芥子粒さんのご書評だけは読みに来るようにします。

  8. No Image

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