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Wings to fly
レビュアー:
人と犬との間に築かれてゆく信頼関係を描いた、かけがえのない11年の記録。
秋田犬や柴犬などの日本犬は、縄文時代から日本人と強い結びつきがある。また彼らは、あらゆる犬種の中で最もオオカミと遺伝子が近い。習性の中に「野生」を残しているということだ。

本書は、初めて飼った秋田犬に試行錯誤しつつ信頼関係を築いていった家族とテン(正式名は「天鵬(てんほう)号」)との、かけがえのない11年間の記録である。
表紙をめくったところに、三人の小学生と一緒に海を見ているテンの写真がある。後ろ足で立ち上がった姿は、子どもたちより背が高い。嬉しそうな顔がホントに可愛い。だが、著者の村山さんは言う。

「秋田犬とは、可愛い顔をしてはいるが、ほぼ、人に良く懐いたオオカミである。」

秋田犬の平均的な体重は30キロ以上。ルーツは東北マタギの狩猟犬だが、温和で優しく、愛嬌があって忠実で、犬の鑑みたいなヤツである。しかし!散歩の途中で喧嘩を売ってくる犬に出会ってしまったら、そのすさまじい戦闘力が全開となる。相手の犬もリードに引きずられる人間も危ない。だって、強すぎますから!!

大事なのは、周囲に危害を与えない犬に育てるための根気強い教育だ。1日10キロの散歩が必要なので、運動量の確保も大問題。オオカミ遺伝子のせいか添加物に敏感で栄養管理にも気を遣い、たくさん食べるから食費も半端ない。これらを克服する気概のある人でなければ飼いづらい。

頑固ジジイみたいなプライドの高さもあり、頭が良いから理不尽な扱いに反抗する。これを「ペット」と呼んで良いものか?秋田犬は、全く一筋縄ではいかない。だがテンは「ボク、あなた方家族のメンバーの一員です」という自覚を持っている。そこにあるのは相互の信頼で、その絆が出来上がるまでのエピソードに、笑って泣かされる。

「世界人類共通の自然遺産と呼べる日本犬を、実際に家族(群れの一員)として共に暮らせるのは本当に恵まれたことなのです。」と、村山さんは言う。だって彼らは、人を対等に扱い信じてくれる存在なのだから。

などと書いている私の傍で、天然記念物の日本犬(柴犬)が眠っている。時折、散歩の途中で「お母上、そっちには絶対に!行かないでござる!」などと足を踏ん張って抵抗するめんどくさい奴ではあるが、毎日の喜怒哀楽を共にする人生の相棒なのだ。ね、長生きしてよね。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

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この書評へのコメント

  1. hacker2022-11-09 08:43

    私が小さいころ、家で秋田犬を飼っていました。色々とエピソードのある犬でしたが、それを思い出すと、「可愛い顔をしてはいるが、ほぼ、人に良く懐いたオオカミである」というのは、すごくよく分かります。小さかった私のことは、彼(ゴローという名前でした)の家族内のランク付けでは、あきらかに下に見ていたようで、おっかなかったです。

  2. Wings to fly2022-11-09 14:41

    秋田犬と暮らした経験をお持ちなんですね!あの大きさは、子どもに怖がられて当然かと(笑)本書のテンちゃんは「子どもの面倒をみるのも自分の仕事」だと思っていたようです。3人のお子さんは、おふざけが過ぎるとテンに手荒く怒られたりしていましたから、テンはやはり自分の方がアニキだと思っていたのでしょう。
    テンの死が近いと判明した時、末っ子のお嬢さんは19歳でしたが、一年早く振袖を着て、二人のお兄ちゃんの成人式の時と同様に、写真館でテンと共に家族写真を撮ったんです。そのエピソードに涙が止まらなくて困りました(TT)

  3. No Image

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