章の時制は意図的に入れ替えられており、読者は「優等生ガランスがなぜ変わっていったのか」を知る。GoogleやFacebookが活躍の場を与えたことで、自分達に価値があることを知ってしまったインターネット世代を主役に据えた、まさにSNSありきの時代だからこそ出てきたミステリ。フランスは個人主義というイメージが強いが、そうはいっても自我確立の真っ最中のティーンにはまだ「私は私」の割り切り方はできない。ガランスをフォローしてくれた彼女の憧れの上級生であるモードやその取り巻きの上級生達の化けの皮は、後々明かされてゆkが、正直オトナ読者から見ると、彼等の薄っぺらさはかなりわかりやすく描かれている。だが、わずか15歳で人間の本質を見極めることなど不可能だ。一足飛びにいろいろ分かったオトナの世界に出てくることも。
一旦拡散されたらどこまで広がるかわからず、どのように利用されるかわからない。そしてデジタル遺産として自分が死んだ後もいつまでも残ってしまう。たった一言で人間を絶望の淵においやってしまえるツイートの残虐性。「いつでもどこでも誰とでも繋がれる」と利点がアピールされてきたSNSが、一人の女子高生をアナログ社会からも追い出してしまう様は本当に恐ろしい。





2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。
この書評へのコメント
- 星落秋風五丈原2022-11-10 21:53
みなさんこんばんは。コメントありがとうございます。イーロン・マスク氏騒動を子供達がどの程度わかってるかは疑問ですがSNSによって嗜好を読み取られ誘導されているのは大人達と同様なわけで。それを自覚している大人ならある程度知った対応が取れますが、経験不足な子供達がツールだけはいっちょまえに使えると、その危うさを知らないで利用されたり暴走した時が怖いなぁとつくづく思いました。シンプルフレーズだからこそのキツさとか無責任とか、世の中にはびこってるつぶやきだよなーと思いながら読みました。
クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - hacker2022-11-11 09:10
先日レビューを書いたベトナム戦争を扱った『本当の戦争の話をしよう』の中で、次のようなことが述べられています。
「ジエムがどんな独裁制を敷いていたか、ヴェトナムのナショナリズムがどのようなものか、あるいは長いフランス植民地統治についてなんてこれっぽっちも知らない。そういう事情は非常に複雑だし、それを理解するには本を読んで研究しなくてはならない。しかしそんなことは彼らにはどうだっていいのだ。それはコミュニストを封じ込めるための戦争なんだ。単純明快である。そしてそれがまさに彼らの求めているものなのだ」
これ、正にTwitterにも当てはまることで、「シンプルフレーズだからこそのキツさとか無責任とか、世の中にはびこってるつぶやきだよな」というご意見にまったく同意します。単純な短いフレーズで語れる問題などそう多くはないはずだと、いつも思います。ちなみに、私はTwitterは使ったことがありません。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
- 出版社:早川書房
- ページ数:0
- ISBN:9784152101655
- 発売日:2022年09月14日
- 価格:3630円
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