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星落秋風五丈原
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さらばTwitter されどTwitter 若者にとってSNSは光か それとも
 フランスの小さな町に住む15歳のガランスにとって、SNSは世界の全てだった。平凡な高校生だった彼女は、ハロウィーンの夜、上級生の人気グループに仲間入りを果たし、一躍スクールカーストの上位に躍り出る。SNSでも常に注目の的だったガランスは、町で開催されたモデルコンテストでも順調に予選を通過していたのに、ある日突然謎の失踪を遂げ、SNSアカウントも全て閉鎖されていた。警察が捜査に乗り出したところ、ガランスの失踪前、彼女の動画がネット上に流出していたことが判明し。

 章の時制は意図的に入れ替えられており、読者は「優等生ガランスがなぜ変わっていったのか」を知る。GoogleやFacebookが活躍の場を与えたことで、自分達に価値があることを知ってしまったインターネット世代を主役に据えた、まさにSNSありきの時代だからこそ出てきたミステリ。フランスは個人主義というイメージが強いが、そうはいっても自我確立の真っ最中のティーンにはまだ「私は私」の割り切り方はできない。ガランスをフォローしてくれた彼女の憧れの上級生であるモードやその取り巻きの上級生達の化けの皮は、後々明かされてゆkが、正直オトナ読者から見ると、彼等の薄っぺらさはかなりわかりやすく描かれている。だが、わずか15歳で人間の本質を見極めることなど不可能だ。一足飛びにいろいろ分かったオトナの世界に出てくることも。

 一旦拡散されたらどこまで広がるかわからず、どのように利用されるかわからない。そしてデジタル遺産として自分が死んだ後もいつまでも残ってしまう。たった一言で人間を絶望の淵においやってしまえるツイートの残虐性。「いつでもどこでも誰とでも繋がれる」と利点がアピールされてきたSNSが、一人の女子高生をアナログ社会からも追い出してしまう様は本当に恐ろしい。
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2022-11-09 06:04

    これ気になって一旦手に取ってはみたものの、結構な分厚さにたじろいでまた棚にもどしてしまっていました。

    星落秋風五丈原さんが5つ★なら、やっぱり読んでみようかしら。

  2. くにたちきち2022-11-09 06:14

    星落秋風五丈原さん:Twitterよさらば――というコメントから、最近のCEOの交代で、大変革を進めているアメリカのツイッター社の有様を見て、決別したのかなと思って読みましたら、まったく別のことでした。10年以上に亘って、時々利用していた、Twitterへの投稿を止めようと思っている最中だったので、とんだミスマッチでした(W)。

  3. 星落秋風五丈原2022-11-10 21:53

    みなさんこんばんは。コメントありがとうございます。イーロン・マスク氏騒動を子供達がどの程度わかってるかは疑問ですがSNSによって嗜好を読み取られ誘導されているのは大人達と同様なわけで。それを自覚している大人ならある程度知った対応が取れますが、経験不足な子供達がツールだけはいっちょまえに使えると、その危うさを知らないで利用されたり暴走した時が怖いなぁとつくづく思いました。シンプルフレーズだからこそのキツさとか無責任とか、世の中にはびこってるつぶやきだよなーと思いながら読みました。

  4. hacker2022-11-11 09:10

    先日レビューを書いたベトナム戦争を扱った『本当の戦争の話をしよう』の中で、次のようなことが述べられています。

    「ジエムがどんな独裁制を敷いていたか、ヴェトナムのナショナリズムがどのようなものか、あるいは長いフランス植民地統治についてなんてこれっぽっちも知らない。そういう事情は非常に複雑だし、それを理解するには本を読んで研究しなくてはならない。しかしそんなことは彼らにはどうだっていいのだ。それはコミュニストを封じ込めるための戦争なんだ。単純明快である。そしてそれがまさに彼らの求めているものなのだ」

    これ、正にTwitterにも当てはまることで、「シンプルフレーズだからこそのキツさとか無責任とか、世の中にはびこってるつぶやきだよな」というご意見にまったく同意します。単純な短いフレーズで語れる問題などそう多くはないはずだと、いつも思います。ちなみに、私はTwitterは使ったことがありません。

  5. No Image

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