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DBさん
DB
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王家に生まれた者の宿命の話
プトレマイオス王朝最後の女王クレオパトラ七世の物語です。
ニューオリンズ生まれの作者は映画制作の仕事をしながら本作を書いたそうで、女性ならではの視点と映像が目に浮かんでくるような描写で若きクレオパトラの姿を描いていきます。
前半生となる本作はクレオパトラがまだ三歳の幼児の頃から始まります。
病気で死の床に就いた母親のクレオパトラ五世トリファイナのもとに、異父姉テイア、五歳年上の姉ベレニケ、そして父プトレマイオス十二世アウレテスが並ぶ。
それは母親の死を嘆く家族の姿からは程遠いものだった。
特にトリファイナがシリア王との最初の結婚でもうけていたテイアにとって母親の死は、王家の老女たちが暮らす館へ送られるか他国へ嫁がされるかシリアへ送り返されるという運命を意味していた。
母親似の十五歳のテイアはトリファイナの息がまだあるうちにアウレテスを誘惑するという手段に出た。
これは娘より義父の方が悪い気もするが、そもそも兄弟姉妹での婚姻を繰り返してきたプトレマイオス王家にとってタブーなどないのだろう。

王妃となったテイアが妹のアルシノエ、そして二人の弟を産む中で成長していくクレオパトラですが、父親を愛するあまり継母のことは憎んでいた。
ローマ寄りの政策を取り続けてきたアウレテスですが、笛吹王の異名があらわす通り酒と肉欲に溺れる道楽者としての姿と、自らの政治基盤の弱さからローマに頼るがそれがより民衆の反感をかっていく。
国を追われるかのように逃げ出しローマへ行くが、そこにクレオパトラも同行しポンペイウスやアントニウスといったローマの将軍たちと接する機会を得ていきます。
父親への傾倒とこのローマでの経験が、クレオパトラの政治的な基礎を作り上げたのかもしれない。

継母テイアと姉ベレニケの起こした反乱、父によるベレニケの処刑、そして父の死により弟プトレマイオス十三世と妹アルシノエとの内戦と家族同士の抗争が続きます。
権力の前には家族の絆など存在しないともいうが、クレオパトラの物語だからか姉ベレニケの粗暴さや妹アルシノエの邪悪さ、そして弟プトレマイオスの愚かさが強調されていた気もする。
アレキサンドリアからナイルを上ってテーベを掌握し弟妹への対策に追われる間に、はるかローマではカエサルが決意を胸にルビコンを渡っていた。
クレオパトラとカエサル、二人の運命が交わる日を目前に上巻は幕を閉じます。
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DB さん本が好き!1級(書評数:2026 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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