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献本書評
休蔵さん
休蔵
レビュアー:
本書は全国各地にあるタイルを紹介した1冊。タイルは芸術であることを強く実感させられた。
 昭和の文化住宅は、台所や風呂、便所はタイルを用いるのが当たり前だったように思う。
 文化財指定されている建造物を見学すると、重厚な日本家屋にひっそりとタイルを用いているものに出会うことがあるが、これは改装を繰り返した延長上で最新の素材を用いたということになるのだろう。
 タイルは珍しい素材、高価な素材として導入され、核家族化の進行とともに広く用いられるようになったということか。
 浴室はタイル張りだったなあ。 
 しかし、タイルの使用は著しく減少しているように思う。
 いまやタイルはノスタルジックな存在になってしまったようだ。
 ノスタルジックなタイルを愛でるため、本書は誕生したと言えようか。

 さて、本書は全国各地にあるタイルを紹介した1冊である。
 紹介する建造物は46もあるが、その選別には相当頭を悩ませたそうだ。
 そりゃそうだろう。
 タイルを使用した建造物なんて、日本各地に数多ある。
 本書にはそのなかからの選りすぐりが結集しているということになる。

 タイルの使用のあり方を「いろいろなタイル」と銘打ってコラム風に紹介している点も面白い。
 マジョリカタイル、モザイクタイル、本業敷瓦(タイル)、美術タイル・工芸タイル、小口タイル、一丁掛タイル、デザインタイル、その他である。
 さらに台湾にまで足を運び、台湾のタイルも紹介する。

 タイルは不思議なものだ。
 1枚で強いデザイン性を持つものもあれば、複数を組み合わせることで色彩豊かなデザインを実現しているものもある。
 植物の形状を模したものもあれば、手書きのイラストを散りばめたものもある。
 使用場所はおなじみの風呂や便所もあれば、部屋そのものを飾る場合もあるようだ。
 使用する建造物も住宅に限らず、ホテルや旅館、役場に図書館、美術館と種類に富む。
 群馬県にある洞窟観音は相当に特殊だ。
 約400mという長さの手掘りの洞窟に39体の観音像を安置した洞窟観音は、入り口部にコンクリートのトンネルを築いているが、そこに観音のモザイク画が設えてある。
 それなのに宗教施設ではないとのこと。
 
 タイルは不思議だ。
 触ると冷たく固い感触だけしかないが、デザインによっては温かな印象を受けることもある。
 温かな印象のタイルに囲まれた空間は、全体が温かくなったような錯覚を起こさせる。
 単なる物質という枠を大きくこえた魅力をタイルが備えていることの証だろう。

 本書は一般公開している建造物も多く紹介している。
 今までタイルを明確な目的として建造物巡りをしたことはなかった。
 タイルを気にしたことすらない。
 本書を捲るようになってから、職場の隣のビルの外壁が濃い藍色のタイル張りと気づいた。
 いままでは、単なる壁という認識だったのに。
 タイルは街歩きの理由になるし、旅の理由にすらなり得る。
 紹介している建造物は46である。
 当然のことながら、全47都道府県には足りない。
 さらに、複数の建造物を紹介している道府県があり、まったく取り上げられていない県もある。
 続編の刊行を期待してしまうが、自身で旅する際の参考素材としての利用したい。
 じっくり読むも良しであるが、ただ写真を眺めるだけでも十分楽しめる1冊である。
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:450 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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