吉田あやさん
レビュアー:
▼
「リジー・ボーデンは斧で母を40回、父を41回打った」マザーグースでひと際仄暗い色を放つ歌が葬送曲のように包み込むタラニス屋敷の怪異譚。死の祝福から逃げ出し竈で焼かれたメリッサが死者の間からやって来る
「リジー・ボーデンは斧で母を40回、父を41回打った」マザーグースの中でもひと際仄暗い色を放つ、リジー・ボーデンの歌が葬送曲のように物語を包み込むタラニス屋敷の怪異譚。
「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズに登場した法医昆虫学者ジョージの幼少期を描く今作は、これまでの物語を知らなくても独立した話として楽しめるが、未読の読者にはこの後にジョージがどんな大人になったのか藤堂比奈子シリーズへと読み進める最高の導きとなり、読了のファンたちは細かなところを読み返したくなる蠱惑的な物語となっている。
「眼前にある恐怖さえ想像力が生み出す恐怖ほど恐ろしくはない」
シェイクスピアの一節で幕を開ける死の神の森は、リングの貞子のように姿を見せずともすぐ傍にいる恐怖にじっとりと絡めとられ、深い森の苔に纏わる粘度の強い湿気が肺を満たしてくる。「今から私がする話を、誰にも語って聞かせてはならない」と家政婦から語られる昔起きた禁忌(ゲッシュ)は呪いを伴う約束となり、蔦の茎が剥き出しの血管のように張り付いた屋敷ごとタラニス屋敷の住人を死の神は離そうとしない。
アメリカで実際に起きた、母と父を惨殺したと思われながらも裁判で無罪となったリジー・ボーデン事件を歌ったマザーグースやヒッチコックなど、細かく面白い仕掛けやヒントが散りばめられている所も読んでいてぞくぞくとさせられる。
「ジョージはバタつきパンを少し食べ」など、ルイス・キャロルの古い時代を想起させるような言葉選びなども細やかに全編を通して楽しませてくれた。
死の祝福から逃げ出して、竈で焼かれたメリッサが死者の間からやって来る。見ざる聞かざる言わざる、これは禁忌の物語。
「猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子」シリーズに登場した法医昆虫学者ジョージの幼少期を描く今作は、これまでの物語を知らなくても独立した話として楽しめるが、未読の読者にはこの後にジョージがどんな大人になったのか藤堂比奈子シリーズへと読み進める最高の導きとなり、読了のファンたちは細かなところを読み返したくなる蠱惑的な物語となっている。
「眼前にある恐怖さえ想像力が生み出す恐怖ほど恐ろしくはない」
シェイクスピアの一節で幕を開ける死の神の森は、リングの貞子のように姿を見せずともすぐ傍にいる恐怖にじっとりと絡めとられ、深い森の苔に纏わる粘度の強い湿気が肺を満たしてくる。「今から私がする話を、誰にも語って聞かせてはならない」と家政婦から語られる昔起きた禁忌(ゲッシュ)は呪いを伴う約束となり、蔦の茎が剥き出しの血管のように張り付いた屋敷ごとタラニス屋敷の住人を死の神は離そうとしない。
アメリカで実際に起きた、母と父を惨殺したと思われながらも裁判で無罪となったリジー・ボーデン事件を歌ったマザーグースやヒッチコックなど、細かく面白い仕掛けやヒントが散りばめられている所も読んでいてぞくぞくとさせられる。
「ジョージはバタつきパンを少し食べ」など、ルイス・キャロルの古い時代を想起させるような言葉選びなども細やかに全編を通して楽しませてくれた。
死の祝福から逃げ出して、竈で焼かれたメリッサが死者の間からやって来る。見ざる聞かざる言わざる、これは禁忌の物語。
お気に入り度:









掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
ジャンル問わず、読みたい本を
雑多に読んでいます。
共通の、また新しい世界を
一緒に楽しめたら幸せです。
よろしくお願いします。
この書評へのコメント
コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:KADOKAWA
- ページ数:0
- ISBN:9784041130162
- 発売日:2022年09月16日
- 価格:1980円
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。