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星落秋風五丈原
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キッズインフルエンサーの功罪について
若い頃、テレビのリアリティ・ショーに夢中になったメラニー。彼女は今や、サミーとキミ―という兄妹の母となり、子供たちをYouTubeで公開して、何百万人もの視聴者を獲得する。サミーとキミ―はキッズインフルエンサーとして有名になり、沢山のスポンサーがついていた。しかしある日、かくれんぼの最中に7歳になった娘が失踪。誘拐が疑われ、脅迫状も届く。金目当て? 成功者への嫉妬? 彼女と同世代の警察官クララが事件を精査し始める。クララもまたかつては、親に隠れてリアリティ番組を見ていた少女だった。

 インターネットの普及は、フツーの人を有名人にした。無人島に一人で生活したり、独身男性に何人もの女性がアプローチしたり、私たちは時としてリアリティ番組に夢中になる。アメリカではリアリティショーで有名となったドナルド・トランプが大統領にまでなった。「意外な人の素顔/日常を見たい」という好奇心故だが、実はその素顔や日常は、編集の手が入る以上、“作られた”ものだ。また、大人は見られていることも意識しているし、日常を切り売りすることも納得ずくだが、幼い子供たちに、いずれの認識もない。それなのに彼等の名前は不特定多数に知られ、日常は世界中に配信される。嫌だという権利を一切与えられないままに。邦題はもちろん皮肉であり、子供は王様ではない。もし王様だというなら、自分が裸にされていることを知らない“裸の王様”だ。

 メインが誘拐事件なのでミステリかと思いきや、芯になる部分はその後になる。キッズインフルエンサーが成人して自身の体験を振り返った時の心身の傷、「自分は間違っていない」という親との対立など、家族関係の崩壊など深刻な局面に向かっていく。法の整備が明らかに追いついていない中、キッズたちの安心・安全をいかに確保するかが課題である。

デルフィーヌ・ド・ヴィガン著書
リュシル 闇のかなたに
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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