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たけぞう
レビュアー:
小川洋子ワールドの短篇集。
安定の世界観です。
著者の作品に親しんでいれば、いつもの雰囲気にすっと溶け込み、
静かに時間を過ごせるでしょう。
それくらいいつも通りなのに、なぜマンネリ感がないのでしょうね。
謎です。

全部で八話あります。
世の中の片隅には、誰の目にも留まらない独自の世界がひっそりと
息づいていることがあるのです。

第一話、指紋のついた羽。
金属加工工場の社員に父子家庭の人がいて、その家の女の子は
いつも工場の片隅で一人遊びをしています。
隣には縫製工場があって、縫い子さんがいます。物語の主人公です。

ある時、金属加工工場の社長の奥さんが、幼稚園に入園する準備で
困っている人がいると言ってきました。その女の子のことでした。
縫い子さんは新入りで、奥さんも頼みやすかったのでしょう。
縫い子さんは準備の物を作ってあげました。
そして縫い子さんと女の子の交流が始まります。

お礼のつもりなのでしょう。
ある日、奥さんがバレエの切符を二枚持ってきたのです。
お得意さんからもらったんだけど、旅行で行けないからどうかなと。
縫い子さんは、女の子と二人でバレエを見にいくことにしました。
演目は、ラ・シルフィード。
妖精と青年の恋の物語でした。

ここまでは、ちょっと不憫で、でもちょっと良さげなお話という
雰囲気ですよね。しかしここからが小川洋子ワールドの真骨頂です。
二人の間で共有されたバレエの世界で、縫い子さんと女の子は
新たなこころの関係を構築していくのです。

孤独な人が、この世との間のたった一本の蜘蛛の糸のように、
他者とのつながりを大事にする、そんなお話です。
他にも、閉じた世界をもつ人物が登場する作品が多いです。

境界があると言えばいいのでしょうか。
静かな思考の海にひたれる作品が多いですよ。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1465 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
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