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DBさん
DB
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軍装から見たポエニ戦争の本
紀元前265年、シチリアの支配権をめぐってローマとカルタゴが争い第一次ポエニ戦争がはじまる。
ここから紀元前146年のカルタゴ陥落までを両国の軍備や戦術を中心に追っていくのが本書です。

カルタゴは紀元前814年ごろにチュニジアにパレスティナから渡ってきたフェニキア人によって築かれ、植民地支配と交易網によりアフリカ西海岸からスペイン沿岸、シチリアと地中海を支配していた。
政治的には元老院と人民議会が置かれていたが、実権は貴族たちが握っていて貴族の資格は富によるものだった。
軍隊はリビア人、リビア・フェニキア人、ヌミディア人、ムーア人、イベリア人、ケルト・イベリア人、リグリア人、ケルト人にギリシャ人傭兵、そしてカルタゴ市民兵という混成部隊が基本で、それぞれに武器や戦い方の違う部隊を統率し運用するのがカルタゴ人士官である指揮官に求められる能力だった。
第一次ポエニ戦争で二度ローマに破れたカルタゴはギリシャ式のファランクス隊形で戦っていたが、スパルタのクサンティッポスが招聘されて戦象部隊をうまく配置し自ら鍛え直した兵士を投入したテュニスの戦いではローマ軍に圧勝する。

ハンニバルは重装歩兵隊をローマ式に変えてメール・アーマーと投擲兵器として投げ槍ピルムを導入する。
これにリビア人とムーア人からなる軽装歩兵、裸馬を乗りこなし投げ槍と軽量の槍で武装し小さい盾を持ったヌミディア騎兵、兜と大型の盾に長い剣で武装したケルト人、製鉄の技術に優れ両刃の剣とソリフェレウムという小型の投げ槍を持ちスリング投擲部隊を抱えたスペイン人が加わる。
武器が違えば訓練の仕方も戦術のたて方も違うわけで、それぞれの部隊の特徴をうまく生かした用兵が求められるのもよくわかる。

対するローマ軍は一つの軍団が4200人程度の市民兵と300人の騎兵からなり、一人のコンスルが四つの軍団を、一人のプラエトルが二つの軍団を受け持つ形で最大コンスル2名とプラエトル4名からなる80000の兵力を軍隊として戦線へ送り込むことができた。
鎖の甲冑と兜をつけて均一の装備で戦う市民兵に、戦いによってはラテン人の同盟国軍が加わっていた。
それぞれの武装が挿絵になっているのでわかりやすい。
表紙にもなっているローマ人の武装の中で旗手だけが子供のように小さいのがなぜかは謎です。
そして出土した武器が写真でのせられているので剣や槍の形の違いもよくわかる。
ポエニ戦争を武器と戦術から紐解いた本でした。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2026 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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