ぽんきちさん
レビュアー:
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「普通の暮らし」にたどり着けない
スリランカ人女性収容者の死亡などで問題になっている入管(入国管理局)収容施設。いったい何が起きているのか。
研究者や弁護士、支援者、小説家といったさまざまな立場の人々が入管施設の現状や問題点について述べる。
入管施設では、以前から長期収容や不適切な環境なども問題視されている。
一方で、収容施設からの仮放免が認められても、移動の制限があり、仮放免許可期間延長のために出頭義務があり、また、就労の禁止が課せられる。
外国人の不法入国を防ぐためとはいっても、当事者には相当厳しい処置である。
政治的な理由などで自国にいられずに逃れてきた人であっても、日本の難民認定は著しく困難である。難民にもなれない、入管施設に入れられれば長期に出られないかもしれない、出たところで働けもしない、となると、「普通の暮らし」は手には入らない。誰かの支援に頼るしかない。息をひそめるように暮らしていても、強制送還される恐れは常にある。
入国管理法自体、かなり古いものである。敗戦後、多数の引揚げ(出国・入国双方を含む)があり、これに伴い、非正規な人や物資の移動もあった。不法入国や密貿易である。これを取り締まるために、入管法なり外国人登録令なりが出てきた背景がある。ある意味、最初から性悪説というか、「悪」を排除する発想から出てきていることになる。
近年はなくなってきているようだが、以前は子供であっても入管施設に収容される例もあったようだ。過剰な暴力が問題になったこともある。
そうでなくてもいつまで収容されるのか、この先どうなるのか、将来が見えない中では、心を壊す人が出るのも無理のないことだろう。
また、家族の中で誰かだけが強制送還され、再会までに時間を要した例や、結果的に他国に移住しなければならなくなり、人間関係や言語習得などを一からやり直さなければならない例もある。
コロナ禍で長期収容者が減った側面もあるが、そうはいってもまだ長期収容されている人もいる。
支援者の中には四半世紀以上活動している人もおり、一朝一夕で事態は変わらないのだろう。
時代の流れの中で、状況は変わってきているのに、法律や制度が追いついていない部分も多いように見える。
本書は入管を非難する側の視点のみであり、入管側の言い分も聞いてみたいような気はするが、それはまた別の話ということになるのだろう。
本1冊読んだだけで何か語るには難しい問題だが、難民認定制度と入管施設自体のあり方の両面から、改善がなされていくべきであるように思う。
研究者や弁護士、支援者、小説家といったさまざまな立場の人々が入管施設の現状や問題点について述べる。
入管施設では、以前から長期収容や不適切な環境なども問題視されている。
一方で、収容施設からの仮放免が認められても、移動の制限があり、仮放免許可期間延長のために出頭義務があり、また、就労の禁止が課せられる。
外国人の不法入国を防ぐためとはいっても、当事者には相当厳しい処置である。
政治的な理由などで自国にいられずに逃れてきた人であっても、日本の難民認定は著しく困難である。難民にもなれない、入管施設に入れられれば長期に出られないかもしれない、出たところで働けもしない、となると、「普通の暮らし」は手には入らない。誰かの支援に頼るしかない。息をひそめるように暮らしていても、強制送還される恐れは常にある。
入国管理法自体、かなり古いものである。敗戦後、多数の引揚げ(出国・入国双方を含む)があり、これに伴い、非正規な人や物資の移動もあった。不法入国や密貿易である。これを取り締まるために、入管法なり外国人登録令なりが出てきた背景がある。ある意味、最初から性悪説というか、「悪」を排除する発想から出てきていることになる。
近年はなくなってきているようだが、以前は子供であっても入管施設に収容される例もあったようだ。過剰な暴力が問題になったこともある。
そうでなくてもいつまで収容されるのか、この先どうなるのか、将来が見えない中では、心を壊す人が出るのも無理のないことだろう。
また、家族の中で誰かだけが強制送還され、再会までに時間を要した例や、結果的に他国に移住しなければならなくなり、人間関係や言語習得などを一からやり直さなければならない例もある。
コロナ禍で長期収容者が減った側面もあるが、そうはいってもまだ長期収容されている人もいる。
支援者の中には四半世紀以上活動している人もおり、一朝一夕で事態は変わらないのだろう。
時代の流れの中で、状況は変わってきているのに、法律や制度が追いついていない部分も多いように見える。
本書は入管を非難する側の視点のみであり、入管側の言い分も聞いてみたいような気はするが、それはまた別の話ということになるのだろう。
本1冊読んだだけで何か語るには難しい問題だが、難民認定制度と入管施設自体のあり方の両面から、改善がなされていくべきであるように思う。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。現在、中雛、多分♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
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- 出版社:明石書店
- ページ数:0
- ISBN:9784750354484
- 発売日:2022年09月04日
- 価格:2640円
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『入管問題とは何か――終わらない〈密室の人権侵害〉』のカテゴリ
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