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星落秋風五丈原
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Everybody Loves Somebody(誰かが誰かを愛してる)by Dean Martin
 ビルの13Fにオフィスがある玩具メーカーに勤めているイェジンは27歳。大好きな牛を売った金で父が買ってくれたプリズムをなくしてしまったことが心残り。イェジンとよくコーヒーショップで会うのが、映画の仕事をしている35歳のドゥオン。イェジンは彼の事を「いい人」だと思っている。ベーカリーを営むジェインは34歳のバツイチだが、元パートナーで獣医のヒョンジョとは今でも会えばセックスする仲。ジェインの店でアルバイトしているホゲは25歳で、ジェインに憧れは抱いているが、自分ではとても相手にならないだろうと思っている。そんなホゲが不眠症のコミュニティでイェジンと出会う。実はジェインとドゥオンは昔同じバンドにいた事があるが、他の二人はその事を知らない。

 限られた世界の人間が実は皆知り合いだったというシチュエーションは、それこそ韓国ドラマでよくある。出会わなければそのままだが、ここは王道通り出会ってしまうので、1組のカップル誕生が2人の男女に傷を残す。常に問題意識と闘ってきたようなソン・ウォンビョン作品としては珍しいタイプの小説。4人のメインキャラは「好奇心くらいは持つかもしれないけれど、仲良くなるのは無理」な線を狙ったとか。確かに、恋愛も一つの成長過程ではある。そう捉えてしまうと「冷たい」とか言われそうだが。イェジンのプリズムは恋愛や人間の象徴で、見方によってそれぞれ違うんだよ、というわかりやすい例え。彼女の伝えたい事は、ラストのこの文だと思われる。

美しくても傷ついても、つらくても後悔しても、愛は止められない。突然あがって、やがて消えるということ。そしてまた別の顔で始まるということ。その果てしないサイクルを生きている限りずっと繰り返すということ。そう願っていようがいまいが、愛は永遠に続く。熱い都会の街角で、真冬でも夏のような心の中で、太陽が解けてなくなるまで、宇宙が炎になって消滅するその日まで。


2023年本屋大賞翻訳小説部門第2位。

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2321 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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