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DBさん
DB
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餅花飾りと蚕の神様の話
川越の古民家である月光荘をイベントスペースとして活用しようというプランが動き出す話です。
卒論制作に追い込みをかける修士二年の守人ですが、論文に取り組む守人を月光荘も見守っていたようです。
卒論を一度指導教官に見てもらうために提出して一息ついていると、「ベンキョウハ?オワッタノ?」と月光荘が声をかけてきた。
月光荘に修士論文とか大学生活がどんなものか理解できるのかは謎だが、半纏を着込んで炬燵にもぐりこむ守人とのんびり会話できる時間ができたのを喜んでいるようだ。

そしてお正月。
お正月には家が人の姿をして集まると月光荘が去年話していたが、今年もどこかへ出かけたらしく月光荘の声はしない。
守人は川越に家族と住んでいる大学の後輩べんてんちゃんに誘われて、元旦におせちを食べに呼ばれることに。
家族団らんの中に溶け込んでいる様子がほほえましい。

お正月らしく餅花飾りの話が出てきます。
枝にピンクと白の飾りを刺したものですが、餅花飾りという名前もお団子で作ってあるものだということも知らなかった。
豊作を願って飾られるものだったらしい。
同じように繭玉と呼んで餅を蚕の繭の形にしたものを枝に刺して飾って蚕の健康を祈願したものもあるそうで、ここから養蚕の話につながっていきます。

小学校の頃にクラスで蚕を飼っていたことがあって、桑の葉を取ってきたり夏休みに家に持って帰って世話したことがある。
イモムシ系が大の苦手だった母が「絶対に箱から出すな」と何度も言っていたのが今でも記憶に残っているが、同じくらい虫全般が苦手な私がなぜ蚕の幼虫を触れたのかは謎だ。
子供の方が閾値が低いのかもしれない。
養蚕の話からタイトルとなっている金色姫が登場します。
つくば市の蚕影神社を中心にした民俗信仰のようなもので、インドの王様の娘である金色姫が継母に疎まれて何度も殺されそうになった挙句に桑の木で作ったうつぼ舟で海に流され、つくば市のあたりまで流れ着いて助けられるが病で亡くなる。
その金色姫の亡骸から蚕が生まれたという。
救いようがない話な気もしたが、養蚕農家が蚕を大切にしていたのはよく伝わってきた。

守人の母方の実家は工務店だったが、母方の曽祖父である風間守彰という人が大工だったことがふとした偶然から判明する話は以前出てきていた。
今回はそこから、母方の親戚との再会を果たします。
祖母との思い出を追憶し、家族や親戚の温かさを感じさせる話だった。
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DB さん本が好き!1級(書評数:2035 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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