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DBさん
DB
レビュアー:
権力に挑み続ける男の話
今回も短編集ですが、後半の二つが連続した話となっているので二つの短編とひとつの中編といった雰囲気です。
「心を掬う」という話では郵便局が舞台となっています。
行きつけの飲み屋の主人が、常連客で手紙が届かないと言っていた人がいたという雑談から事件を拾い出していく。
たまに配達するのが面倒になってどこかに捨てたとかいう事件がニュースになるが、基本出せば届く日本の郵便は優秀だと思う。
だが処理するのも人間である以上、ミスならまだしも金目当てで郵便を掏り取るような人間が内部にいたら厄介だ。
郵便局の中の警察の役割をする郵政監察官とタッグを組んで犯罪を暴こうと動いていくが、彼らが掬ったのは心だけではなかった。
佐方の祖父母の思い出にも触れられていていい話だった。

続く話では佐方の祖父母が登場します。
佐方の父親の十三回忌に集まった人たちがようやく真実を知り故人を悼む。
広島の県北にあるという佐方の実家ですが、わたしの祖父母が住んでいた町も近く言葉も似ていて懐かしかった。

後半の「死命」は、電車で女子高生に痴漢をした男の裁判を巡る話が語られる。
男の妻の両親が教育界の重鎮と資産家の四女ということで、息のかかった政治家を通して圧力がかけられてしまう。
佐方の所属する地方検察庁のトップは政治的な理由で不起訴にするように命令してきた。
これに反発した佐方は、直属の上司の助けもあって死命をかけての裁判に挑みます。

被害者の女子高生が素行不良で捕まったこともある母子家庭の娘だったこともあり、加害者の男は金目当てに強請られたという自説を押し通してきた。
痴漢でやったやらないでもめた時ってだいたいはクロだという話を聞いたことがあるけど、加害者の男は自説を裏付けてくれる目撃証人も出してきた。
不利な状況の中で佐方はどのような闘い方をするのだろうか。

結審が楽しみな話のはずだったのだが、何年も前に二時間ドラマで終わりの三十分くらいだけを見て結末を知っていたのが非常に残念でした。
見ようと思って見たわけでもなく誰が主人公だったのかも忘れているのにオチだけはしっかり記憶していた。
ドラマでは映像まで残っている設定で、被告の義母のキレっぷりが印象に残っていたがやはりミステリーでネタバレしていると楽しみがなくなるというのは本当だったと身をもって知る話でした。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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