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DBさん
DB
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命を美味しくいただく話
カドブン2022参加書評です。
ミカンとヒヨドリというタイトルには庭木にミカンを刺しておいて野鳥を呼び寄せるようなイメージしかなく、でも表紙がレストランみたいだしと思いながら読んでみました。
読んでみればジビエが得意なフレンチシェフの話で、ヒヨドリも立派な食材だった。
鶏肉以外はウズラか鴨くらいしか思い浮かばず、ヒヨドリが食材というイメージがなかったのですが美味しいのかな。

主人公の潮田は京都の洛北にあるフレンチレストランのシェフです。
フランスで修行をしていた時は優秀だったし、腕も悪くないはずなのに何件かのレストランを潰して今の店のオーナーに拾われる。
オーナーがジビエが好きなこともあってメニューにジビエを入れたいが、納得できるジビエがなかなか手に入らず自分で猟銃を担いで山歩き、のはずが山道で迷って遭難しかけます。
そこで助けてくれた無愛想なハンター大高と知り合い、料理やワインを土産に差し入れて大高がとった獲物を分けてもらう仲になる。

どんな味なのか想像がつかないけど美味しそうなメニューと、雪降る山での狩猟の風景、環境保護を名乗る犯罪者や害獣駆除の現実などが組合わさってフルコースに仕立て上げられたストーリーだった。

前にぺリゴールを舞台にした推理小説を読んだときに、トリュフ入りのオムレツと並んで主人公が最高の味だというのがベカスのローストで、どんなものなんだろうと思ったことがあった。
まさか日本でもヤマシギとして売ってるとは思いませんでしたが、食べてみる機会はなかなかなさそう。
「うちのオーナー、小鳥が好きなんで」と言われている潮田の雇い主は、ジビエが好きでレストランを出すことにしたという。
鹿肉だったらどこかのフレンチでローストを食べたけど美味しかったし、猪は温泉で猪鍋を食べてこれも美味しかったのを思い出すが、流通が難しいのがよくわかった。
猟に出てもとれないとか、禁猟区があり、さらに食肉として処理するには施設としての届出が必要だ。
でも手間がかかってでも美味しいものを食べたいのが人間なのだろう。

以前新宿に「ヴォロンティエ」というイタリアンのお店があって何度か行ったのですが、ある日スタッフが「猪が手に入ったんですよ~」と指す方向を見れば縦割りにした猪がゴロッと転がっていた。
せいぜい塊肉かと思っていたので衝撃でしたが、本作を読んで改めて命を頂くことを知った気がする。
潮田の飼い犬のピリカと大高の飼い犬マタゾーが話に花を添えていて楽しめました。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2026 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. 三太郎2022-07-13 05:44

    >ヒヨドリも立派な食材

    調べたら、ヒヨドリは狩猟が許される28種類の野鳥に入っていましたね。椋鳥や雀も狩猟可能だとか。僕はヒヨドリが好きなので獲って欲しくはないけれど・・・

  2. DB2022-07-13 09:34

    頬が赤くて可愛いですよね。田舎の方の果樹園とかだと、果物大好きなヒヨドリは害鳥として駆除対象になるみたいです。

  3. No Image

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