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マーブル
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これはマズい。読みたい本がどんどん増えてくる。読んだ本は読み返したくなり、読んだことのない本は手に入れて読みたくなる。
 当たり前すぎてわざわざ言うまでもないような感想だが、著者が書く一冊一冊への感想を読むたび、立ち止まってその作品に手を伸ばしたくなる。

 「友達が映画や漫画の話をしていて、あまりにもそのあらすじがおもしろいので実際に観たり読んだりしてみたら、友達の言っていた内容の方がおもしろくて期待はずれだった、ということがときどきあるのだけど(後略)」

 『蜘蛛女のキス』の感想で書かれたのと同じことが起きているのかもしれない。読んでいてどの作品も面白そうに思えて来て仕方がない。驚くことに、中には既に読んだ作品もまったく別もののように書かれていて、一瞬たじろいでしまう。読み方はひとそれぞれ、着目点もそれを表現する仕方も違うとは思うのだが。

 あまり続けて読むものではない。願わくばこの本は座右に置き、自らもその作品を読みつつ感想の違いなどを確かめながら次へ進みたい。


 手に取って、まずは読み終えたばかりの『カラマーゾフの兄弟』の章を読んでみた。テーマパークのアトラクションに例えるなど軽妙な語り口でドストエフスキーを評する大胆なスタイル。しかし、登場人物の特徴をそれぞれしっかりと捉え、しかも好き嫌いのレベルに引き寄せている。手法や構造に目が行くのは作家ならではだろうか。

 しかし、同時にまた読者の立場から楽しんでいる様子も見られ、それが楽しい。作家であり、読者である立場からの見方は、私のような素人レビュアーにはないものであり、そのあたりも面白さの要因かもしれない。作品の紹介をしているようでいて、自分の内面を覗き込む。あらすじを挙げるだけでは物足りぬ。自らと読んだ作品が混ぜ合わされた読書という体験による生成物が書けることこそ、書評の理想かもしれない。

 土曜ワイド劇場としての『ルパン』。こんなふうに例えられたら読み手もよくわかる。読みたくなる人も増えるのではないか。各章のタイトルの付け方も楽しい。「頑張れわらの女」「レモンの上司が「パイン」とは」など洒落が効いている。

 あとがきでウクライナへの侵略行為に触れ、小説には直接暴力を止める力はないけれど、それらについて書き留められている文章を読んで、その所感を自分の考えや言葉にすることが、暴力を否定し、少しずつでも排除する力につながっていくと述べている。読書の力。そしてこれなら作家でない、我々素人でもできる行為だろう。

【読了日2025年1月30日】
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マーブル
マーブル さん本が好き!1級(書評数:1071 件)

 文学作品、ミステリ、SF、時代小説とあまりジャンルにこだわらずに読んでいますが、最近のものより古い作品を選びがちです。
 
 2019年以降、小説の比率が下がって、半分ぐらいは学術的な本を読むようになりました。哲学、心理学、文化人類学、民俗学、生物学、科学、数学、歴史等々こちらもジャンルを絞りきれません。おまけに読む速度も落ちる一方です。

 2022年献本以外、評価の星をつけるのをやめることにしました。自身いくつをつけるか迷うことも多く、また評価基準は人それぞれ、良さは書評の内容でご判断いただければと思います。

プロフィール画像は自作の切り絵です。不定期に替えていきます。飽きっぽくてすみません。

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