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星落秋風五丈原
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爽やかなひこうき雲とは裏腹のイメージの作品集
「そっちの夏はどう?」
どうやらちょっと太めらしいミヨンの父親は子供にあまり関心がなく、母親は逆に甘やかし放題。そんな中で大学の飲み会でいなくなった自分を探しに来てくれたジュン先輩に、ほのかな憧れを抱いていた。二年ぶりにテレビ局に勤めるジュン先輩からバイトを頼まれるが、その日は幼馴染の葬式の日で。
自分が生きているから、あるいは生きている間、たくさん傷就いた人がいるのだろうという気持ちになった。自分の知らないところで、知り合いや、ひょっとしたら面識のない人も、私のせいでたくさん傷ついたのだろうと。

自分が傷ついたことに憤ったり泣いたりしてればいいのに、自分を責める方に向かうか主人公。辛いなぁ。

「虫」
絶壁に建てられているローズアパートに住んで後妊娠がわかった“私”。ところが部屋の中にひっきりなしに虫が現れるようになり、ノイローゼ気味に。出張が多い夫も若干引き気味になる中、ある夜“私”がまたもや虫を見つけて。
本当の“私”のもやもやの原因は虫ではないと思いつつ、虫の気持ち悪さが更に“私”の不機嫌を増幅していく様が刻々と描かれる。いやとにかく頑張って産んでくれよ。

「水中のゴリアテ」
高城籠城で父を亡くし母の様子が段々おかしくなる。ゴリアテとは後に王となるイスラエル人ダビデに倒される大男のこと。

「三十歳」
全編先輩に宛てた書簡体。遥か遠くに美しいソウルを見ながら、私が住むのは窓が一つしかない部屋。親の反対を押し切って進学したが碌な就職先もなく、詐欺まがいのマルチ商法が仕事に。なけなしの良心がごりごり削られていく痛みと、そうしなければ自分は生きていけないと開き直れないジレンマ。

「ホテル ネアックター」
友達同士で海外旅行の計画を立てるも、段々と相手の事が嫌になってくる。あるあるパターン。

他「かの地に夜、ここに歌」「一日の軸」「キューティクル」収録。

 財閥が富を独占し更に豪奢な生活を送る裏で、貧困にあえぐ二十代~三十代の男女が主人公。日本でも他人事ではない格差社会の歪みが個人に与える影響を描く。空を飛ぶ飛行機雲ってどう考えても明るい爽やかでオープンなイメージなのに揃いも揃ってどよよんとなる短編ばかりだった。

キム・エラン作品
外は夏
走れ、オヤジ殿
唾がたまる (キム・エランの本 2)
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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2327 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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