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rodolfo1さん
rodolfo1
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双子の妹を亡くした話、海好きな少年のひと夏の恋の話、幽霊の母親と暮らす話、バツイチの男がシングルマザーの母娘と過ごす話、両親が離婚して父親に引き取られた少年が行き場所を失くす話5編から成る短編集。
窪美澄作「夜に星を放つ」を読みました。

【真夜中のアボカド】私は、食べたアボカドの種から芽が出るかもと思い、ネットで調べてコップでアボカドの種を育てました。コロナのせいで仕事はリモートになり、私は閉塞感を味わっていました。アボカド栽培はその憂さ晴らしでした。私は婚活アプリで麻生さんと知り合い、ぼつぼつとやりとりし、次第に互いの距離は近づきました。初めて海で泊まった夜、私は2年前に亡くなった一卵性双生児の妹弓ちゃんの話をし。。。

私は弓ちゃんの元彼、村瀬君と付き合いがありました。弓ちゃんの月命日に一緒にご飯を食べ、その度に村瀬君は弓ちゃんの事を思い出しているのだと思いました。ある日、私は電車で麻生さんが女房子連れでいる所に出くわし、思わず麻生さんに声を掛けました。私は酒を飲んで荒れ、麻生さんにLINEし続けましたが、既読はつきませんでした。私は村瀬君に愚痴を言いに行き、少し言い寄りましたが村瀬君にはねつけられました。。。

芽が出たアボカドを前に1人で暮らしていると、村瀬君がプランターや土をくれて、もう会うのは最後にしようと言って寄越し。。。

【銀紙色のアンタレス】夏に生まれて海が大好きだった16歳の真は、家族旅行に参加せず、1人で海沿いの町に住んでいるおばあちゃんの家に泊まりに行きました。すると幼なじみの朝日が、昔よくしていたように僕のおばあちゃんの家に泊まりに来る、と突然言って寄越して真は困惑しました。

海で泳いでいると、小さな赤ちゃんを抱っこしたきれいな女性が海に足を浸して悲し気な子守歌を歌っているのを見ました。思わずいくつですか?とその女性に尋ね、女性は1歳です、と子供の年を教えてくれました。後日昼寝をしているとその女性が家を訪れ、おばあちゃんと浮気とか離婚とかの話をしながら泣いているのを漏れ聞きました。

朝日が泊りに来ました。真にとって朝日はきょうだいのような存在でしたが、朝日は美しく成長しており、海辺で水着姿がみなの注目を集めました。照れくささのあまり、朝日に意地悪をしたくなった真は朝日を浮き輪ごと沖に連れて行きましたが、朝日の悲しそうな顔を見て、あの女性のようだと思い、浮き輪を押して砂浜に戻りました。浴衣を来た朝日は真と花火をしながら真が好きだと告白し、しかしあの女性の事を思い出した真は。。。

翌日あの女性が鰯を沢山おばあちゃんに持って来てくれましたが、おばあちゃんが熱中症で倒れて入院しました。たえさんという名前のあの女性は真を励まし。。。おばあちゃんが退院する日、たえさんは夫が迎えに来たから東京に帰ると言い、たえさんは真を連れて竜宮窟に行きました。そこで真は。。。

【真珠星スピカ】私は2ヵ月前に亡くなった母さんの幽霊と暮らしていました。幽霊は口がきけず、家からも出られませんでした。私は学校で虐められ、保健室登校を続けていました。虐められている大きな原因は、隣の家で昔から暮らしている顔なじみの先生船瀬尚が、何かと言えば私を構うのが皆の気に入らなかったのでした。生まれて初めて何とか食事の用意をする私の様子を幽霊はいつも見守っていました。ちなみに父親には幽霊は見えていませんでした。尚ちゃんは私が虐められている事に気づいていましたが、私は誰にも虐めの事を打ち明けませんでした。。。

ある日、虐めの主犯、瀧澤が、私に何かが憑いている、としつこく言って来ました。そしてある日、私に憑いている霊をこっくりさんで追い払う、と宣言して仲間と一緒に私を屋上に拉致し、強引にこっくりさんを始めました。こっくりさんは自分はここにいる、と宣言し、更に恐ろしい事を瀧澤に言い、瀧澤は失禁しました。。。しばらくたって父娘でコロッケを作っていると、タネの中から見つかったものはかつて。。。

【湿りの海】僕はもういない妻の希里子と娘の希穂の事を夢で想っていました。希里子は僕に愛想をつかし、アメリカ人と一緒になって、希穂を連れてアリゾナに移住しました。今は希穂とは週一回ネットで面会するだけでした。そんな中、隣にシングルマザーの船場さんが越して来ました。船場さんの部屋からは良く子供の泣き声が聞こえました。

僕は日曜日に公園で1人ビールを飲みながら読書していました。そこで娘の沙帆とボール遊びをする船場さんに出会いました。沙帆は僕とボール遊びをしながら海に行きたいと言い、遊び疲れて眠ってしまいました。大荷物を抱えて立ち往生している船場さんを見かねて、僕は沙帆を抱っこしてマンションに帰りました。目覚めた沙帆は僕の事をパパと呼び、思わず僕は車を出すから海に行こうと船場さんに言いました。

船場さんは僕の好意に甘え、3人で海に行きました。しかし途中から雨が降り出し、海で泳ぐ事は出来ませんでした。怒った沙帆は泣きながら昼食のサンドイッチを払い落とし、船場さんは窘めましたが、僕は傘をさして沙帆を海に連れて行き、足を海に浸してあげました。沙帆は喜び、僕は思わず船場さんの手を握りました。船場さんは手をそのままにしていました。しかし僕は沙帆の太ももにある痣に気づき。。。

ある日、僕が家に戻ると、船場さんの部屋の前に人だかりがしていました。沙帆が号泣して、ママ、やめて、ぶたないで、と叫んでいたのでした。何度も船場さんに電話しましたが、船場さんは出ませんでした。漸く朝の4時半に船場さんが部屋に訪れ、私は虐待なんかしていないと言いました。僕は船場さんを抱きしめてキスしましたが、船場さん達は。。。

【星の随に】僕は、僕が小学校4年生の時に生まれた弟の海君と、後妻の渚さんと父親の4人家族でした。父親は駅前でカフェを経営していましたが、コロナのせいで経営は左前でした。離婚した母親とは3ヵ月に1度しか会えませんでした。父母がどうして離婚したのかも、何故自分が父親に引き取られたのかも僕には知らされていませんでした。僕は夕方から母親の住む町にある学習塾に通い、渚さんは弁当を作ってくれていました。しかしある日、僕が家に帰るとドアが少ししか開かなくなっていました。僕は渚さんを呼びましたが、渚さんは返事をしませんでした。仕方なく僕は1階のエントランスのソファで本を読んで待っていました。

すると1人のおばあさんが何をしているのだと尋ね、事情を説明すると部屋まで一緒に来て、どんどんドアを叩き始め、やっと眠そうな渚さんが顔を出し、そんなに叩いたらせっかく寝付いた海君が起きると文句を言いました。海君がなかなか寝なくて苛ついていました。渚さんはまた寝てしまい、塾の弁当に困った僕は渚さんの財布から千円もらって塾に行きました。しかし戻ると父親が弁当も持たせずに塾に行かせるなんてどうかしていると怒り、渚さんは黙って金を抜いて行くとはおかしいと言い募りました。

僕は泣いて謝りましたが子供部屋に追いやられました。最近は父親と渚さんは口喧嘩ばかりで、僕はどうして僕のいる家はいつもこうなってしまうのだろうと思いました。。。以後も学校から戻るとドアは開いておらず、夕方5時にドアが開くまで僕はあのおばあさんの部屋で待つ事になりました。おばあさんはずっと東京空襲の夜空の絵を描いていました。友達に聞くと、恐ろしい大空襲の話をしてくれましたが、今だってコロナのせいでたくさんの人が死んで同じ状況なのだと言いました。

僕は父親にもっと母さんに会いたいと頼み。。。おばあさんはもう施設に入るから父親と母親に僕の話をしてやると言い。。。それから塾の夕食は父親の作った物になり、学校から帰るとドアは開くようになりました。渚さんは僕に謝り。。。渚さんと海君は実家に帰り。。。僕は父親に、自分は周りのみんなの事が大好きなのだと言いました。。。

どの短編も、他の窪先生作品がそうであるようにプロットは良く書けています。コロナ下で作品を発表される作家さんは、自分のコロナへの恐怖を作品に垂れ流す事が多いですが、そういう事が無かったのも評価できます。残念だったのは、これも他の窪作品同様、主人公のキャラクターが葛藤しないキャラであると言う事です。主人公は状況に流されるばかりで殆ど戦う事を放棄しています。こうしたキャラから私が得るものは何もないので、私にとって窪作品はいつも物足りないのだと思いました。
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rodolfo1
rodolfo1 さん本が好き!1級(書評数:866 件)

こんにちは。ブクレコ難民です。今後はこちらでよろしくお願いいたします。

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