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たけぞう
レビュアー:
フェミニズムとは差別を自覚するところから始まる。
湿度の高い作品でした。
最近、フェミニズムをうたう他の作品を読んでいたので、
同じテーマだと気がつきました。

著者は、デビュー作で地方の女子の現実を書いて人気が出た人です。
これまでにも地方目線の著作をいくつか書いています。
しかし、この作品を読んだことで、著者の世界観には
もう一つのテーマが隠されていたことに気がつきました。
フェミニズムです。
刺さりました。刺さりすぎて、読むのがちょっとつらいくらいでした。

連作短篇です。
第一話の主人公は大西千紗。十才です。
相手役は芳賀裕子、クラスメートです。
二人はクラスの子の誕生日会に招かれて一緒に行きました。
そう、女子特有の一緒という友達システムです。
交換日記も交わしています。

しかし、誕生会の主役の阿部美香が、千紗に声をかけてきたことで
二人の間に変化が起きます。
美香は強引なところがあり、引きずられて合わせていく千紗。
祐子との間になんだか微妙な空気が流れますが、
毎週木曜日のクラブ活動の時だけは、
美香の眼を逃れることができることに気がついたのです。

千紗はこっそり裕子との時間を共有するようになります。
表面的には声の大きい美香の機嫌を取りつつも、
二人で秘密の友情をはぐくむ、そんなストーリーです。

第二話の主人公は芳賀裕子、十四才です。
相手役は青柳めぐみ、クラスメートです。
こうして一話ずつ相手役が主人公になって、
視点と時間をずらしながら物語は紡がれていきます。

第一話の大西千紗は、表面的に相手に合わせる優柔不断な人。
芳賀裕子は、男子にそんな人いたっけと言われるような静かな人。
第二話の青柳めぐみは、いるだけで人目を惹く美人だけど、
女子のネットワークから弾かれて、仕方なくバカ男子とふざけている人。

女子の生きづらさや、あるあるをいっぱい詰め込んだ作品です。
そして後半。なぜ女子がこんなに気を遣ってばかりなのかという理由の一つに、
フェミニズムの視点が差し込まれます。
わたしは、その場面のセリフに衝撃を受けました。

私たちって、差別される側だったんだってこと。
誰よりも本人たちが、そのことを知らずにいることの危うさ。


フェミニズムは、もっとも分かりやすい差別に反する言葉だから
広まっています。著者はそのことに気がついています。
地方差別も同じです。
世の中には、自分の身を守ろうとして、いろいろな形の差別を
しかけてくる人がいることを、この作品は教えてくれました。
読むのがしんどい一冊でした。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1467 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
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よかったらのぞいてみて下さい。

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