ぽんきちさん
レビュアー:
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元パテント・トロールの女性弁理士が相方の弁護士と防衛専門の特許事務所を立ち上げる
特許を巡る係争といういささかとっつきにくい題材だが、主人公を始め、キャラの立った登場人物と、現実味のある「事件」をスピード感たっぷりに描く。痛快エンタメリーガルミステリといったところ。
主人公、大鳳未来(おおとり・みらい)は弁理士。弁理士とは知的財産法を専門とする法律の専門家。弁護士は民法や刑法など幅広い法律を扱うが、弁理士は特許や商標に関するもののみを扱う。
未来は元々、パテント・トロールといって、特許権を行使するやり口で稼いでいた。使われていない特許などを低価格で取得し、他社がこの特許に抵触しているとして、ライセンス料や和解金を要求することで利益を得るものだ。和解金はふつう訴訟費用よりも安価に設定される。侵害訴訟に発展すれば時間的・金銭的な負担が増大するため、言われるままに支払ってしまう企業も少なくない。違法ではないのだが、真っ当ともいいにくいグレーゾーンである。
その経験をある意味生かして、弁護士と組んで、防衛専門の特許事務所を立ち上げた。侵害事件で警告を受けた企業などの相談に乗ろうというのだ。それまでやってきたことの逆をやるのだから、手の内はある程度わかっている。昨日までの泥棒が今日は警官になるようなものだから、適任といえばそうだろう。
手を組んだ相棒の弁護士は姚愁林で、こちらも切れ者の女性。2人だけの特許法律事務所である。
本作でのクライアントはVTuber。映像技術の特許権侵害を警告され、活動休止を迫られている。VTuberというのはYouTuberのバーチャル版で、実在の人物ではない。アニメのキャラクターに似ているが、ストーリーから解放された形で存在する。
キャラクターの裏には、演じる人(いわゆる「中の人」)がいて、声優もいる。両者は同じ人物の場合も異なる人物の場合もある。いずれにしろ、通常は公開しない。キャラクターのイメージが大切だからだ。今回の場合は同一人物が声も動きも担当している。
演者の演技をレーザーでトラッキングして、CGキャラクターに反映させる。この技術に侵害があるとの訴えである。
さてどうするのか。
この事件には複数の企業が絡む。いずれも腹に一物あり、一筋縄ではいかない。
しかし、未来もしたたかで、最後にはあっと驚く一手を打ってくる。
リーガルミステリや企業小説を併せたような読み心地で、特許を題材にしたエンタメで1つジャンルができてもよさそうな感じはする。
ただ、特許周りの権利や法律の条項など、一般にはなじみの薄いあれこれを嚙み砕いてリーダビリティの高い作品に仕上げ、かつ時事的な話題も取り込むというのは、かなり労力のいることなのかもしれない。著者は現役企業内弁理士でもあるそうなので、専業作家としてバリバリ執筆するという感じではないのかも。
本作以外には同じ主人公でもう1作あるようなので、そちらもいずれ読んでみようかと思う。
主人公、大鳳未来(おおとり・みらい)は弁理士。弁理士とは知的財産法を専門とする法律の専門家。弁護士は民法や刑法など幅広い法律を扱うが、弁理士は特許や商標に関するもののみを扱う。
未来は元々、パテント・トロールといって、特許権を行使するやり口で稼いでいた。使われていない特許などを低価格で取得し、他社がこの特許に抵触しているとして、ライセンス料や和解金を要求することで利益を得るものだ。和解金はふつう訴訟費用よりも安価に設定される。侵害訴訟に発展すれば時間的・金銭的な負担が増大するため、言われるままに支払ってしまう企業も少なくない。違法ではないのだが、真っ当ともいいにくいグレーゾーンである。
その経験をある意味生かして、弁護士と組んで、防衛専門の特許事務所を立ち上げた。侵害事件で警告を受けた企業などの相談に乗ろうというのだ。それまでやってきたことの逆をやるのだから、手の内はある程度わかっている。昨日までの泥棒が今日は警官になるようなものだから、適任といえばそうだろう。
手を組んだ相棒の弁護士は姚愁林で、こちらも切れ者の女性。2人だけの特許法律事務所である。
本作でのクライアントはVTuber。映像技術の特許権侵害を警告され、活動休止を迫られている。VTuberというのはYouTuberのバーチャル版で、実在の人物ではない。アニメのキャラクターに似ているが、ストーリーから解放された形で存在する。
キャラクターの裏には、演じる人(いわゆる「中の人」)がいて、声優もいる。両者は同じ人物の場合も異なる人物の場合もある。いずれにしろ、通常は公開しない。キャラクターのイメージが大切だからだ。今回の場合は同一人物が声も動きも担当している。
演者の演技をレーザーでトラッキングして、CGキャラクターに反映させる。この技術に侵害があるとの訴えである。
さてどうするのか。
この事件には複数の企業が絡む。いずれも腹に一物あり、一筋縄ではいかない。
しかし、未来もしたたかで、最後にはあっと驚く一手を打ってくる。
リーガルミステリや企業小説を併せたような読み心地で、特許を題材にしたエンタメで1つジャンルができてもよさそうな感じはする。
ただ、特許周りの権利や法律の条項など、一般にはなじみの薄いあれこれを嚙み砕いてリーダビリティの高い作品に仕上げ、かつ時事的な話題も取り込むというのは、かなり労力のいることなのかもしれない。著者は現役企業内弁理士でもあるそうなので、専業作家としてバリバリ執筆するという感じではないのかも。
本作以外には同じ主人公でもう1作あるようなので、そちらもいずれ読んでみようかと思う。
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分子生物学・生化学周辺の実務翻訳をしています。
本の大海を漂流中。
日々是好日。どんな本との出会いも素敵だ。
あちらこちらとつまみ食いの読書ですが、点が線に、線が面になっていくといいなと思っています。
「実感」を求めて読書しているように思います。
赤柴♀(もも)は3代目。
この夏、有精卵からヒヨコ4羽を孵化させました。そろそろ大雛かな。♂x2、♀x2。ニワトリは割と人に懐くものらしいですが、今のところ、懐く気配はありませんw
この書評へのコメント
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- 出版社:宝島社
- ページ数:0
- ISBN:9784299024367
- 発売日:2022年01月07日
- 価格:1540円
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