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ソネアキラ
レビュアー:
アナザー・サイド・オブ・マハトマ・ガンジー
『魔王の愛』宮内勝典著を読む。

あの非暴力主義で知られ、もはや神話の人となったマハトマ・ガンジーの実像を求めてインドを訪ねる。

ガンジーに縁のある土地に足を運んでは、想起する。単身痩躯、質素な身なり。聖人のようだが、実際はやり手の政治家(革命家?)。元々は弁護士だから日本の与党や野党の弁護士出身の議員たちと同じ穴のムジナ(いっしょにすなと言われそう)。

「柔和な笑顔を浮かべていても、目の奥は笑っていない」

と書かれてある。

インドのイギリスからの独立。そして宗教対立によるパキスタンの独立。難局を打開するには、時には、違うな、大抵、妥協が伴う。口先だけの理想主義者から見たらとんでもないと批判するが、
現実的に半歩前進するには、小汚い手法も取らざるを得ないだろう。

「Xさん、あなたは隠者ではない。たしかに権力を手放し、政治の表舞台から身をひき、林の奥に隠っているが、黒幕かフィクサーのように、この辺境から政局を遠隔操作しながら、ある種の院政をつづけていたはずです」


悪人正機という言葉を思い出したが、うまくつなげることができない。聖人ではなくもう一面の魔王の部分を露呈する、聖ではなく俗の部分を捉える。それは紛れもなく人間ガンジーの新たな魅力を表現することだろう。

「非暴力を唱えながら、心の井戸では性にまつわる葛藤が渦巻いていた。これほど深い性的トラウマを抱えている人は、めったにいないかもしれない」


半島引揚者である作者。同じ境遇である五木寛之は自らを「デラシネ」と称していたが、故郷の喪失感がそうさせるのだろうか。作者はそれ以上の漂泊の人である。コスモポリタン、ノマド。

読みながら、行間からインドのむせ返る暑さ、人々の熱気、カレーのスパイシーな香り、異臭などが混じりあったものを感じた。行ったことはないけどね。


昔、働いていた広告会社で新人の女性が入社前にインドに行ってひどい下痢になって入社が数日ズレたことを、ふと、思い出した。





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ソネアキラ
ソネアキラ さん本が好き!1級(書評数:2186 件)

女子柔道選手ではありません。開店休業状態のフリーランスコピーライター。暴飲、暴食、暴読の非暴力主義者。東京ヤクルトスワローズファン。こちらでもささやかに囁いています。

twitter.com/sonenkofu

詩や小説らしきものはこちら。

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