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ぷるーと
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パスカレ少年シリーズの第3作は、「黄色い雨」を思い出させる、哀しくもノスタルジックな物語。
夏休みがあと3週間となったとき、マルチーヌ伯母さんは、生まれ故郷ピエルーレ村に帰り、生まれ育ったテオティーム屋敷にパスカレを連れて帰ると言い出した。そこには、いとこちが今も楽しく暮らしているから、というのだ。

マルチーヌ伯母さんはパスカレの両親が止めても聞く耳を持たなかったず、二人は出発した。だが、伯母さんとパスカレ少年の旅は、前途多難だった。

マルチーヌ伯母さんが乗るつもりだった鉄道の線は、20年も前に廃止されていた。そして、その誰も来ない駅で、パスカレは不思議なロバに出逢う。

ピエルーレ村周辺には、精霊の気配が今なお色濃く残っている。そこで数々の苦難に遇うパスカレとマルチーヌ伯母さんを助けるのは、謎めいたロバと、ガーシュ屋敷からパスカレ少年のあとを追って来た犬のバルボッシュ、そして、不思議な夢だった。

廃墟と化したピエルーレ村は、『黄色い雨』を彷彿させる。
「島の狐」で、マルチーヌ伯母さんは従姉妹のサテュルニヌおばあさんから手紙をもらっていて、突然の帰郷はそれに触発されたのだろう。とはいえ、マルチーヌ伯母さんは、故郷が以前とは全く変わってしまっていることを察知していたようだ。もしかすると、手紙には書かれていなかった何かを感じたのかもしれない。それで、一度戻らずにはいられなくなったのか。だってそこは、懐かしく、愛しい土地だったのだから。

だから、彼女はパスカレに言うのだ。私の目が見るものとおまえが見るものとは全く違うだろう。だから、おまえは一人で行って、おまえが見てきたものを話しておくれ、と。

サテュルニヌおばあさんの手紙では、イヤサントが拐われたのは一年前のことで、自分たちはまだピエルーレ村に住んでいると書いていた。ならば、ピエルーレ村の衰退は、イヤサントの失踪とともに始まっていたのだろうか。グロリア家の離村は、それに拍車をかけたのだろうか。

訳者によると、アンリ・ボスコの作品は、互いに密接に繋がりあっているが、細部まできっちりと確認して描かれているわけではなく、齟齬も多いようだ。『ズボンをはいたロバ』の舞台はペイルーレ村で、パスカレ少年に関わりがあるのはピエルーレ村、というように。訳者は、それぞれが淡く繋がりあった夢のようなものと考えるのがいいのでは、と言っている。それも、老人が見る、少年時代の夢、だ。ならば、少しぐらい齟齬があっても、時間的に不自然があっても、いいのかもしれない。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2923 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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