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三太郎さん
三太郎
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NHKスペシャル深海プロジェクトの現場からのレポート。
先日、2013年放送のNHKスペシャル「謎の海底サメ王国」が再放送されました。この本はその舞台裏を書いたドキュメンタリーだそうです。放送では綺麗にまとめられていますが、現場では上手くいかなかったことの方が多かったみたいですね。放送では大学の研究者を中心に据えた構成でしたが、本ではこの企画を立てて推進した番組制作者たちの発想が語られています。

番組の当初のターゲットは当時まだ生きた姿をカメラで捉えられていなかったマガマウスザメが泳いでいる様子を撮影することだったのですが、小エビなどのプランクトンを食料とするメガマウスザメは、他の肉食のサメたちのように餌でおびき寄せて撮影するという常套手段がとれないため、結局は偶然に頼るしかなかったようです。

偶然とは言っても戦略はあった訳で、それは全国の定置網の漁師さんたちに協力をお願いし、網にメガマウスがかかったら電話で連絡をもらうようにしていました。番組の最後に出てきたメガマウスはそうした地道な努力の結果、撮影できたということです。

漁師さんたちに聞くと、1970年代以降ではメガマウスザメは結構定置網にかかっているのだそうです。獲物ではないので通常は直ぐに逃がしてしまうため、実数は把握できないようなのですが。メガマウスは北太平洋を周遊していると考えられており、日本へは台湾沖を通って黒潮に沿ってやってくるらしい。

メガマウスザメが世界で始めて発見されたのは1976年のことでハワイのオアフ島沖でした。それまで知られなかったのが不思議です。一方、日本の漁師さんたちによれば、1970年代以前はやはりプランクトンを食べるウバザメがよく定置網にかかっていたとか。しかし近年はウバザメは見かけないとか。想像を逞しくすれば、1970年頃からウバザメが減って代わりにメガマウスザメが増えてきたのかもしれませんね。

番組のもう一つの柱は、深海にマッコウクジラの死骸を沈めて、そこに集まってくる肉食の深海ザメを潜水艇を使って撮影することでした。こちらのプロジェクトはトラブル続きで、ハイビジョンカメラによる撮影はあまり上手くいかなかったようですが、クジラより大きなカグラザメがクジラの遺体にかぶりつく映像が見られます。このクジラの遺体の周りではカグラザメ以外の深海ザメは見られなかったのですが、これはカグラザメが縄張りを作ってクジラを独り占めしたためと考えられます。

番組ではそれ以外にミツクリザメ(ゴブリンシャーク)、ユメザメ、ラブカ、オンデンザメなどの生きている様子を見ることができました。

日本の周辺の海は深海生物の宝庫のようで、今後の番組にも大いに期待できそうですよ。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:827 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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