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紅い芥子粒
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ページをめくっていくと、小鳥の歌声があふれ出す。まるで小鳥が遊ぶ水辺や、雑木林を散歩しているみたい。文学的な科学の本です。
昭和十六年に邦訳出版された本の復刻版だそうです。

序文を、作曲家で鳥類学者のオリヴィエ・メシアンが書き、それを音楽学者の藤田茂さんが日本語に訳しています。

自然科学の本とばかり思って読み始めたのですが、どうもそれだけではないようです。
科学的であることにちがいはないのですが、文章が、おそろしく詩的で文学的。
どうやら「動物文学」というジャンルのものらしい。

ページをめくっていくと、小鳥の歌声があふれ出します。
音楽家が序文を書いているのもうなずけます。
といっても、チチチ……とかピピピ……とか、書いてあるわけではありません。
なのに、小鳥の歌声が聞こえてくるような気がするのです。
小鳥が遊ぶ水辺や雑木林を散歩しているように……

著者のジャック・ドラマンは、フランスのボルドー北方の田舎で、広大な庭がある家に暮らし、鳥類の観察と研究に熱中したそうです。25年におよぶ研究の成果が、小鳥の歌声がつまった一冊の本になったというわけです。

ロマン・ロランがこの本に送ったという賛辞が、あとがきに添えられています。

すばらしい本だ。わが国の森と野原、空と川のあらゆる匂い、風の音、音楽、緑ー-すべてが心にくいまでに描き出されている


挿画も写真もないので、鳥のなまえが出てくるたびにスマホで動画を再生して、その姿と鳴き声を見聞きしながら読みました。
あ、この鳥みたことあるとか、この鳴き声の主はこの鳥だったのね!とか。しあわせを感じる読書の時間でした。

以下の九章から成っています。
一、鳥はなぜ歌う  
二、春の渡り  
三、愛と憎しみ 
四、婚姻  
五、ヤマガラの輪舞
六、川のほとり   
七、季節を結ぶ  
八、秋の渡り  
九、可憐な猛禽——チュウヒ一家の物語

文学的な、科学の本です。
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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:559 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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この書評へのコメント

  1. 三太郎2022-03-31 12:20

    >作曲家で鳥類学者のオリヴィエ・メシアン

    メシアンがピアノで小鳥のさえずりを弾くと本物の小鳥たちが寄ってきという伝説?がありますね。彼の作る曲は無調で判り易いとはいえませんが。

  2. 紅い芥子粒2022-03-31 17:07

    三太郎さん、コメントありがとうございます。

    メシアンは、ドラマンの家に泊まり込んで、朝の四時から好きなだけ、夜明けの鳥たちの歌の採譜をしたそうです。きっと、メシアンの弾く小鳥のさえずりは、ほんとうに小鳥を呼んだのでしょうね。

  3. No Image

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