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はなとゆめ+猫の本棚
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ずっと、スコッチウイスキーの香りの中で暮らしていたい。
 作者藤崎彩織は2010年代一世を風靡した4人組ミュージックバンドSEKAI NO OWARIでキーボードを中心に活躍している。その彼女が、名小説に触発されながら描いたエッセイ集。

 今から35年前、スコッチウィスキーは値段が高く、私のような貧乏人はカティーサーク、すこしリッチの人はシーバスリーガルが一般に飲めるくらいだった。

 そんな時、勤めていた会社の取引先がスコットランドのエジンバラにあり、出張した。

 エジンバラのスコッチウィスキー博物館を見学し、食事をした。スコッチウィスキーの多くの銘柄を試飲した。その中にものすごくスモーキーで薬を飲んでいるような味がするウィスキーがあった。スコットランドの西の端の島、アイラ島で製造されているアイラ モルトだった。出張が土日を挟んでいたので、自分のお金なら問題ないと思い、グラスゴーから小型機でアイラ島のボウモアに行った。

 飛行場から、あのスモーキーな香り、海藻香がすでに漂っていた。

 アイラモルトの蒸留所は7か所あった。それをタクシーでまわり見学した。朝から晩、夜更けまですべてのアイラモルトウィスキーを堪能した。

 私は、今、浜松の近くの小さな地方都市に住んでいるが、当時駅前にある小さなバーでアイラ島に行ってきたと店主に報告すると、店主がにやっと笑い、アイラモルト ラフロイグに使う、乾燥した大麦の粒をつまみにだしてくれ、ひっくりかえるほど吃驚した。

 この本の作者藤崎さんは、あるバーで、初めてラフロイグのロックを飲む。
そして味は医薬品のようですねと言う。これでも柔らかく言ったつもりだ。本当は正露丸の味がしたのだ。

 しかしバーテンダーはにっこり微笑んで「そうですね」とだけ言う。
それで、藤崎さんは驚くことに、お代わりを頼む。それから数杯のどにいれる。

 その日から、毎晩藤崎さんはウィスキーを嗜むようになった。
薬品の香りが、沁みついて離れない。その香りが、優しく心地よい。

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はなとゆめ+猫の本棚
はなとゆめ+猫の本棚 さん本が好き!1級(書評数:6216 件)

昔から活字中毒症。字さえあれば辞書でも見飽きないです。
年金暮らしになりましたので、毎日読書三昧です。一日2冊までを限度に読んでいます。
お金がないので、文庫、それも中古と情けない状態ですが、書評を掲載させて頂きます。よろしくお願いします。

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この書評へのコメント

  1. 脳裏雪2022-03-03 11:13

    なんと贅沢で羨ましいおはなしですね、アイラのモルトをすべて而も現地でだなんて、いいなあ 羨ましさを超えて、うらめしいです、

  2. No Image

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