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たけぞう
レビュアー:
著者の魅力が詰まった短篇集。苦めの味つけ。
安定の川上ワールドでした。六篇の短篇集です。
SNSトラブル、ルッキズム、コロナ禍、孤独老人、孤立、毒親。
ニュースで目につくトラブルを元に、著者らしく物語に仕上げています。

最近、社会問題を扱う小説が増えている気がします。
事実は小説よりも奇なりなんて言いますが、事実をまとめた記事を読むよりも
小説仕立てのほうが伝わりやすいことがあるんだなと思うようになりました。
小説の形式を使えば、事実だけでは分からない隙間を
想像しやすくなるからでしょうね。

一番気に入った作品は、第一話の青かける青です。
初めの段階で、ショートカット先「すべて真夜中の恋人たち」の世界観だと
伝わりました。たった七頁の作品です。だから行間がいっぱいあります。
もしこの作品に引っかかりを感じて、前述の作品を未読のかたは
一度立ち止まることをお薦めします。

作品は、こころの病気にかかっている人の話です。
ようやく回復の段階に入り、きみに手紙を書いています。
読んでいくにつれ、だんだんとせつなくなってきます。
最後の段落には感謝の言葉が綴られていて、
読んでいるこちらも同じ気持ちになるのです。

ふと気がつきました。この短篇集には独特の臨場感があるのです。
あらためて作品を見返すと、一人称、二人称、三人称を、
短篇ごとに使い分けています。
この構成の効果もあるのでしょう。
物語の向こうから、ねえ、そこのあなたと呼びかけられる雰囲気がありますから。

著者はきれいな人として知られていますが、
これまで何冊か読んでいる者としては、むしろ外見コンプレックスを
感じる作品が多く、生きていくのがしんどそうな人だなと思っています。
孤立や貧しさによる苦しみに触れる作品が多いのも、
著者の関心の高いテーマなのでしょう

とても著者らしい作品世界が広がっていました。
わたしはとても気に入りました。ちょっと苦い味つけでしたが。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1465 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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