hackerさん
レビュアー:
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「私はこどもたちに、戦争が何の意味もないことや、人はくだらないあらそいの輪のなかにかんたんにまきこまれてしまう事を知ってほしいと思い、この本をつくりました」(「作者のことば」より)
作者はロシア人です。
かもめ通信さんの書評で、この本のことを知りました。感謝いたします。
ロシアのイラストレータ、ニコライ・ポポフが1995年に出版した本書の英語の題名は、単純に "Why?" です。確認できませんでしたが、ロシア語の原題も同じでしょう。本書作成の背景については、巻末に収録されている「作者のことば」が、実に雄弁です。
「私は1938年、ボルガ川のほとりにあるロシアの町、サラトフで生まれました。そこは、古くて美しくてちょっぴりいなかの、緑豊かなのんびりとしたところです。(中略)
私がまだおさないころに、戦争がこの平和な小さな町を破壊しはじめました。ドイツ軍は夜に、町に爆撃をくわえましたが、敵を知らせるサイレンが鳴りひびくとすぐ、私は母や祖母や叔母によって地下のシェルターに連れていかれたものでした。今でも、あのサイレンの音を忘れることはできません。小さかった私は、なぜ夜中にそのような深くほられた穴に入らなければならないのか、わかりませんでした。
それでも朝になると、私も友だちもいつものように、野球やゲームをして遊びました。そして、爆撃のあった通りへ行って、そこに落ちている金属の破片を拾い集めたりもしました。きらきらと光るたくさんのかけらはとても美しく、まるで宝物のように見えました。しかし、私たちはこの宝物のもつ、おそろしい本当の力を知りませんでした。それが仲間のひとりの手の中で爆発し、彼の手をふきとばすまでは。(中略)
私はこどもたちに、戦争が何の意味もないことや、人はくだらないあらそいの輪のなかにかんたんにまきこまれてしまうことを知ってほしいと思い、この本をつくりました。本を読んだ子供たちが、将来平和のために何かできるかもしれません。
そして、子どもたちだけでなく、大人にもあらそうことのおろかさをもう一度考えてほしいと思います」
本書には、実は、言葉がありません。優れた無声映画が言葉を必要としないように、主張したいことがはっきりある場合、優れた絵本は絵だけでも十分それが伝わることを証明しています。内容については、帯に次のように紹介されています。
「1ぴきのカエルが、1本の美しい花を手にしていました。そこへ1ぴきのネズミがやってきてその花をうばいました。なぜ?
次に、2ひきのカエルがくわわってネズミをおいはらい、手あたりしだいに花をつみはじめました。なぜ?
すると今度は、ネズミたちがもっとひどい暴力で仕返しをしました。そして、あらそいはつづいたのです」
この紹介文の最後は、つぎの文章です。
「そして最後に何が残るか、考えてみてください」
その「最後に残るもの」を、我々は今、現在進行形で見ています。キエフにいるCNNのレポーターが、キエフ郊外の高速道路上での戦闘の跡を取材し、CNNのニュースとサイトでそれを紹介していましたが、破壊されたロシア軍の車両の横にはロシア兵の死体が点在しており、それに対して 'Complete waste of life' と言っていたのが印象的でした。
そして、本書の絵でもっとも私の記憶に残るであろうものは、カエルもネズミも相手を攻撃している、あるいは自分が優位と思っている時に、顔に軽い笑みを浮かべていることです。恐ろしいことですが、これが戦争の本質なのでしょう。
こうしている間にも、ウクライナとロシアに限らず、世界中で戦争が起こっていることは承知しています。どんな戦争であれ、まずは、一刻も早く戦いを止めてもらいたいものです。
ロシアのイラストレータ、ニコライ・ポポフが1995年に出版した本書の英語の題名は、単純に "Why?" です。確認できませんでしたが、ロシア語の原題も同じでしょう。本書作成の背景については、巻末に収録されている「作者のことば」が、実に雄弁です。
「私は1938年、ボルガ川のほとりにあるロシアの町、サラトフで生まれました。そこは、古くて美しくてちょっぴりいなかの、緑豊かなのんびりとしたところです。(中略)
私がまだおさないころに、戦争がこの平和な小さな町を破壊しはじめました。ドイツ軍は夜に、町に爆撃をくわえましたが、敵を知らせるサイレンが鳴りひびくとすぐ、私は母や祖母や叔母によって地下のシェルターに連れていかれたものでした。今でも、あのサイレンの音を忘れることはできません。小さかった私は、なぜ夜中にそのような深くほられた穴に入らなければならないのか、わかりませんでした。
それでも朝になると、私も友だちもいつものように、野球やゲームをして遊びました。そして、爆撃のあった通りへ行って、そこに落ちている金属の破片を拾い集めたりもしました。きらきらと光るたくさんのかけらはとても美しく、まるで宝物のように見えました。しかし、私たちはこの宝物のもつ、おそろしい本当の力を知りませんでした。それが仲間のひとりの手の中で爆発し、彼の手をふきとばすまでは。(中略)
私はこどもたちに、戦争が何の意味もないことや、人はくだらないあらそいの輪のなかにかんたんにまきこまれてしまうことを知ってほしいと思い、この本をつくりました。本を読んだ子供たちが、将来平和のために何かできるかもしれません。
そして、子どもたちだけでなく、大人にもあらそうことのおろかさをもう一度考えてほしいと思います」
本書には、実は、言葉がありません。優れた無声映画が言葉を必要としないように、主張したいことがはっきりある場合、優れた絵本は絵だけでも十分それが伝わることを証明しています。内容については、帯に次のように紹介されています。
「1ぴきのカエルが、1本の美しい花を手にしていました。そこへ1ぴきのネズミがやってきてその花をうばいました。なぜ?
次に、2ひきのカエルがくわわってネズミをおいはらい、手あたりしだいに花をつみはじめました。なぜ?
すると今度は、ネズミたちがもっとひどい暴力で仕返しをしました。そして、あらそいはつづいたのです」
この紹介文の最後は、つぎの文章です。
「そして最後に何が残るか、考えてみてください」
その「最後に残るもの」を、我々は今、現在進行形で見ています。キエフにいるCNNのレポーターが、キエフ郊外の高速道路上での戦闘の跡を取材し、CNNのニュースとサイトでそれを紹介していましたが、破壊されたロシア軍の車両の横にはロシア兵の死体が点在しており、それに対して 'Complete waste of life' と言っていたのが印象的でした。
そして、本書の絵でもっとも私の記憶に残るであろうものは、カエルもネズミも相手を攻撃している、あるいは自分が優位と思っている時に、顔に軽い笑みを浮かべていることです。恐ろしいことですが、これが戦争の本質なのでしょう。
こうしている間にも、ウクライナとロシアに限らず、世界中で戦争が起こっていることは承知しています。どんな戦争であれ、まずは、一刻も早く戦いを止めてもらいたいものです。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:BL出版
- ページ数:0
- ISBN:9784892387678
- 発売日:2000年07月01日
- 価格:1430円
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