darklyさん
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多才な松任谷正隆さんのエッセイです。昭和的自己肯定感の低さにとても共感しました。
本書は音楽のみならず多くの分野で活躍されている松任谷正隆さんのエッセイです。読売新聞の「マナー」の欄に連載したものと書下ろしのもので一冊にまとめたものです。一言で正隆さんの思想を表現するとしたら昭和の日本人的オーソドックスに尽きると思います。いやむしろ普通よりももっと自己肯定感の低さを感じさせ、私には共感できる話が沢山ありました。
面白かった話をいくつかご紹介したいと思います。
正隆さんは、自動車マニアで自動車評論家の顔も持っており、当然普段から色々な車に乗ることがあります。ある日借りているポルシェに奥さんを乗せて、どこの車だ?とマークを隠しながら聞いたら奥さんは、
歩行者のマナーという話では、正隆さんは気が弱く、車を運転していても曲がれない場合は真っすぐ行き、高速のランプを降りれない場合は真っ直ぐ通り過ぎる。歩道を歩いてくる横幅一杯に広がった集団も怖いと言います。すごく共感します。こんなに様々な才能を持った人なのに私と同じだ。しかしスマホ見ながら歩いたり自転車運転したり、自転車で先が見えないカーブを減速せずに曲がってきたり、「おまえら想像力がないのか?」と首をかしげるマナーの人が結構います。若い人だけじゃなくて。
演出家と俳優のマナーという話では、蜷川幸雄さんが、稽古中に自分の劇団員を叱責することでゲストの俳優に自分の求めていることを示すという例を挙げながら、それぞれの演出家にはそれぞれ俳優との付き合い方があると正隆さんは言っています。
演出家でもある正隆さんは、最後に「俳優はまず、それを知ることがカンパニーの一員としてのマナーなんじゃないか」と締めくくります。最後の文章は少しキツい言い方のような気がします。想像しすぎかもしれませんが、誰か特定の俳優に向かって間接的に説教しているような気がしてなりません。
飼い主のマナーという話では、飼っていたフレンチブルの死が語られます。その前に飼っていた同じフレンチブルの九太郎が9年しか生きられなかったので、今度はもっと生きられるように友人が百太郎と名付けてくれたにも関わらず百太郎は5年の短い生涯を終えたのです。
正隆さん、それは名前が悪いです。百太郎と言えば、当時我々小学生を震え上がらせた、つのだじろうの最凶心霊漫画「うしろの百太郎」ですよ。縁起が良いわけがないじゃないですか。
正に多才な正隆さんですが、私はやはりアレンジャーとしての正隆さんが好きです。実際、ユーミンの曲の中でも歌そのものより前奏、間奏、後奏が好きで聴きたくなる曲も沢山あります。
このエッセイを読んでつくづく思うのは、松任谷夫妻はあれほどのビッグカップルに関わらずほんと普通の感覚を持ち続けている人たちだということです。多分有名人になる人には二種類あって、一つは有名になる、金持ちになる、権力者になるというのが目標の人たちであり、もう一つは好きなことを一生懸命やって結果有名になる人たちなんだろうと思います。まさにこの夫妻は後者であり、前者にありがちな自分自身を見失うということもなく、これからも自分の道を進んでいくのだろうと思います。
面白かった話をいくつかご紹介したいと思います。
正隆さんは、自動車マニアで自動車評論家の顔も持っており、当然普段から色々な車に乗ることがあります。ある日借りているポルシェに奥さんを乗せて、どこの車だ?とマークを隠しながら聞いたら奥さんは、
この乗り心地はトヨタだわね。普通だったらちょっと微笑ましい話ですが、ご存知の通り奥さんはユーミンです。あの独特の低音ボイスを想像しながらこの文章を読んだとき噴き出しました。
歩行者のマナーという話では、正隆さんは気が弱く、車を運転していても曲がれない場合は真っすぐ行き、高速のランプを降りれない場合は真っ直ぐ通り過ぎる。歩道を歩いてくる横幅一杯に広がった集団も怖いと言います。すごく共感します。こんなに様々な才能を持った人なのに私と同じだ。しかしスマホ見ながら歩いたり自転車運転したり、自転車で先が見えないカーブを減速せずに曲がってきたり、「おまえら想像力がないのか?」と首をかしげるマナーの人が結構います。若い人だけじゃなくて。
演出家と俳優のマナーという話では、蜷川幸雄さんが、稽古中に自分の劇団員を叱責することでゲストの俳優に自分の求めていることを示すという例を挙げながら、それぞれの演出家にはそれぞれ俳優との付き合い方があると正隆さんは言っています。
演出家でもある正隆さんは、最後に「俳優はまず、それを知ることがカンパニーの一員としてのマナーなんじゃないか」と締めくくります。最後の文章は少しキツい言い方のような気がします。想像しすぎかもしれませんが、誰か特定の俳優に向かって間接的に説教しているような気がしてなりません。
飼い主のマナーという話では、飼っていたフレンチブルの死が語られます。その前に飼っていた同じフレンチブルの九太郎が9年しか生きられなかったので、今度はもっと生きられるように友人が百太郎と名付けてくれたにも関わらず百太郎は5年の短い生涯を終えたのです。
正隆さん、それは名前が悪いです。百太郎と言えば、当時我々小学生を震え上がらせた、つのだじろうの最凶心霊漫画「うしろの百太郎」ですよ。縁起が良いわけがないじゃないですか。
正に多才な正隆さんですが、私はやはりアレンジャーとしての正隆さんが好きです。実際、ユーミンの曲の中でも歌そのものより前奏、間奏、後奏が好きで聴きたくなる曲も沢山あります。
このエッセイを読んでつくづく思うのは、松任谷夫妻はあれほどのビッグカップルに関わらずほんと普通の感覚を持ち続けている人たちだということです。多分有名人になる人には二種類あって、一つは有名になる、金持ちになる、権力者になるというのが目標の人たちであり、もう一つは好きなことを一生懸命やって結果有名になる人たちなんだろうと思います。まさにこの夫妻は後者であり、前者にありがちな自分自身を見失うということもなく、これからも自分の道を進んでいくのだろうと思います。
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昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。
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- 出版社:中央公論新社
- ページ数:0
- ISBN:9784120054136
- 発売日:2021年03月20日
- 価格:1650円
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