三太郎さん
レビュアー:
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ジャズ・ベーシストの鈴木良雄さんが選んだ音楽仲間の投票による、ジャズのベスト55!
最近、ブックオフでジャズの中古CDをよく買って聴くようになりました。僕は高校時代にブラスバンドでクラリネットを演奏した経験はありましたが、ジャズはほとんど知りませんでした。当時の仲間にはジャズに詳しい男もいたのでその頃にジャズに出会っていればよかったなあ。
CDを買うついでに過去のジャズの録音の解説書も買って読みました。新 ジャズの名演・名盤とかジャズCDの名盤ですが、最初の本は一人のジャズ愛好家が自分の基準で選んでいて、客観性に乏しい感じがしました。二番目の本はより網羅的でよかったが、どちらもやや古い本でした。
今回読んだのは2016年に出た比較的新しい本で、最近の話題にも触れられています。なによりも現役のジャズ・ベーシストの鈴木良雄氏が選んだ音楽仲間にアンケートして、その結果の上位55枚の録音について、鈴木さんが解説を書いています。(実際に読んだのはKindleではなく紙の本です)
彼は1970年代にニュ-ヨークに渡り、1950年代のモダンジャズを作った名演奏家たちに直接会い、一緒に演奏しています。ジャズという音楽が作られる現場の雰囲気を肌で知っている演奏家による解説というのは前の二つの本にはない特徴だし、アンケートによる選曲だから偏りも少ないと期待できるでしょう。それと、アンケートの回答者に多くの演奏家が含まれているのも、この本の特徴でしょう。ジャズに限らず音楽は実際に演奏した者でないと分からないことがあります。なお巻末に各人のアンケートの回答がすべて載っています。(回答者の中にはタレントのタモリさんもいます。彼は学生時代にトランペットでジャズを吹いていたとか。)
鈴木さんが渡米した70年代にはジャズの演奏家はもう黒人だけではなかったのですが、黒人の演奏家と白人のそれとでは演奏に違いが感じられたらしい。当時の黒人の演奏家はベースにブルースなどの黒人音楽があるのに対して白人の演奏家はクラシック音楽からジャズに入ってきました。両者には音楽に対する感じ方に違いがあったらしい。鈴木さんは黒人の演奏家たちと多く共演しているし親しくなった人も多かった。そういったかつての名演奏家たちとのエピソードも読むことができます。ジャズは米国の人種差別の現実と切っても切り離せないと鈴木さんは述べています。そして演奏家の薬物中毒の悲惨さも指摘しています。
この本に紹介された55枚の中の上位のアルバムから、僕が日頃聴いているお気に入りを3枚挙げておきます。まず最初はやはりマイルス・デイビスの演奏です。冒頭のラウンド・ミッドナイトのトランペットの音色は何とも表現しがたいです。彼は裕福な黒人層の出で、ジュリアード音楽院に在籍したことがあるインテリです。モダンジャズを作った立役者の一人でしょう。
二枚目はテナー・サックスの巨匠、コルトレーンの代表作です。彼はマイルス・デイビスの先のアルバムにも参加しています。こちらは独り立ちしてからの作品でしょう。彼の音楽はハーモニーが美しいのですが、マイルスかビル・エバンスの影響なのかも。
三枚目はピアニストのビル・エバンスの代表作です。彼は白人ですが、周囲の反対を押し切ってマイルス・デイビスが起用したことで注目されたのでした。バンドを離れてからもマイルスとは協力関係があったとか。ビルは元はクラシックのピアノを勉強していたとか。ハーモニー中心のジャズです。
鈴木さんがマイルス・デイビスに初めて会ったのは1980年代のことで、会うなりマイルスは "I hate jap! " と言って握手を求めてきたとか。当時は日米経済摩擦で日本叩きが激しかったから、それを踏まえたジョークだったのでしょうが、米国の人種差別の根の深さもさらりと指摘したのかも。
CDを買うついでに過去のジャズの録音の解説書も買って読みました。新 ジャズの名演・名盤とかジャズCDの名盤ですが、最初の本は一人のジャズ愛好家が自分の基準で選んでいて、客観性に乏しい感じがしました。二番目の本はより網羅的でよかったが、どちらもやや古い本でした。
今回読んだのは2016年に出た比較的新しい本で、最近の話題にも触れられています。なによりも現役のジャズ・ベーシストの鈴木良雄氏が選んだ音楽仲間にアンケートして、その結果の上位55枚の録音について、鈴木さんが解説を書いています。(実際に読んだのはKindleではなく紙の本です)
彼は1970年代にニュ-ヨークに渡り、1950年代のモダンジャズを作った名演奏家たちに直接会い、一緒に演奏しています。ジャズという音楽が作られる現場の雰囲気を肌で知っている演奏家による解説というのは前の二つの本にはない特徴だし、アンケートによる選曲だから偏りも少ないと期待できるでしょう。それと、アンケートの回答者に多くの演奏家が含まれているのも、この本の特徴でしょう。ジャズに限らず音楽は実際に演奏した者でないと分からないことがあります。なお巻末に各人のアンケートの回答がすべて載っています。(回答者の中にはタレントのタモリさんもいます。彼は学生時代にトランペットでジャズを吹いていたとか。)
鈴木さんが渡米した70年代にはジャズの演奏家はもう黒人だけではなかったのですが、黒人の演奏家と白人のそれとでは演奏に違いが感じられたらしい。当時の黒人の演奏家はベースにブルースなどの黒人音楽があるのに対して白人の演奏家はクラシック音楽からジャズに入ってきました。両者には音楽に対する感じ方に違いがあったらしい。鈴木さんは黒人の演奏家たちと多く共演しているし親しくなった人も多かった。そういったかつての名演奏家たちとのエピソードも読むことができます。ジャズは米国の人種差別の現実と切っても切り離せないと鈴木さんは述べています。そして演奏家の薬物中毒の悲惨さも指摘しています。
この本に紹介された55枚の中の上位のアルバムから、僕が日頃聴いているお気に入りを3枚挙げておきます。まず最初はやはりマイルス・デイビスの演奏です。冒頭のラウンド・ミッドナイトのトランペットの音色は何とも表現しがたいです。彼は裕福な黒人層の出で、ジュリアード音楽院に在籍したことがあるインテリです。モダンジャズを作った立役者の一人でしょう。
二枚目はテナー・サックスの巨匠、コルトレーンの代表作です。彼はマイルス・デイビスの先のアルバムにも参加しています。こちらは独り立ちしてからの作品でしょう。彼の音楽はハーモニーが美しいのですが、マイルスかビル・エバンスの影響なのかも。
三枚目はピアニストのビル・エバンスの代表作です。彼は白人ですが、周囲の反対を押し切ってマイルス・デイビスが起用したことで注目されたのでした。バンドを離れてからもマイルスとは協力関係があったとか。ビルは元はクラシックのピアノを勉強していたとか。ハーモニー中心のジャズです。
鈴木さんがマイルス・デイビスに初めて会ったのは1980年代のことで、会うなりマイルスは "I hate jap! " と言って握手を求めてきたとか。当時は日米経済摩擦で日本叩きが激しかったから、それを踏まえたジョークだったのでしょうが、米国の人種差別の根の深さもさらりと指摘したのかも。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:竹書房
- ページ数:0
- ISBN:B01E5LJKBE
- 発売日:2016年02月04日
- 価格:990円
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