morimoriさん
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辛く苦しい小説だった。豊かな愛情をそそがれるべき子どもが、なぜこんなにも残酷な仕打ちをうけるのか。母親だけでなく、そこには深い因縁があった。
年末から正月にかけて読んだこの小説、長く苦しく辛い内容だった。それも、実際に起こった大阪の幼児餓死事件をモチーフにしているからだろう。我が子を置き去りにした母親は、実際には23歳という。まだまだ遊びたい年齢なのかもしれない。さらに、小説では彼女の母親やその両親の家庭状況も描かれているが、安心して子どもが成長できるような環境とは程遠い。
小説では、我が子を餓死させた母親蓮音は、実母に捨てられたと思っている。しかし、母親の琴音は精神を病んでおり、夫との家庭生活を続けることが困難で入退院を繰り返しているのだ。さらに、その母は夫の暴力を受けその後、再婚したのだがその再婚相手が娘に性的虐待をしそれを見て見ぬふりという最悪な環境だった。これでもかと不幸が押し寄せる中で、弟や妹の母親代わりとなっておとなとなっていった少女が哀れでならなかった。
ニュースで子どもの虐待事件を耳にすると、「なんて親だろう」と思ってしまうが、非難することは簡単だ。しかし、果たしてその親の生育状況はどんなだったのかを想像すると安易に非難できない問題があるのだと改めて感じた。著者の山田詠美氏は事件を小説に利用してはいけない、小説として成立させるにはどうすればいいのか悩んだという。著者の苦しみが、そのまま小説から伝わってくるようだ。しかし、この小説を読まなければ、いつまでも事件を見聞きして「なんて親だろう」で終わってしまう。何もできないまでも、せめてこういう親の存在や、虐待を受けている子どものことを思い何か手を差し伸べることができないものかと悩む人間でありたいと思った。
小説では、我が子を餓死させた母親蓮音は、実母に捨てられたと思っている。しかし、母親の琴音は精神を病んでおり、夫との家庭生活を続けることが困難で入退院を繰り返しているのだ。さらに、その母は夫の暴力を受けその後、再婚したのだがその再婚相手が娘に性的虐待をしそれを見て見ぬふりという最悪な環境だった。これでもかと不幸が押し寄せる中で、弟や妹の母親代わりとなっておとなとなっていった少女が哀れでならなかった。
ニュースで子どもの虐待事件を耳にすると、「なんて親だろう」と思ってしまうが、非難することは簡単だ。しかし、果たしてその親の生育状況はどんなだったのかを想像すると安易に非難できない問題があるのだと改めて感じた。著者の山田詠美氏は事件を小説に利用してはいけない、小説として成立させるにはどうすればいいのか悩んだという。著者の苦しみが、そのまま小説から伝わってくるようだ。しかし、この小説を読まなければ、いつまでも事件を見聞きして「なんて親だろう」で終わってしまう。何もできないまでも、せめてこういう親の存在や、虐待を受けている子どものことを思い何か手を差し伸べることができないものかと悩む人間でありたいと思った。
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多くの人のレビューを拝見して、読書の幅が広がっていくのが楽しみです。感動した本、おもしろかった本をレビューを通して伝えることができればと思っています。
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- 出版社:中央公論新社
- ページ数:0
- ISBN:9784122071179
- 発売日:2021年09月22日
- 価格:792円
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