紅い芥子粒さん
レビュアー:
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菊池寛は、芥川龍之介より四歳年上だが、第一高等学校の同期生。わけあって東京帝大ではなく京都帝大に進んだ。そのころの失意の日々を、おもしろおかしく綴った日記形式の小説。
菊池寛は、1888年生まれ。芥川龍之介よりも四歳年長である。ちょっと回り道をしたので、第一高等学校では、芥川と同期になった。ふたりは、親友となる。菊池は、ある事件がきっかけで、東大へは進まず、京都帝大の学生となる。そのころの失意の日々を、日記形式で、おもしろおかしく書いた小説である。
”おれ”が京都へ来た日から、日記は始まる。
作家志望の”おれ”。胸には、希望よりも不安を抱えている。
はたして自分に文学の才能があるか。
作家として立つことができるか。
東京の友人には、才能がある。特に山野。
やつの才能には嫉妬せずにはいられない。
才能がないうえに東京を離れてしまったことも、後悔している。
作家デヴューのきっかけをつかむには、東京にいたほうが有利なのはまちがいない。
戯曲をたったひとつ書いただけで、ウダウダしている間に、山野から手紙がきた。
なかまと同人誌を立ち上げるという。
威勢のいいことを書いてきたが、一言の誘いの言葉もない。
”おれ”は、ひがむ。山野を恨む。
京都で小説を書いている友人は、同人誌なんかに書いてもしょうがないと嘲笑う。
そういわれると、なんだか心が慰められる。
”おれ”が悶々としている間に、山野たちは、同人誌を発刊した。
京都にも送ってきてくれた。
おそるおそる開いて、山野の短編を読んでみる。
おもしろい。夢中になって読んだ。認めたくないが、やつの才能は本物だ。
その同人誌を、京都の友人にも見せた。
その友人は、ふん、こんなもの誰にでも書けると、鼻で笑った。
”おれ”は、いいきもちになったが、心の底ではわかっていた。
京都の友人には見る目がないってことが。
山野の才能は老大家にも認められ、メジャーデヴューを果たして、あれよあれよという間に人気作家への階段をかけあがっていった。
”おれ”の胸は、山野への嫉妬ではりさけそうだ。
そうこうするうちに、きみも同人誌をやらないかと、やっと誘いがくる。
”おれ”は、よろこんで、自信作の戯曲を東京へ送った。
ところが、山野からきた返事は……
山野とは、芥川龍之介のことである。
この作品が発表されたのは、1918年。この年も芥川は「、地獄変」「蜘蛛の糸」「奉教人の死」など多くの話題作を発表し、もはや文壇の寵児となっている。一方の菊池寛は、「父帰る」を発表して、やっと作家としてのスタートを切ったところ。
菊池寛が、どれほど芥川龍之介のことが好きで、その才能を愛していたかがよくわかる小説である。
”おれ”が京都へ来た日から、日記は始まる。
作家志望の”おれ”。胸には、希望よりも不安を抱えている。
はたして自分に文学の才能があるか。
作家として立つことができるか。
東京の友人には、才能がある。特に山野。
やつの才能には嫉妬せずにはいられない。
才能がないうえに東京を離れてしまったことも、後悔している。
作家デヴューのきっかけをつかむには、東京にいたほうが有利なのはまちがいない。
戯曲をたったひとつ書いただけで、ウダウダしている間に、山野から手紙がきた。
なかまと同人誌を立ち上げるという。
威勢のいいことを書いてきたが、一言の誘いの言葉もない。
”おれ”は、ひがむ。山野を恨む。
京都で小説を書いている友人は、同人誌なんかに書いてもしょうがないと嘲笑う。
そういわれると、なんだか心が慰められる。
”おれ”が悶々としている間に、山野たちは、同人誌を発刊した。
京都にも送ってきてくれた。
おそるおそる開いて、山野の短編を読んでみる。
おもしろい。夢中になって読んだ。認めたくないが、やつの才能は本物だ。
その同人誌を、京都の友人にも見せた。
その友人は、ふん、こんなもの誰にでも書けると、鼻で笑った。
”おれ”は、いいきもちになったが、心の底ではわかっていた。
京都の友人には見る目がないってことが。
山野の才能は老大家にも認められ、メジャーデヴューを果たして、あれよあれよという間に人気作家への階段をかけあがっていった。
”おれ”の胸は、山野への嫉妬ではりさけそうだ。
そうこうするうちに、きみも同人誌をやらないかと、やっと誘いがくる。
”おれ”は、よろこんで、自信作の戯曲を東京へ送った。
ところが、山野からきた返事は……
山野とは、芥川龍之介のことである。
この作品が発表されたのは、1918年。この年も芥川は「、地獄変」「蜘蛛の糸」「奉教人の死」など多くの話題作を発表し、もはや文壇の寵児となっている。一方の菊池寛は、「父帰る」を発表して、やっと作家としてのスタートを切ったところ。
菊池寛が、どれほど芥川龍之介のことが好きで、その才能を愛していたかがよくわかる小説である。
掲載日:
書評掲載URL : http://blog.livedoor.jp/aotuka202
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読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。
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- ISBN:B009IXG2L6
- 発売日:2012年09月28日
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