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休蔵さん
休蔵
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『播磨国風土記』を素材とした古代史探求の試み。古代史研究者だけでなく、考古学や近世史研究者など17名の執筆者による6章38編の論考からなる。古代地域史を突き詰める際に参考となる視点を多く提供する1冊。
 奈良時代に編纂された文献である『古事記』、『日本書紀』については、広く周知されているし、全国規模での研究も進んでいる。
 それ以外にも様々な古代文字史料が存在するが、『古事記』、『日本書紀』と同等、場合によってはそれ以上の価値を持つ文献がある。
 『風土記』だ。
 和銅6年(713)に編纂・提出命令が出された『風土記』は、諸国ごとに作成された行政報告書である。
 奈良時代あるいはそれ以前の地方の様子を教えてくれる重要な史料であるが、常陸、播磨、出雲、豊前、肥前が現存するだけで、その他の国の風土記は今に伝わらない。
 現存する5国の風土記についても、完存するのは出雲のみ。
 たとえ完存しなくとも、風土記はその国の古代史について有益な情報を多く教えてくれる。
 本書は『播磨国風土記』を題材に、古代播磨国の探求が試みられた1冊である。

 本書は17名の執筆者による6章38編の論考からなる。
 古代史研究者はもちろんのこと、考古学や近世史からのアプローチもあり、興味深い。
 第1章は「播磨と倭王権」で古代播磨の政治史に関わる論説が集められている。
 第2章は「播磨の道と地域間交流」で、道そのものから道に関わる伝承なども取り扱う。
 第3章は「大阪湾岸と淡路島の海人」で、古代淡路島の海人や神話に関する検討。
 第4章は「地域生活と播磨の神祭り」で、古代人の暮らしのあり方、婚姻と出産をめぐる祭祀の役割、疫病や災厄との戦いの歴史、考古資料から見た祭祀の様相についての論考が集まる。
 第5章は播磨の古代寺院と仏教」というテーマで、文献史や考古学だけではなく仏教彫刻史からのアプローチもある。
 第6章は「播磨と古代と史料・地誌」で、『風土記』をめぐる各時代の社会のあり方や思想状況、人的交流やネットワークのあり方などの検討を示す。

 『風土記』は奈良時代の各国で作成され、中央政権に報告されたもの。
 それが残されていると、古代の地域史があざやかに蘇るということを実例をもとに示された思いがする。
 古代の地域人の名前が分かるというだけでも驚きであるし、今に伝わる地名が奈良時代にまでさかのぼり、その地名の起源説話まで見えることは、現在の風景すら異なるものに変えてしまう気がした。
 『風土記』がたった5国分しか残されていないことが、本当に悔やまれる。
 本書は『播磨国風土記』を素材にした古代史探求の試みである。
 そして、各地にも豊かな古代史が存在していることを間接的に教えてくれている。
 各地の古代史にアプローチする際には、本書の視点は大いに役立つと考える。
 
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休蔵
休蔵 さん本が好き!1級(書評数:448 件)

 ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
 それでも、まだ偏り気味。
 いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい! 

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