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ぷるーと
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スターリンの死から、ソヴィエトの崩壊まで。この国の人々のさまざまな生きざまを描いた物語。
スターリンが危篤らしいという噂が人々の口にのぼりはじめた頃から物語は始まる。

モスクワの学校に通う3人の少年が知り合いになった。彼らは、文学のシェンゲリ先生を崇拝し、リュルス(文学愛好家たち)というサークルを立ち上げ文学談義に熱を上げた。

ソヴィエトというと『1984年』などで象徴される全く自由のない国というイメージが強かったため、3人の少年たちを取り巻く雰囲気にはちょっと驚いたし、旧貴族階級のサーニャの家庭の雰囲気も、「思っていたのとは違う」というものだった。

だが、スターリンの葬儀後、トップが変わるたびにどんどん悪くなっていく社会情勢を描くとともに、それまでは描かれていなかった抑圧された人々の暮らしぶりも描かれていく。

自分自身の頭の中の、わずかなりとも自由を呼吸する拠り所だった文学。この作品には、その文学や芸術を愛し、それを心の拠り所にしながら、最後には心を折られてしまう人々が多数登場する。

だが、ソヴィエト当局が国民の人間性を破滅させただ従順でやる気のない「ソヴィエト的人間」を創造することを目的としていたのなら、それに対抗できるのは文学をはじめとした芸術なのだ、と作者はいいたいのではないだろうか。

「緑の天幕」とは、体制側の一家に生まれ反体制のコミュニティにのめりこみ、身も心もぼろぼろになったオーリャが死の直前に夢に見たもので、彼女はその中に誘われたと言って心穏やかに死ぬ。緑の天幕の中には何もなかったとオーリャは言うが、波乱だらけの彼女が最後に見たのは安らかな静けさだったのかもしれない。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2922 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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