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DBさん
DB
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バスで向かうあちら側の話
桜は葉桜になってしまったけれど、ちょうどいい季節に読みました。
シリーズ三作目だが間隔があきすぎて前回の話を忘れかけていたが、主人公の桜蔵は大学生になったところ。
医師である父親の愛人の息子として、宿屋を経営している母親と弟と暮らしています。
桜蔵にはこの世のものではない存在を引き寄せてしまう体質で、それによりこれまで何度も不思議な体験をしてきたが。

今回は桜蔵が祖父の墓参りへ行こうと乗ったバスの話から始まります。
バスが衝突事故を起こし、その事故を起こした車の運転手が消えたという騒ぎに巻き込まれる。
だが事故そのものより、バスの中に散らばった白骨の方が謎ですがこれは誰のものなのだろう。
同乗していた若い男は桜蔵が持っていた箱から骨が散らばったと主張するが、桜蔵の方ではその男の隣に座ってそのあたりが森だったころの話をしていた年配の男の持ち物だと記憶していた。
とりあえずバスの出来事は置いておいて、祖父の墓へたどり着きます。

いびつな形の大石が数個置かれていて、黒果の実をつける石榴の古木が石の隙間から伸びているという祖父の墓は個性的というより他に言葉はない。
桜蔵が中学生の頃に亡くなったこの父方の祖父は息子に輪をかけた艶福家で、法事の度に故人とどういう関係なのか微妙な喪服の女性たちが集まってくるという。
そんな女性客たちを接待するのが父親の正妻である遠子の役目であり、その助手代わりに桜蔵も駆り出されていた。

数年前の祖父の三回忌の時の出来事、父親である柾に呼び出されて特急に乗って訪れた土地での話、そして桜蔵が呼ばれた茶会の代わりに迷い込んでしまった別の時代の茶会の話と場所も時間も揺れ動きながら話が語られていく。
桜蔵の母方である左近家と、父方の白鳥家の複雑すぎる関係も少しずつ明かされていきます。
複雑すぎてどうしようもなく絡まった毛糸のようになってしまっている気もする。

蛇、酒、茶器、それに石榴とアケビの木が繰り返し現れながら姿を変えていく。
捕まえようと思っても捕えられないが、一歩離れてみると鮮やかな景色が広がっているかのような物語だった。
アケビを漬け込んだアケビ酒なるものが気になるが、皮の苦さが苦手だったから美味しいとは思えないかも。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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