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星落秋風五丈原
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隙あらばアヘンに逃げるウィンダムが危なくって仕方がない!
1920年英国領のインドを舞台にした英国人警部とインド人部長警部の活躍を描くヒストリカル・ミステリー第二弾。

1920年6月、英国統治下のカルカッタで、藩王国サンバルプールの王太子が暗殺された。実行犯に目前で自殺されたインド帝国警察の英国人警部ウィンダムは、相棒で同居人のインド人部長刑事バネルジーと共に、真相を追ってサンバルプールへ赴く。だが、王宮の独特な慣習に翻弄されて捜査は難航。しかも、さらなる暗殺事件が起こり、背後には英国諜報機関の影が。

 イギリスでは人の眼があって吸えない(いや、インドでも気にして欲しいんだけど)アヘンをインドで見るや取りつかれたようになって吸いに行くウィンダムは、ヤバイヤク中刑事である。しかしなぜか、妻を亡くした悲しみから立ち直れない、憂いの独身男は強力なアピールポイントになっていてやたらモテる。果ては気になる女性アニーとの恋の駆け引きを楽しんだりもしている。いや、甘やかしすぎでは?
 
 インド独立は1945年とまだまだ先。1919年にガンジーが主導していた非暴力独立運動(サティヤーグラハ)が、1919年4月13日のアムリットサル事件を契機に、それに抗議する形でそれまで知識人主導であったインドの民族運動を幅広く大衆運動になり、独立の気運はまだ一部にしかない。

 今回焦点が当たるのは、身分制度が厳しいインドの中でも更に厳しい女性達だ。王太子を愛していても結婚できない欧米人女性、インドのために身を投じる覚悟を決めている女性、無能な男達の蔓延る宮廷で密かに牙をむいていた女性、等々。

 身分と民族の異なるバディだからこそ事件に抱く感慨も時には別になる。恐らく決定的に決裂の時が来るのはそれぞれの国への忠誠が試される時だろう。その頃にはウィンダムから薬が抜けてくれているといいのだけれど。

ウィルバー・スミス冒険小説賞受賞作。

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2320 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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