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ぷるーと
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イラン・イスラム革命に翻弄された一家をマジックリアリズムで描いた心に残る作品。
図書館の新着本コーナーにあったのでかりたのだが、今年一かもしれない、と思えるすごい本だった。


語り手は、13歳の少女バハール。両親、兄、姉の5人家族は、1979年に起きたイラン・イスラム革命で恐ろしい悲劇に巻き込まれ、テヘランから北の僻地ラーザーンに移り住んだ。だが、そんな僻地の村にも革命勢力は迫ってきて、兄のソフラーブが反体制分子として連れ去られ、処刑されてしまう。

ようやく兄がいる拘置所を探し当てて(兄の居場所は教えてもらえなかった上、短期間でころころ変わったのだ)家族で面会に行ったとき、なぜかバハールだけが一緒ではなかった。そう書かれていて違和感をだいたのだが、あとで、その理由が解る。バハールという語り手は、この作品の現実離れしたまか不思議な世界を語るにふさわしい人物なのだ。

革命の名のもとに殺害されたあまりにも多くの人々。彼らの魂は、あまりの悔しさと悲しさに、いつまでもこの世に留まっている。イスラム社会とは切り離されたようなラーザーンという僻地の村にはいまだに幽鬼(ジン)が出没し、森には幽霊たちが集まって生きていたときの思い出話をしあう。革命に翻弄される一家が生々しく描かれていく一方で、そんな不思議な出来事が挿話のように幻想的に描かれていく。

作者は、イランでジャーナリストとして活動していたが、2011年政治難民としてオーストラリアに移住。ペルシャ語で書かれた本作品の英訳者は「安全上の理由と本人の要望で」匿名になっている。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2933 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2022-06-23 07:19

    私もこれ読み終えました!
    すごかったですね!本当に!!

  2. ぷるーと2022-06-24 07:12

    かもめ通信さん、コメントありがとうございます。
    衝撃的な本でした。

  3. No Image

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