rodolfo1さん
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ドイツ軍に蹂躙された少女セラフィマは、助けてくれた赤軍の女将校イリーナに戦いたいか死にたいか選べと迫られ、イリーナとドイツ人を殺す、と誓った。狙撃兵として腕を上げるセラフィマの前に立ち塞がるのは。。。
逢坂冬馬作「同志少女よ、敵を撃て」を読みました。
【プロローグ】16歳の少女セラフィマは、母親と鹿狩りに出向きました。鹿を撃つのは母親に教わって射撃が得意なセラフィマの役目でした。兄妹のようにして育ったミハイルとは、村中の人々が将来結婚するものと思っていましたが、彼は志願兵として出征しました。
【第一章 イワノフスカヤ村】既に独ソ戦が始まっていましたが、セラフィマはモスクワの大学に進学予定でした。しかし鹿を撃って村に戻ると、村はドイツ軍に蹂躙されていました。ドイツ軍はパルチザンを差し出せと脅迫し、村人を次々と射殺しました。母親はドイツ軍将校に狙いをつけて発砲しようとしましたが、ドイツ狙撃兵のハンス・イェーガーに発見されて逆に射殺されました。
セラフィマはドイツ兵に見つかって、既に強姦されて殺された村の女の死体の前で強姦されかかりましたが、赤軍が現れてドイツ兵を殺し、セラフィマを助けました。しかし部隊を統率する女性将校、イリーナが現れて呆然自失していたセラフィマに、戦いたいか、死にたいか選べと尋ねました。死にたい、と答えたセラフィマの前でイリーナはセラフィマの家の什器を打ちこわし、母親と父親の写真を投げ捨てて家に火をつけました。セラフィマはライフルを取ってイリーナとドイツ軍を殺して仇を討つ、と叫び、イリーナに取り押さえられました。イリーナはセラフィマを女性狙撃兵訓練学校に連れて行きました。
【第二章 魔女の巣】学校には、やはりドイツ軍に家を焼かれたり家族を殺された孤児、シャルロッタ、ヤーナ、オリガ、アヤ達がいました。オリガはウクライナのコサックでした。イリーナは5人に狙撃の基本を叩き込みました。更に政治教育を施しましたが、イリーナの理論は赤軍の理論とは異なっていました。なぜ赤軍は闘うか、という質問の答えに、狙撃の動機を階層化しろ、と命じました。戦地に赴き、敵を撃つ時、何も考えるな、狙撃後戻って来た時に、侵略者を倒し、ファシストを駆逐するために戦っているという起点に戻れと教えました。。。
オリガは、ウクライナはソヴィエトによって奴隷化されていたが、共に赤軍としてドイツと闘う事で、コサックの誇りを取り戻すのだと打ち明け、セラフィマは自分の目的はドイツ人を殺した後にイリーナを殺す事だと打ち明けました。ドイツ軍はセヴァストポリ要塞を攻略し、スターリングラードへ進撃しました。出陣直前、イリーナは実はオリガは秘密警察(チェーカー)のスパイだと明かし、隊を離れるよう言いましたが、オリガの上官が現れ、オリガを帯同させると主張しました。
訓練の最後にオリガを除く4人は戦争の起点を聞かれ、シャルロッタは女性は弱者ではなく、自ら戦う事が出来るものと証明すると言い、イリーナは子供達を犠牲にしないためだと答え、アヤは自由を得る為と答え、セラフィマは凌辱され、殺される女性達を守りたいと答えました。ついに激戦地、スターリングラードへ赴く事が決まりました。
【第三章 ウラヌス作戦】ドイツ軍に包囲されていたスターリングラードを再包囲するウラヌス作戦が開始されました。セラフィマ達は歩兵大隊と合流しましたが、ソ連自慢の最新鋭戦車は故障の為に合流できず、ぞろぞろと歩兵だけが進軍を始めました。イーゴリ隊長は、ジューコフ上級大将の天才的な軍略を自慢し、敵前逃亡や無断退却は即刻死刑にする怖い軍人だとも言いました。
しかしルーマニア軍の反撃に会い、砲兵達は、野戦砲を狙う機関銃を何とかしてくれとセラフィマ達に頼み、セラフィマは機関銃手を射殺しました。しかし戦場に敵戦車が現れ、イーゴリ隊長達は退却を始めました。アヤは最後に残された対戦車ライフルを手に取り、戦車を屠りましたが、逆襲に会って殺されました。さらに敵戦車はセラフィマ達を狙いましたが、味方戦車に砲撃されて擱座しました。
味方戦車はルーマニア軍を追い払い、戦闘は勝利に終わりました。イリーナは敵を射殺して味方を守った事を誇れと言い、初めて敵を殺したセラフィマは号泣しました。。。イーゴリ隊長は捕らえられ、セラフィマは助命を嘆願しましたが、ジューコフは隊長達を死刑にしました。気を失ったセラフィマは、看護師のターニャに看護されており、次の戦場はスターリングラードだと告げられました。
【第四章 ヴォルガの向こうに我らの土地なし】要衝地スターリングラードは母なるヴォルガ川を背にした都市でした。セラフィマ達はとあるアパートの一室に入りました。そこにはマクシム隊長に率いられたボグダン、フョードル、狙撃兵のユリアンらから成る第十二大隊の生き残りがいました。イリーナが気配を察知してドアを開けるとそこには民間人のサンドラが居ました。川に水を汲むために、ドイツ軍駐留地域とソ連の陣地を行き来していたのでした。
オリガは彼女がしていたドイツの指輪から、サンドラは対独協力者だと決めつけましたが、イリーナが庇いました。しかしサンドラは自分とドイツ軍人は愛し合っているのだと反駁しました。実は彼女はあのイェーガーの愛人だったのでした。。。狙撃小隊の少女達は、それぞれ戦場に散って淡々と敵を狙撃しました。しかし敵の狙撃兵はそこらで遊んでいたロシア人の子供を撃ち、セラフィマ達をおびきよせようとし、助けに行ったボグダンが狙撃されました。イリーナが罠を仕掛け、セラフィマは子供を撃った狙撃兵を倒しました。部屋に戻って戦果を誇ると、皆が異様な目でセラフィマを見ました。イリーナは人殺しを楽しむなと言い。。。
イェーガーはサンドラの部屋に通っていました。次第にサンドラに与える食料は減り、逆にサンドラがソヴィエトの食料をくれました。ドイツ軍は飢餓と凍死に苦しんでいました。上官はイェーガーに、セラフィマ達を排除しろと命令し。。。サンドラがセラフィマ達の元に現れ、イェーガーが、セラフィマ達が多勢なのか寡兵なのか見極めようとしていると情報を流しました。そしてイェーガーがセラフィマ達を狙っていると言い、情報の見返りに逃がしてくれと頼み、マクシム隊長は了承しました。
ドイツ人は捕らえたパルチザンを絞首刑に処す所をセラフィマ達に見せておびき出そうとしました。実はそのパルチザンはユリアンの知り合いで、おびき出されたユリアンはドイツ軍将校を撃ち、イェーガーがユリアンを殺しました。敵の大群が押し寄せ、オリガを含めた全員が対峙しましたが、上層部は退却を命じ、皆喜んで退却の準備を始めましたが、マクシム隊長はここに残ると言いました。
実はこのアパートはマクシム隊長が家族と幸せに暮らしていた場所で、家族はみな殺されたのでした。ソヴィエトの砲撃がドイツ軍と共にアパートを破壊し、隊長は共に。。。皆の見つめる前をサンドラの乗った筈の船が。。。しかしそれに乗っていたのは。。。スターリングラードのドイツ軍は降伏しました。。。赤軍将校は降伏したドイツ軍人を撃ち殺そうとし、セラフィマは止めましたが、ドイツ軍人はセラフィマが自分達の仲間を撃った狙撃兵である事を知り、セラフィマを殴りつけました。
赤軍将校はドイツ人を撃ち殺せとセラフィマに銃を渡しましたが、それを止めてセラフィマを救ったのはあのオリガでした。。。ドイツ人慰安婦やロシア人慰安婦が後方に送られる中にセラフィマはサンドラを見つけました。サンドラは前夫の子供を産むのだとセラフィマに言い、自分の情夫の名前はイェーガーだと言いました。この戦いの勝利以後、枢軸国の劣勢は明らかとなりました。。。
【第五章 決戦に向かう日々】セラフィマは新聞記者の取材に応じ、クルスクの戦いについて語り、宿敵のイェーガーを必ず倒す、と明言しました。その記事を見て赤軍はイェーガーの情報を求め。。。情勢が一変すると、歩兵達のセラフィマら狙撃兵への風当たりがきつくなりました。オリガが庇いましたが、歩兵は挑発を辞めず、犯したドイツ女の自慢を始め、かっとなったセラフィマは歩兵を殴り倒し、私なりの女らしさを知ったらお前の死体が明日その辺に転がっている、と言い放ちました。そこにミハイル砲兵少尉が現れ、仲裁に入りました。それはあのイワノフスカヤ村のミハイルでした。。。
2人で話しましたが、ドイツ女を強姦しているのは嘘だろうとセラフィマが聞くと、残念だが本当だとミハイルは言いました。強姦体験を共有して初めて同志的結束が生まれるのだとも言い、暴行魔は悪魔だとセラフィマが言うと、80人を殺したことを自慢する君みたいにか?とミハイルは聞き、セラフィマは踵を返しましたが、ミハイルは決して自分は暴行しないと言いました。。。
その日、ソヴィエトの伝説的狙撃手、リュドミラ・パヴリチェンコが狙撃手達に講演を行いました。リュドミラの講演は狙撃に関する技術的な物に終始し、狙撃手の精神については殆ど語りませんでした。唯一話したのは、狙撃兵は動機を階層化しろと言うイリーナと同じ教えでした。実はイリーナとリュドミラは古い馴染みで。。。シャルロッタは質問に立ち、戦後狙撃手はどう生きるべきかと尋ね、リュドミラは、愛する人を見つけるか、趣味等の生き甲斐を持て、とだけ言いました。
イリーナとセラフィマは講演後リュドミラに面会し、セラフィマは狙撃兵の戦後の生き甲斐とはどういう事かと質問しましたが、リュドミラとイリーナは、自分達が生きたまま狙撃兵の地位を降りた事を不運だと言いました。セラフィマは更に戦果を挙げた後に得られるものはないのかと尋ね、リュドミラは、狙撃の仕事は熟練のネジ作りと同じだと答えました。ネジを作るだけで他には家族の事を考えているだけで幸せだったのだと言いました。実はリュドミラも悲しみに満ちた孤独な女性だったのでした。。。
【第六章 要塞都市ケーニヒスベルク】次の赤軍の目標は、ドイツ軍の陣取る要塞都市ケーニヒスベルクでした。セラフィマ達の前に、対戦車砲を持ったドイツ少年兵が現れ、思わずセラフィマは彼の足を撃ちました。ヤーナは戦争で死ぬ子供を見たくないと言って、彼を助けに行って狙撃兵に撃たれました。捕虜にしたドイツ兵は、あの狙撃兵がイェーガーだったと自白しました。
そしてセラフィマはイェーガーが射撃位置に着く時間を聞き出し、イリーナに彼を殺す許可をもらいに行くと、イリーナはセラフィマの射撃教官への転属命令書を渡し、もう自分にとってセラフィマは用済みだから消えろといいました。激昂したセラフィマは、自分をこんな女にしてのはイリーナだと言ってイリーナを撃とうとしましたが、シャルロッタが阻止しました。そしてシャルロッタはイリーナが捨てた筈のセラフィマの両親の写真を渡して、イリーナが寄越したのだと言いました。。。イリーナはセラフィマに監視をつけて行かせまいとしましたが、セラフィマは抜け出し、イェーガーとの決着をつけにドイツ軍陣地に向かったのでした。。。
【エピローグ】2人でイワノフスカヤ村を再興しながらも、偏屈であった為に村人に裏山の人食い魔女と呼ばれて忌み嫌われていた女達がいました。いじめられていた気弱な少年ダニイルは、彼女達への手紙の配達を押し付けられ、恐る恐る彼女達の家に行きました。そこにいたのは。。。
なかなかの力作でありました。ドイツ軍に蹂躙され、生きる意欲を無くしたセラフィマはイリーナに鼓舞され、狙撃兵として技量を伸ばして行きます。仲間の少女狙撃兵と共にドイツ軍と戦い、多大な犠牲を払いながらも、宿敵のドイツ軍狙撃手イェーガーと対決します。しかし卓越した狙撃兵であったイェーガーは実は。。。セラフィマにとっての真の敵とは。。。セラフィマが悩む戦後の狙撃兵の在り方とは。。。最後のトリックも劇的なもので、小説を盛り上げました。しかしロシアによる今日のウクライナ侵略戦争は、本書に描かれたロシア人による対ナチ戦争勝利の栄誉を汚す行いですが、戦争の悲惨さは本書に描かれた通りであり、本書に本屋大賞を与えた意義は大きいものであったと思いました。
【プロローグ】16歳の少女セラフィマは、母親と鹿狩りに出向きました。鹿を撃つのは母親に教わって射撃が得意なセラフィマの役目でした。兄妹のようにして育ったミハイルとは、村中の人々が将来結婚するものと思っていましたが、彼は志願兵として出征しました。
【第一章 イワノフスカヤ村】既に独ソ戦が始まっていましたが、セラフィマはモスクワの大学に進学予定でした。しかし鹿を撃って村に戻ると、村はドイツ軍に蹂躙されていました。ドイツ軍はパルチザンを差し出せと脅迫し、村人を次々と射殺しました。母親はドイツ軍将校に狙いをつけて発砲しようとしましたが、ドイツ狙撃兵のハンス・イェーガーに発見されて逆に射殺されました。
セラフィマはドイツ兵に見つかって、既に強姦されて殺された村の女の死体の前で強姦されかかりましたが、赤軍が現れてドイツ兵を殺し、セラフィマを助けました。しかし部隊を統率する女性将校、イリーナが現れて呆然自失していたセラフィマに、戦いたいか、死にたいか選べと尋ねました。死にたい、と答えたセラフィマの前でイリーナはセラフィマの家の什器を打ちこわし、母親と父親の写真を投げ捨てて家に火をつけました。セラフィマはライフルを取ってイリーナとドイツ軍を殺して仇を討つ、と叫び、イリーナに取り押さえられました。イリーナはセラフィマを女性狙撃兵訓練学校に連れて行きました。
【第二章 魔女の巣】学校には、やはりドイツ軍に家を焼かれたり家族を殺された孤児、シャルロッタ、ヤーナ、オリガ、アヤ達がいました。オリガはウクライナのコサックでした。イリーナは5人に狙撃の基本を叩き込みました。更に政治教育を施しましたが、イリーナの理論は赤軍の理論とは異なっていました。なぜ赤軍は闘うか、という質問の答えに、狙撃の動機を階層化しろ、と命じました。戦地に赴き、敵を撃つ時、何も考えるな、狙撃後戻って来た時に、侵略者を倒し、ファシストを駆逐するために戦っているという起点に戻れと教えました。。。
オリガは、ウクライナはソヴィエトによって奴隷化されていたが、共に赤軍としてドイツと闘う事で、コサックの誇りを取り戻すのだと打ち明け、セラフィマは自分の目的はドイツ人を殺した後にイリーナを殺す事だと打ち明けました。ドイツ軍はセヴァストポリ要塞を攻略し、スターリングラードへ進撃しました。出陣直前、イリーナは実はオリガは秘密警察(チェーカー)のスパイだと明かし、隊を離れるよう言いましたが、オリガの上官が現れ、オリガを帯同させると主張しました。
訓練の最後にオリガを除く4人は戦争の起点を聞かれ、シャルロッタは女性は弱者ではなく、自ら戦う事が出来るものと証明すると言い、イリーナは子供達を犠牲にしないためだと答え、アヤは自由を得る為と答え、セラフィマは凌辱され、殺される女性達を守りたいと答えました。ついに激戦地、スターリングラードへ赴く事が決まりました。
【第三章 ウラヌス作戦】ドイツ軍に包囲されていたスターリングラードを再包囲するウラヌス作戦が開始されました。セラフィマ達は歩兵大隊と合流しましたが、ソ連自慢の最新鋭戦車は故障の為に合流できず、ぞろぞろと歩兵だけが進軍を始めました。イーゴリ隊長は、ジューコフ上級大将の天才的な軍略を自慢し、敵前逃亡や無断退却は即刻死刑にする怖い軍人だとも言いました。
しかしルーマニア軍の反撃に会い、砲兵達は、野戦砲を狙う機関銃を何とかしてくれとセラフィマ達に頼み、セラフィマは機関銃手を射殺しました。しかし戦場に敵戦車が現れ、イーゴリ隊長達は退却を始めました。アヤは最後に残された対戦車ライフルを手に取り、戦車を屠りましたが、逆襲に会って殺されました。さらに敵戦車はセラフィマ達を狙いましたが、味方戦車に砲撃されて擱座しました。
味方戦車はルーマニア軍を追い払い、戦闘は勝利に終わりました。イリーナは敵を射殺して味方を守った事を誇れと言い、初めて敵を殺したセラフィマは号泣しました。。。イーゴリ隊長は捕らえられ、セラフィマは助命を嘆願しましたが、ジューコフは隊長達を死刑にしました。気を失ったセラフィマは、看護師のターニャに看護されており、次の戦場はスターリングラードだと告げられました。
【第四章 ヴォルガの向こうに我らの土地なし】要衝地スターリングラードは母なるヴォルガ川を背にした都市でした。セラフィマ達はとあるアパートの一室に入りました。そこにはマクシム隊長に率いられたボグダン、フョードル、狙撃兵のユリアンらから成る第十二大隊の生き残りがいました。イリーナが気配を察知してドアを開けるとそこには民間人のサンドラが居ました。川に水を汲むために、ドイツ軍駐留地域とソ連の陣地を行き来していたのでした。
オリガは彼女がしていたドイツの指輪から、サンドラは対独協力者だと決めつけましたが、イリーナが庇いました。しかしサンドラは自分とドイツ軍人は愛し合っているのだと反駁しました。実は彼女はあのイェーガーの愛人だったのでした。。。狙撃小隊の少女達は、それぞれ戦場に散って淡々と敵を狙撃しました。しかし敵の狙撃兵はそこらで遊んでいたロシア人の子供を撃ち、セラフィマ達をおびきよせようとし、助けに行ったボグダンが狙撃されました。イリーナが罠を仕掛け、セラフィマは子供を撃った狙撃兵を倒しました。部屋に戻って戦果を誇ると、皆が異様な目でセラフィマを見ました。イリーナは人殺しを楽しむなと言い。。。
イェーガーはサンドラの部屋に通っていました。次第にサンドラに与える食料は減り、逆にサンドラがソヴィエトの食料をくれました。ドイツ軍は飢餓と凍死に苦しんでいました。上官はイェーガーに、セラフィマ達を排除しろと命令し。。。サンドラがセラフィマ達の元に現れ、イェーガーが、セラフィマ達が多勢なのか寡兵なのか見極めようとしていると情報を流しました。そしてイェーガーがセラフィマ達を狙っていると言い、情報の見返りに逃がしてくれと頼み、マクシム隊長は了承しました。
ドイツ人は捕らえたパルチザンを絞首刑に処す所をセラフィマ達に見せておびき出そうとしました。実はそのパルチザンはユリアンの知り合いで、おびき出されたユリアンはドイツ軍将校を撃ち、イェーガーがユリアンを殺しました。敵の大群が押し寄せ、オリガを含めた全員が対峙しましたが、上層部は退却を命じ、皆喜んで退却の準備を始めましたが、マクシム隊長はここに残ると言いました。
実はこのアパートはマクシム隊長が家族と幸せに暮らしていた場所で、家族はみな殺されたのでした。ソヴィエトの砲撃がドイツ軍と共にアパートを破壊し、隊長は共に。。。皆の見つめる前をサンドラの乗った筈の船が。。。しかしそれに乗っていたのは。。。スターリングラードのドイツ軍は降伏しました。。。赤軍将校は降伏したドイツ軍人を撃ち殺そうとし、セラフィマは止めましたが、ドイツ軍人はセラフィマが自分達の仲間を撃った狙撃兵である事を知り、セラフィマを殴りつけました。
赤軍将校はドイツ人を撃ち殺せとセラフィマに銃を渡しましたが、それを止めてセラフィマを救ったのはあのオリガでした。。。ドイツ人慰安婦やロシア人慰安婦が後方に送られる中にセラフィマはサンドラを見つけました。サンドラは前夫の子供を産むのだとセラフィマに言い、自分の情夫の名前はイェーガーだと言いました。この戦いの勝利以後、枢軸国の劣勢は明らかとなりました。。。
【第五章 決戦に向かう日々】セラフィマは新聞記者の取材に応じ、クルスクの戦いについて語り、宿敵のイェーガーを必ず倒す、と明言しました。その記事を見て赤軍はイェーガーの情報を求め。。。情勢が一変すると、歩兵達のセラフィマら狙撃兵への風当たりがきつくなりました。オリガが庇いましたが、歩兵は挑発を辞めず、犯したドイツ女の自慢を始め、かっとなったセラフィマは歩兵を殴り倒し、私なりの女らしさを知ったらお前の死体が明日その辺に転がっている、と言い放ちました。そこにミハイル砲兵少尉が現れ、仲裁に入りました。それはあのイワノフスカヤ村のミハイルでした。。。
2人で話しましたが、ドイツ女を強姦しているのは嘘だろうとセラフィマが聞くと、残念だが本当だとミハイルは言いました。強姦体験を共有して初めて同志的結束が生まれるのだとも言い、暴行魔は悪魔だとセラフィマが言うと、80人を殺したことを自慢する君みたいにか?とミハイルは聞き、セラフィマは踵を返しましたが、ミハイルは決して自分は暴行しないと言いました。。。
その日、ソヴィエトの伝説的狙撃手、リュドミラ・パヴリチェンコが狙撃手達に講演を行いました。リュドミラの講演は狙撃に関する技術的な物に終始し、狙撃手の精神については殆ど語りませんでした。唯一話したのは、狙撃兵は動機を階層化しろと言うイリーナと同じ教えでした。実はイリーナとリュドミラは古い馴染みで。。。シャルロッタは質問に立ち、戦後狙撃手はどう生きるべきかと尋ね、リュドミラは、愛する人を見つけるか、趣味等の生き甲斐を持て、とだけ言いました。
イリーナとセラフィマは講演後リュドミラに面会し、セラフィマは狙撃兵の戦後の生き甲斐とはどういう事かと質問しましたが、リュドミラとイリーナは、自分達が生きたまま狙撃兵の地位を降りた事を不運だと言いました。セラフィマは更に戦果を挙げた後に得られるものはないのかと尋ね、リュドミラは、狙撃の仕事は熟練のネジ作りと同じだと答えました。ネジを作るだけで他には家族の事を考えているだけで幸せだったのだと言いました。実はリュドミラも悲しみに満ちた孤独な女性だったのでした。。。
【第六章 要塞都市ケーニヒスベルク】次の赤軍の目標は、ドイツ軍の陣取る要塞都市ケーニヒスベルクでした。セラフィマ達の前に、対戦車砲を持ったドイツ少年兵が現れ、思わずセラフィマは彼の足を撃ちました。ヤーナは戦争で死ぬ子供を見たくないと言って、彼を助けに行って狙撃兵に撃たれました。捕虜にしたドイツ兵は、あの狙撃兵がイェーガーだったと自白しました。
そしてセラフィマはイェーガーが射撃位置に着く時間を聞き出し、イリーナに彼を殺す許可をもらいに行くと、イリーナはセラフィマの射撃教官への転属命令書を渡し、もう自分にとってセラフィマは用済みだから消えろといいました。激昂したセラフィマは、自分をこんな女にしてのはイリーナだと言ってイリーナを撃とうとしましたが、シャルロッタが阻止しました。そしてシャルロッタはイリーナが捨てた筈のセラフィマの両親の写真を渡して、イリーナが寄越したのだと言いました。。。イリーナはセラフィマに監視をつけて行かせまいとしましたが、セラフィマは抜け出し、イェーガーとの決着をつけにドイツ軍陣地に向かったのでした。。。
【エピローグ】2人でイワノフスカヤ村を再興しながらも、偏屈であった為に村人に裏山の人食い魔女と呼ばれて忌み嫌われていた女達がいました。いじめられていた気弱な少年ダニイルは、彼女達への手紙の配達を押し付けられ、恐る恐る彼女達の家に行きました。そこにいたのは。。。
なかなかの力作でありました。ドイツ軍に蹂躙され、生きる意欲を無くしたセラフィマはイリーナに鼓舞され、狙撃兵として技量を伸ばして行きます。仲間の少女狙撃兵と共にドイツ軍と戦い、多大な犠牲を払いながらも、宿敵のドイツ軍狙撃手イェーガーと対決します。しかし卓越した狙撃兵であったイェーガーは実は。。。セラフィマにとっての真の敵とは。。。セラフィマが悩む戦後の狙撃兵の在り方とは。。。最後のトリックも劇的なもので、小説を盛り上げました。しかしロシアによる今日のウクライナ侵略戦争は、本書に描かれたロシア人による対ナチ戦争勝利の栄誉を汚す行いですが、戦争の悲惨さは本書に描かれた通りであり、本書に本屋大賞を与えた意義は大きいものであったと思いました。
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こんにちは。ブクレコ難民です。今後はこちらでよろしくお願いいたします。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:0
- ISBN:9784152100641
- 発売日:2021年11月17日
- 価格:2090円
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