休蔵さん
レビュアー:
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歴史の教科書では取り上げられない地方武士の動向が、遺跡と古文書により詳らかにされていくその様は、著名人物が登場する歴史書に匹敵する面白さがある。舞台は国指定史跡「江馬氏城館跡」。
とある場所に人が住み着いて、やがて集落が形成される。
集落は変遷を遂げて、廃絶してしまう。
廃絶した集落のことなど忘れさられることに。
そして、かつての集落は遺跡として地中に埋没。
遺跡は何らかの機会に掘り出され、その価値が認められた場合、法律に則って保護体制が敷かれる。
国や都道府県、市町村による史跡指定である。
うまくいけば、史跡整備が行われ、往時の姿が復元される。
このような流れがよくわかる事例のひとつとして、「江馬氏城館跡」がある。
江馬氏城館跡は、文字通り江馬氏が暮らした城館の跡地である。
岐阜県の北端部飛騨市神岡町に所在する国の史跡に指定されている。
遺跡の所在地は、ずいぶん長い間耕作地の下にパックされて守られてきた。
それが1972年に土地改良工事の着工によりにわかに注目を集めることに。
当時、旧神岡町の文化財担当者は、館跡の伝承地での工事に対して調査の必要性を訴え、その実現を勝ち取った。
地中には1.5から2mの巨石が散乱していたという。
これらの巨石は、後の本格的な発掘調査で庭園跡の景石であることが判明した。
すぐに工事の差し止めにはならなかったみたいだが、粘り強い協議の末、遺跡は保存されることに。
次は保存を目的とした調査が始まる。
そして、室町将軍邸に似た庭園を持つ、地方武士の館跡の全貌が明らかに。
ただ、遺跡を発掘した状態では理解が進まないということだろう、現在では史跡整備が進められ、当時の城館の雰囲気を肌で体感できるようになった。
さらに、調査は周辺域にも及ぶ。
館跡の背後にある山上には、山城が確認されていた。
その踏査も実施され、城館と山城の関係性も追及されている。
城館の廃絶と山城の築城は一体のもので、さらに古文書の研究からその転換期の江馬氏の動向も探究されている。
狭い地域の、歴史の教科書では取り上げられない地方武士の話ではあるが、その動向が遺跡と古文書により詳らかにされていく様相は、著名人物が登場する歴史書に匹敵する面白さがある。
加えて、史跡整備されている城館跡に足を踏み入れることができたならば、当時の激動の様相をより強く体感することができるに違いない。
本書は100頁にも満たない。
カラー写真や図面がふんだんに掲載されているため、文字数も相当に限られている。
読みやすい仕上がりになっているが、だからといって決して読みごたえがないわけではない。
地中に眠っていた資料を精緻に掘り出し、情報を抽出して分析し、古文書と照らし合わせながら解釈を進める様子が詳細に記録されていて、じっくりと楽しむことができる1冊に仕上がっている。
集落は変遷を遂げて、廃絶してしまう。
廃絶した集落のことなど忘れさられることに。
そして、かつての集落は遺跡として地中に埋没。
遺跡は何らかの機会に掘り出され、その価値が認められた場合、法律に則って保護体制が敷かれる。
国や都道府県、市町村による史跡指定である。
うまくいけば、史跡整備が行われ、往時の姿が復元される。
このような流れがよくわかる事例のひとつとして、「江馬氏城館跡」がある。
江馬氏城館跡は、文字通り江馬氏が暮らした城館の跡地である。
岐阜県の北端部飛騨市神岡町に所在する国の史跡に指定されている。
遺跡の所在地は、ずいぶん長い間耕作地の下にパックされて守られてきた。
それが1972年に土地改良工事の着工によりにわかに注目を集めることに。
当時、旧神岡町の文化財担当者は、館跡の伝承地での工事に対して調査の必要性を訴え、その実現を勝ち取った。
地中には1.5から2mの巨石が散乱していたという。
これらの巨石は、後の本格的な発掘調査で庭園跡の景石であることが判明した。
すぐに工事の差し止めにはならなかったみたいだが、粘り強い協議の末、遺跡は保存されることに。
次は保存を目的とした調査が始まる。
そして、室町将軍邸に似た庭園を持つ、地方武士の館跡の全貌が明らかに。
ただ、遺跡を発掘した状態では理解が進まないということだろう、現在では史跡整備が進められ、当時の城館の雰囲気を肌で体感できるようになった。
さらに、調査は周辺域にも及ぶ。
館跡の背後にある山上には、山城が確認されていた。
その踏査も実施され、城館と山城の関係性も追及されている。
城館の廃絶と山城の築城は一体のもので、さらに古文書の研究からその転換期の江馬氏の動向も探究されている。
狭い地域の、歴史の教科書では取り上げられない地方武士の話ではあるが、その動向が遺跡と古文書により詳らかにされていく様相は、著名人物が登場する歴史書に匹敵する面白さがある。
加えて、史跡整備されている城館跡に足を踏み入れることができたならば、当時の激動の様相をより強く体感することができるに違いない。
本書は100頁にも満たない。
カラー写真や図面がふんだんに掲載されているため、文字数も相当に限られている。
読みやすい仕上がりになっているが、だからといって決して読みごたえがないわけではない。
地中に眠っていた資料を精緻に掘り出し、情報を抽出して分析し、古文書と照らし合わせながら解釈を進める様子が詳細に記録されていて、じっくりと楽しむことができる1冊に仕上がっている。
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ここに参加するようになって、読書の幅が広がったように思います。
それでも、まだ偏り気味。
いろんな人の書評を参考に、もっと幅広い読書を楽しみたい!
この書評へのコメント
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- 出版社:新泉社
- ページ数:0
- ISBN:9784787721327
- 発売日:2021年08月03日
- 価格:1760円
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