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たけぞう
レビュアー:
どこまでも小川洋子を感じるデビュー作。
思い立ってデビュー作に戻ってみました。
わたしは好きな作家さんのデビュー作を読むようにしているのですが、
なぜか小川洋子さんはまだでした。
読了後、とても満足しました。非常に重要な一冊です。

海燕新人賞受賞作の揚羽蝶が壊れる時と、
受賞第一作の完璧な病室が収録されています。
期待通りの小川ワールドで、原点を見たという感触を持ちました。

デビュー作の揚羽蝶が壊れる時を紹介します。
介護の場面から物語は始まります。
冷静に、心理的な距離を置くように主人公のわたしは接しています。
痴呆状態の人のようです。

父方の祖母であるさえに引き取られて初めてこの家に来た時、
わたしはまだ人形のような少女だった。


病的で、死の香りがひたひたと忍びよってくる雰囲気を感じます。
さえばあちゃんを、今日、ホームに預けにいくのです。
ホームの名前は新天地。
一緒に手伝ってくれるのは、恋人のミコトです。

ミコトが初めてさえに会ったとき、
さえばあちゃんの痴呆は進行していました。
だからなのか、ミコトの態度はどこか温かみに欠けています。
わたしは、ミコトの価値観に引きずられるように
祖母と離れる選択をしたのでした。

離れてみて分かること。
わたしのこころをじわじわとむしばむ何か。

小川ワールドは、自分とは違う世界に生きる人がテーマになることが多いです。
違う世界があるということを、読者に自然体で伝えるのです。
感傷も、憂いも、哀れみもなく。

教室の隅で誰からも気づかれずにそっと忍びこんで息をしているような、
ひっそりとした世界。
以前読んだ文章で、そんなことを著者が語っていた記憶があります。

デビュー作も、デビュー後第一作も同じ香りがしました。
著者の大事なものを知りたい人にお薦めします。
完成度が高くて驚きました。
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たけぞう
たけぞう さん本が好き!免許皆伝(書評数:1466 件)

ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。

自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。

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