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ときのき
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青い夜を照らす白いともしび
 ある一家が、深夜のハイキングに出かける。
 夜の街を抜け、暗い田舎道を歩き、森に入って湖に映る月を眺め、草むらに寝そべり星の数をかぞえ、山道に足をかける。
 静かで美しい夜を描いた絵本だ。

 まず夜と明かりの対照が素晴らしい。
 絵に描かれた灯りが実際に眩く感じられるのは貴重な体験だ。
 光源から離れ広がりながら光の質感が変化し、照らされる木々は遠くなるにつれ微かな白みを帯びたシルエットを描く。光がなぞる人やモノの輪郭が個別の色調で柔らかく描き分けられる。
 
 一家の道行きは薄青い夜闇が続いていて、それを切り分けるように、優しく包むように、灯りが現れる。室内照明や、懐中電灯、ずらり並ぶ窓からもれる光、遠くを走る夜行列車の客室、静かに道を照らす街灯、月明かり、山々の稜線から滲み出る払暁、そして……。

 絵の力が読む者の記憶を刺激する。
 夜の濃淡のグラデーションに沈む風景や、懐中電灯に照らし出されるなかば暗闇に溶けた兄弟の影。
 いつかこの道を家族と一緒に歩いたような、この夜を誰かと過ごしたことがあるような、そんな気持ちになれる一冊です。
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ときのき
ときのき さん本が好き!1級(書評数:136 件)

海外文学・ミステリーなどが好きです。書評は小説が主になるはずです。

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